「太陽の末裔」から「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」まで…共感される韓国ドラマのヒロインたち

2003年、「冬のソナタ」がNHK BSで日本初放送され、今年で20年。当時、日本を席巻した“韓流ブーム”“韓国ドラマ熱”は、様々な時代を経て裾野を広げ、今や幅広い世代に根付いている。ここまで韓国ドラマが愛され続けているのは、魅力的なキャラクターが生まれ続けてきたことも大きい。そこで、今回は、“ヒロイン”に焦点を当て、時代ごとに支持された主人公像を振り返ってみよう。

その前に。韓国ドラマを観るうえで重要なのは、実は、男性主人公以上にヒロインの人物像だ。どんなに好きな俳優が出ていても、女性主人公に共感できなければ物語にハマれない。視聴者の多くが女性であることを考えれば、ヒットの決め手はヒロインが握るといっても過言ではないのだ。


2010年代に入ると、アラフォーヒロインのロマンスも徐々に生まれていく。その代表作が、2015年の「2度目の二十歳」だ。夫と子供のためだけに生きてきた専業主婦のヒロインが、反旗を翻し、自分の人生を見つめ直しやり直していく物語が痛快で、この時代の女性への応援歌でもあった。

かつて「けなげで可憐」の代名詞だったチェ・ジウがヒロインを演じたことでも、時代の変化を感じさせる。

そして、2016年の「太陽の末裔 Love Under The Sun」だ。 「医者なら彼氏はいないでしょ。忙しいから」「軍人なら彼女はいないでしょ。キツイから」 という出会いのセリフが表しているように、互いに社会的地位があり、仕事優先で恋愛はなかなか縁がない2人が主人公だ。

どちらが上でも下でもなく、男女が同等の立ち位置でロマンスを繰り広げていく様は、仕事に邁進する世の女性たちの共感を誘った。この流れを継ぐのが、2019年の「愛の不時着」だ。

一方で、2017年には、朝鮮時代の女流画家、師任堂を主人公にした「師任堂(サイムダン)、色の日記」が生まれた。「良妻賢母」の象徴とされた史実の人物だが、そんな彼女にも、芸術を通して想いを通わせた愛しい男性がいた、という斬新な発想で、ロマンスの部分にスポットが当てられていたのが印象的だった。

近年は、2018年から始まるMee Too運動の広がりもあり、韓国ドラマの女性たちは俄然、強くなる。2020年の大ヒット作「梨泰院クラス」のヒロイン、イソ(扮キム・ダミ)がまさにそうだ。

主人公セロイ(扮パク・ソジュン)に向かって「私が社長を成功させる」と言いのける有能女子。女性が男性を見初め、サポートしていく、ある種、男女逆転のイマドキヒロインの誕生だ。

2021年の時代劇ロマンス「赤い袖先」のヒロイン、ソン・ドギムも時代を象徴している。王に愛されることより、自分らしく生きる道にこだわり続けた彼女は、現代を生きる女性たちを投影しているかのようだった。

「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」

また、2022年の大ヒットドラマ「二十五、二十一」と「ウ・ヨンウ弁護士は天才肌」は、いずれも夢に向かって努力し続けるヒロインに対し、男性主人公が刺激を受け、無償のエールを送り続ける恋物語だった。同様に、「私の解放日誌」「シスターズ」「ザ・グローリー〜輝かしき復讐〜」と2022年から2023年にかけて、闘うヒロインと支える男性たちの物語もヒットしている。

つまり、力強く行動を起こす女性たちに対し、男性たちがサポートする役回りを担うという構図である。

こうしてみると、20年で、女性たちの生き方も、社会における立ち位置も大きく変わってきた。女性が変われば、望まれる男性主人公像も変わっていく。時代を移し出す鏡、だから韓国ドラマは面白い。


TEXT:高橋尚子(編集・ライター)

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