家族からLGBTQをカミングアウトされたら? トランスジェンダー当事者が中学校で講演

「人を見た目で判断せず、当事者が安心して相談できる人になってほしい」と語りかける今井さん(京丹波町市場・和知中)

 家族や友人からLGBTQ(性的少数者)であることを打ち明けられたら-。当事者団体「ELLY」(三重県津市)のメンバーで、トランスジェンダーの今井秋奈さんが、多様な性の在り方やカミングアウトされたときの対応について講演。「人を見た目で判断せず、当事者が安心して相談できる人になってほしい」と訴えた。

 今井さんは京都府舞鶴市生まれ、兵庫県宝塚市育ち。女性として生まれ、育てられたが、子どもの頃は仮面ライダーなどかっこいいものが好きで、男友達とよく遊んだ。「性自認は幼い頃からもやもやしていた」と言う。

 やがて、友人から「女だから」と仲間外れにされるように。思春期になると、自分の意に反して女性へと成長していく体の変化に困惑し、恋愛対象が女性であることにも気が付いた。周囲には多様な性を笑いの対象にする同級生や教員も多く「自分が抱える悩みを否定されると思ったら、何も言えなかった」と語った。

 LGBTQという言葉を知り、自分がトランスジェンダーだと気が付いたのは、大学生になってからだった。20歳の時、意を決して初めて性自認をブラジル人の友人に打ち明けた。「あなたはとてもすてきな人。その事実を信じて疑わないで。自分を大切に生きて」。返ってきたこの言葉は、今も心の支えになっているという。

 日本人の10人に1人が性的少数者との調査結果もある中、同性婚に関する法整備やLGBTQへの理解は一足飛びには進まない。今井さんは日本の現状を「世界の国々と比べ、約50年は遅れている」と指摘した。

 その上で、母親から性自認をすぐに理解してもらえなかった自身の経験に触れ「カミングアウトは本人が考えに考え抜いた末の行為。驚くとは思うが、その勇気と自信に対して、まずは『ありがとう』と伝えてほしい」と呼びかけた。

 京都府京丹波町の和知中で開催された「親子人権講演会」の一環。11月23日に開かれ、生徒や保護者、教員ら約50人が聞いた。

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