強みも弱みも知っている 「ずっと怖かった」/金谷拓実×中島啓太 対談(2)

お互いの強みも弱みも知っている(撮影/村上航)

中島啓太が国内男子ツアーの賞金王に輝いた2023年は、金谷拓実とのライバル関係がツアーのトピックスになった。若き2人の対談は全3回の第2回。ともにプロとして優勝争いを演じた今季、お互いのゴルフの変化をどう見たのか。(聞き手・構成/谷口愛純)

「クラウンズで今の強さは…」

―長年お互いのゴルフを見て、強みや弱みは把握している?
金谷 今年「中日クラウンズ」(4/27~4/30)から一緒に回る頻度が多かったけど、(中島が)回るたびにどんどん強くなっていくのは見えました。でも、クラウンズの時はまだ今のような強さは全く感じられなくて。すごく言い方が悪いけど、ビビりながらプレーしているような感じに見えた。ティショットも自信なさそうに打つし、スコアを伸ばしにいっているというより、手堅くプレーしているような。

手ごわくて、スキがない(撮影/村上航)

中島 序盤は「東建ホームメイトカップ」(3/30~4/2)で予選カットギリギリで回っていて、「関西オープン」(4/13~4/16)もそうでした。守り気味というか、まず予選を通らないとって、全く上を見ていなかったのがプレーに出ちゃっていたんでしょうね。
金谷 それが、急にスイッチが入ったように自信を持って積極的なプレーをし始めた。何がきっかけだったのか聞きたいくらい。どこからだろうなあ。
中島 「ミズノオープン」(5/25~5/28)ですかね。初めてのコースだったんですけど、すごく好きで、やりやすかった。その週にパターを替えたことと、ドローボールに自信がついたことが大きかったと思います。

ちょっと照れ臭い(撮影/村上航)

―そこからの中島選手の変化はどうでしたか?
金谷 どんどん欠点が減っていったので、全くスキがない。最後はもう、すごく自信を持ってプレーできているし。最後の5連戦の序盤とか、パターのスピードが完璧で。外れても“お先です”ってストレスなくできるのは本当に強い選手。グリーン周りのバンカーもすごく上手になったな、とか。
中島 最近、試合中に見に来るようになりましたよね。
金谷 え?
中島 グリーン周りのアプローチを打つとき、見に来るようになったんですよ。
金谷 ええ、うそでしょ!? 全然そういうつもりはなかったけど(笑)。 アマチュアからずっとプレーしていると、もちろん強みは分かっているし、逆に『こういうのは苦手なんだろうな』っていうのも見えていて。開いて距離感を出すアプローチとか、後半戦になるにつれてすごく上手になっているなって、会うたびに感じました。

コースの中と外で、こんなに空気感が違う(撮影/村上航)

―中島選手から見た金谷選手の強みは?
中島 金谷さんは、僕がバーディを獲ったら次のホールでバーディを獲ってくる。気持ちが強くて、自分をコントロールするのがすごく上手。
金谷 ありがとうございます(笑)
中島 「ツアー選手権」(6/01~6/4)で思ったんですが、15番で以前はユーティリティでティショットをしていたのに、最終日の局面でドライバーを持つんだ、って。左に曲げてしまったけど、積極性が増したなと感じました。 あとは勝手なイメージですけど、ショートゲームがめちゃくちゃ上手で、ロングゲームはちょっとだけ僕の方が上だった。それがショットにも自信を持たれてスキがない。いい週と悪い週がはっきりしてましたよね。
金谷 してた。前まではいい時がなかったけどね。左に行くミスが多いから、それをなくしたいなと思います。

「流れを行かせたら手遅れに」

1年を通しての成長、先輩に伝わっていた(撮影/村上航)

中島 あとは優勝争いをしていると、もうずっと怖かった。 最終日はコースの情報も集まって、終盤になるにつれて絶対に強くなる。流れを金谷さんに行かせちゃったら手遅れだと思ったので、必死に戦っていました。 金谷さん、前まで初日がちょっと苦手だったじゃないですか。
金谷 うん(笑)
中島 初日に出遅れて、でも3日目に爆発して4日目は優勝争いという印象だったんですが、初日から「66」「67」で回られるようになって、全くスキがない。一気に置いていかれる怖さを感じながら、やっていました。

―優勝争いに絡んでいなくても、金谷選手は気になる?
中島 「パナソニックオープン」(9/21~9/24)で2人とも優勝争いより下にいたんですが、まず金谷さんのスコアを目標にプレーしていました。一緒に回っていないけど、優勝争いの練習だと思って。
金谷 なるほど、全然気づかなかった。 啓太は初日にどんな位置であろうと、最後は結局上がってくる選手だから、そこを見ていてもしかたがないなって。本当に一番手ごわくて、一緒に回るとすごく楽しい。だから、自分に集中しないと苦しくなるなと思ってやっていました。

―シーズンを終えて、お互いに聞きたいことは?
中島 僕がコースメモを持っていないって、気付いていました?
金谷 それね、なんか記事を見て気が付いた。あれもすごかったよね。風とか嫌じゃないの?アマチュアの時は予報を見て方角や時間をチェックしていたし、僕はちゃんと見たい。それが染みついちゃったから。

手放したメモ(撮影/高藪望)

中島 記憶力が、結構、あるので…(笑)。知っているコースだったら、前の日の夜にピンポジを見て、風向きをチェックして、夜のうちに球筋をイメージしていました。あとはキャディさんを信頼してプレーして。
金谷 すみません、それは知らなかったです(笑)
中島 ちょっと怖かったんですが、去年の「ダンロップフェニックス」で予選落ちをして、谷口徹さんに「数字にとらわれて考え過ぎるから」と言われてやったら感触がかなり良かった。知っているコースだけですけどね。
金谷 無理ですよ。メモに書き込みなさいって(ナショナルチームで)あれだけ色々なことをやってきたからね。
中島 結構、勇気がいりました。

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