生きる喜び、歌声に乗せ 沖縄国際音楽祭「第九in NAHA」 4年ぶりホール公演 12月17日 那覇文化芸術劇場なはーとで

 第9回沖縄国際音楽祭「第九in NAHA」が17日午後4時から、那覇文化芸術劇場なはーとで開かれる。コロナ禍を乗り越え、コンサートホールでの開催は4年ぶり。ウクライナ出身のソプラノ歌手、オクサーナ・ステパニュック氏のステージを第1部に配し、「人類愛」「自由」を歌い上げる第2部の第九合唱とともに「平和」を希求する本格的なステージコンサートを届ける。

第9回沖縄国際音楽祭に向け、仲本博貴氏の指導を受ける第九合唱団=2日、浦添市ハーモニーセンター

第九合唱 市民ら稽古熱気

 同音楽祭は沖縄国際音楽祭実行委員会(岩崎セツ子実行委員長)が主催、那覇市、琉球放送、沖縄タイムス社が共催する。

 2020年から3年間、新型コロナウイルス感染症の拡大からコンサートホールでの音楽祭は中止を余儀なくされたが、19年10月に焼失した首里城正殿の再建と第九演奏の灯(ともしび)を絶やさないことを目的に、美ら島財団の協力を得て首里城公園内で第九合唱を続けてきた。

 4年ぶりのコンサートホールでの開催は、ロシアの侵攻で危機にさらされるウクライナ出身の歌手オクサーナ・ステパニュック氏を招き、ウクライナの歌曲や著名なオペラアリアを披露する。

 第九合唱には一般公募約70人の合唱団に、沖縄アミークスインターナショナルから小中学生26人が加わるなど、若い世代の参加を通して次代へつなげる取り組みもある。

 指揮は国際的な指揮者コンクールで優勝した高井優希、第九ソリストはソプラノ知念利津子、アルト兼嶋麗子、テノール山内昌也、バリトン仲本博貴の各氏、県内実力者を集めた。演奏は琉球交響楽団。

 岩崎実行委員長は4年ぶりのコンサートに「欧州、中東の紛争で混乱が続く中、クラシック音楽の力で平和を訴えたい。今回、那覇市に共催いただいた。今後も音楽祭を発展させ、市の文化レベルと、次世代への貢献を意識して取り組みたい」と決意する。

 前売り券は3500円(当日4千円)。デパートリウボウプレイガイドのほか、問い合わせは琉球交響楽団事務局、電話090(9783)7645。

アミークス合唱団「本番楽しみ」 ソプラノパート

本番に向けて練習に励む沖縄アミークスインターナショナル小学校のアミークス合唱団の子どもたち=5日、うるま市・同校

 うるま市にある沖縄アミークスインターナショナル小学校のアミークス合唱団は、ソプラノパートの一部を歌う。子どもたちは「しっかり練習して、本番は観客が楽しんでもらえるように歌いたい」と意気込む。

 合唱団は同小学校の音楽教諭である稲垣宏晃さんが2020年に立ち上げた。現在、小3~小6の男女27人が所属する。本番はOBの中学1年の2人も出演する予定だ。

 副部長の金城怜旺(れお)さん(6年)は、算数や理科などの科目は英語で授業しているといい「歌詞がドイツ語で覚えるのは難しいけど、英語でイメージして覚えている」と話す。「観客の皆さんが楽しんでもらえるように歌いたい」と意欲を語った。

 ベートーベンやモーツァルトが好きという部長の徳武海音(かのん)さん(同)は「『神々』など歌詞の言葉がとてもきれい」と話す。「みんなの前で歌えるのはとても光栄。このメンバーなら絶対うまく歌える。本番がとても楽しみ」とほほ笑んだ。

 稲垣さんは「喜びを歌った歌なので、子どもたちが平和を考えるきっかけにもなればいいと思う。子どもたちはオーケストラや大人と一緒に歌うのも初めて。物おじせず晴れの舞台を楽しんでほしい」と話した。(中部報道部・伊集竜太郎)

沖縄の人たちと発信 

高井優希(指揮)

高井優希

 第4回黒海(コンスタンツァ)指揮コンクール1位、札幌響、仙台フィル、東京フィル、大阪響、大阪フィル、関西フィル、広島響、九州響、コンスタンツァ国立歌劇場管、ローマ・イタリア管など国内外のオーケストラと共演。2019年度山田貞夫音楽賞特選。セントラル愛知交響楽団アソシエイトコンダクター、武蔵野音楽大学講師。

 「第九には時代を越えて生きる喜びを訴える力がある。沖縄の人たちと一緒に発信できることが楽しみ」

ウクライナの歌姫ゲスト

第1部ソプラノ

特別ゲスト オクサーナ・ステパニュック

オクサーナ・ステパニュック

 国立ウクライナ・チャイコフスキー音楽院首席卒業。「カルメン」「椿姫」などオペラに多数出演。イタリア世界音楽コンクール、横浜国際音楽コンクール、チェコ音楽コンクール優勝など受賞歴多数。「ウクライナの歌姫によるウクライナの歌」「キーウ、鳥の歌」など全9枚のCDをリリース。藤原歌劇団正団員、日本オペラ協会会員。

第2部ソリスト

知念利津子(ソプラノ)

知念利津子

 県立芸術大学卒・同大大学院修了。ヴェルディ・モーツァルト・フォーレ作曲「レクイエム」、ベートーヴェン交響曲第9番等のソプラノソリストやオペラで活躍。第52回沖縄タイムス芸術選賞奨励賞受賞。藤原歌劇団所属、日本オペラ協会正会員、県立開邦高校非常勤講師。

兼嶋麗子(アルト)

兼嶋麗子

 昭和音楽芸術学院卒業。メサイア、第九、レクイエム(ヴェルディ)のソリスト、プッチーニ「蝶々夫人」のスズキ役など沖縄を代表するメゾソプラノ。指揮者・広上淳一を招いた兼嶋麗子メゾソプラノリサイタルを2016年に開催、好評を博す。第32回沖縄タイムス芸術選賞大賞受賞。

山内昌也(テノール)

山内昌也

 県立芸術大学大学院、ミュンヘン市立リヒャルト・シュトラウス音楽院大学院修了。2002年度文化庁派遣芸術家在外研修員としてドイツ国立ベルリン音楽大学大学院首席修了。モーツァルト「レクイエム」、シューベルト「ミサ曲」のソリストとして欧州各地で演奏。県立芸術大学准教授。

仲本博貴(バリトン)

仲本博貴

 県立芸術大学大学院、ミュンヘン国立音楽大学大学院修了。第75.81回日本音楽コンクール声楽部門入選。「コシ・ファン・トゥッテ」「魔笛」など多数のオペラに出演。第55.56回沖縄タイムス芸術選賞奨励賞受賞。沖縄国際音楽祭合唱指揮。県立芸術大学非常勤講師。日本歌唱芸術協会理事。[ことば]
 沖縄国際音楽祭 2014年1月に第1回コンサートを開催、ベートーべン作曲の交響曲第九番「合唱付」をメインに国際的な音楽祭へ発展させようと、沖縄県立芸術大学出身者や琉球交響楽団など県出身および県内の洋楽家が中心となって企画している。「第九合唱」は公募による一般参加(有料)が特徴で、これまで毎回100人前後が参加している。(1)沖縄の音楽文化の発展(2)県民の豊かで文化的生活への貢献(3)県外・海外の参加者増による経済効果-を音楽祭開催の意義に掲げており、年末恒例の「第九合唱」を軸に、沖縄の冬場の音楽イベントを目指している。

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