狭い津軽海峡、急速に雲発達 2021年下北半島豪雨のメカニズム発表 弘前大・谷田貝教授

 2021年8月の下北豪雨について、弘前大学大学院理工学研究科の谷田貝(やたがい)亜紀代教授は、温帯低気圧からの東風が津軽海峡に吹き込んで上昇気流が生まれ、雨雲が急速に発達したとの見解を示し「奥に行くほど狭くなっている地形では、同じような気象条件で大雨発生の可能性がある」と指摘した。11月上旬に青森県むつ市で開かれた「下北ジオパーク 弘前大学共同研究発表会」で、自身の研究室の研究成果を発表した。

 同豪雨では、台風9号から変わった温帯低気圧による大雨で、むつ市北部では21年8月9日午前9時~11日午前9時の48時間に降水量約380ミリを記録。国道の橋崩落や土砂崩れによる集落の孤立、断水などが相次いだ。

 谷田貝教授によると、地表近くでは東風が下北半島と北海道の亀田半島(函館市)の間に吹き込み「水蒸気を多く含んだ風が両側の山地に挟まれ、リアス式海岸に押し寄せる津波のように高く上っていった」。一方、上空5千~6千メートルでは南風が吹き込んでおり、二つの風がぶつかって雨雲が急速に発達したと考えられるという。

 谷田貝教授によると、「平成26年8月豪雨」でも九州と四国の間の豊後水道に吹き込んだ南風が同様の上昇気流を生み、広島市などに大雨をもたらした。

 谷田貝亜紀代教授は11月上旬の研究発表会で、台風が温帯低気圧に変わる時、大雨の降るエリアが台風の目付近から北東側へと移ることが分かった-と説明した。温帯低気圧が日本海を通って青森県に向かってきた場合、中心部が到達するより先に大雨が襲うことになる。谷田貝教授は「温帯低気圧に変わっても勢力は強い。中心部から離れていても要注意」と警告する。

 谷田貝研究室の学生らが、過去の台風や温帯低気圧のデータを400~千例重ね合わせたところ、温帯低気圧では中心部の北東300キロ前後が大雨のエリアだった。2021年8月の下北豪雨も、温帯低気圧の中心部が青森県の南西にあった時に発生した。

 谷田貝教授は「温帯低気圧になると、勢力が弱まったような印象があるが、台風だった時に集めた大量の水蒸気を抱えた状態」として、引き続き警戒する必要があるとしている。

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