【市長と業者のメールも】広島・安芸高田市の石丸市長が再び敗訴 選挙ポスター費など一部未払い 広島高裁判決

広島県安芸高田市の石丸伸二市長が市長選のポスター費などを一部支払っていないとして、印刷業者が起こした民事訴訟の控訴審で、広島高裁は13日、1審の判決を支持し、市長側に残額の支払いを命じる判決を言い渡しました。

この民事訴訟は、2020年8月の安芸高田市長選で初当選した石丸市長が、広島市中区の印刷業者に発注した選挙ポスターやビラの製作費107万7549円のうち、選挙運動費用の公費負担の上限額に当たる34万8154円のみを支払い、一部を支払っていないとして、業者が残額の72万9395円を求めているものです。

一審の広島地裁は今年5月、「営利企業が赤字になることをいとわず業務を請け負う理由は乏しい」などとして、業者側の主張通り残額の支払いを石丸市長側に命じる判決を言い渡しました。石丸市長側は「自分のみならず業者も『代金が公費負担の上限額に収まる』と認識していたのは明らか」などとして控訴していました。

13日の判決で広島高裁の西井和徒裁判長は、両者のメールのやりとりなどを基に、「業者が『公費負担の上限額を代金とする』意思を示していとは認めがたい」と指摘。また、「契約の確定から納品まで極めて短期間だった上、両者の間で以前に同様の取引が行われたことはなく、代金を決める際に公費負担額を重視すべきとは言えない」などとして、石丸市長側に残額の支払いを命じた1審判決を支持し、市長側の控訴を棄却しました。

石丸市長は「業者の勘違いに対する司法の評価が興味深いことになった」とコメントしています。

広島高裁の判決文では、石丸市長と業者が2020年7月30日から31日にかけて、代金についてやりとりしたメールが引用されていました。その内容は以下の通りです。

①石丸市長→業者
「いまさらですが、今回の発注でお支払いの総額はどれくらいになるものなのでしょうか。選挙運動の費用に制限があるため、念のためお伺いする次第です」

②業者→石丸市長
「ビラ・ポスターは弊社から安芸高田市へ請求書を指定の用紙で提出し、安芸高田市から入金されるものだと思います。したがって、石丸さまへは負担が無いかと思いますが、説明会資料にそういった説明書きや提出書類はございませんでしたでしょうか?」

③石丸市長→業者
「はい、ポスターとビラの費用は公費負担です。ただ、選挙運動に関連して無尽蔵に支出できる訳ではなく、総額に制限が設けられているとの認識です(今回の場合は500万円程度)。残りどの程度の支出が可能なのかを把握しておきたくお伺いしました。正確なルールは改めて確認しておきます」

④業者→石丸市長
「全体支出に関してのルールまでの知識は無いのですが、印刷物については、決められた計算式でのご請求になるのではないでしょうか?ルールのご確認を頂けましたら、お教えください」

上記のメールのやりとりに続けて、判決文に記載された内容は以下の通りです。

業者は2020年8月3日に本件各業務を全て終えた上、同日中に、石丸市長に対し、その報酬額を102万0800円(ポスターにつき39万8000円、法定ビラにつき1回目、2回目とも各26万5000円、消費税9万2800円)とする見積書をメールに添付して送付した。石丸市長は同日、業者に対し、「選管の説明によると、ビラは120,160円、ポスター227,994円が公費負担の限度額となっています。頂いた見積書は数倍の金額が提示してあるのですが、相場と比較して妥当なものなのでしょうか?●●さん(業者)の書き振りからして、一般的に自己負担が発生せず、それを前提に受注して下さっているとの認識でいました。」と記載したメールを送った。

判決文によると、業者と石丸市長が2020年7月23日以降、打ち合わせをして、確定した発注内容は以下の通り。

◆ポスターを260枚製作する。 ◆法定ビラを2種類製作する。他方、告示前ビラの製作は取りやめ、それまでのデザイン料等の費用は業者が石丸市長に請求する。 ◆法定ビラは、1回目及び2回目とも各8000枚を印刷し、各回7370枚を新聞2紙に折り込む。 ◆ポスター及び1回目の法定ビラは、小型チャーター便を手配して、同月30日中に石丸市長の選挙事務所へ納品する。 ◆2回目の法定ビラは、同月31日に宅配便で石丸市長の選挙事務所へ発送する。法定ビラは、同事務所において証紙貼りをした上で、石丸市長が同年8月3日に業者に持参し、業者が検品及び仕分けをした上で新聞折り込みセンターへ搬入する。

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