韓国ドラマヒットの決め手はヒロイン!2000年代のヒロイン像は?

2003年、「冬のソナタ」がNHK BSで日本初放送され、今年で20年。当時、日本を席巻した“韓流ブーム”“韓国ドラマ熱”は、様々な時代を経て裾野を広げ、今や幅広い世代に根付いている。ここまで韓国ドラマが愛され続けているのは、魅力的なキャラクターが生まれ続けてきたことも大きい。そこで、今回は、“ヒロイン”に焦点を当て、時代ごとに支持された主人公像を振り返ってみよう。

その前に。韓国ドラマを観るうえで重要なのは、実は、男性主人公以上にヒロインの人物像だ。どんなに好きな俳優が出ていても、女性主人公に共感できなければ物語にハマれない。視聴者の多くが女性であることを考えれば、ヒットの決め手はヒロインが握るといっても過言ではないのだ。


まず、韓流ブーム初期でいえば、「冬のソナタ」「美しき日々」「天国の階段」のヒロインたち。ものの見事にチェ・ジウの時代だったが、彼女が演じたヒロインの共通項は、「けなげで清楚、可憐」。つまり守りたくなるような存在だ。

「冬のソナタ」Licensed by KBS Media Ltd.(C)2002 Pan Entertainment Co., Ltd. All rights reserved

自分の仕事を持ち自立もしているが、ごく平凡な女性たちで、そこに社会的地位をもった男性たちが現れ、見初められていく。いわば典型的“シンデレラ”ストーリーが、この時代の視聴者をときめかせた。

そして、2005年の「私の名前はキム・サムスン」の大ヒットである。自分の意思を持ち、欲しいものは欲しい、嫌なものは嫌だとはっきり言えるヒロインの登場は、エポックメイキングだった。

恋のライバルとなる主人公の元カノが、可憐で守ってあげたくなる系女子だったのに対し、健康的で堂々とした年上女子サムスンが恋の勝者になる展開は、実に痛快で、ヒロイン像がここから大きく変わっていく。

その後、2007年の「コーヒープリンス1号店」、2009年の「美男<イケメン>ですね」で、男装ヒロインという新たな潮流が生まれる。男性たちのなかで同じように振る舞い奮闘するヒロインが愛らしく、また、そんな頑張り女子がイケメンたちに守られていくという構図も視聴者の心を掴んだのだろう。

決定打は、2010年の「トキメキ☆成均館スキャンダル」。このドラマでは、女性が学ぶことさえ許されなかった時代を舞台に、優秀な男性たちのなかで才を発揮していくヒロインを描き、“学問に男も女もない”というメッセージを伝えた。

職業、学問において男女平等を提唱する時代になってきたわけだ。

そして、女性にとって仕事が大きな意味を持つ時代へと移り変わっていく。その象徴が、2009年の「シティーホール」だ。キム・ソナ演じる末端の公務員が市長になるまでを敏腕副市長(扮チャ・スンウォン)が支えていくストーリーで、女性の政界進出が軽やかに描かれた。

30代半ばを超えた男女の恋物語でもあり、このあたりからロマンスの主人公の年齢が上がり、より“大人視点”になっていく。

同じ流れに、2010年の「シークレット・ガーデン」がある。貧しきスタントウーマン(扮ハ・ジウォン)のヒロインに超上流階級の財閥御曹司(扮ヒョンビン)が一目惚れすることから始まるラブストーリーだが、その一目惚れの理由が最高だ。 それは、「スタントしている姿がカッコよかったから」。

仕事に誇りを持ち全力を注ぐ彼女を讃え、愛し、応援していくという構図は、世の女性たちの理想だった。


TEXT:高橋尚子(編集・ライター)

© 株式会社エスピーオー