韓流20周年を振り返る!「愛の不時着」はファンタジーの進化系

2003年、「冬のソナタ」の日本初放送により韓流ブームが巻き起こって今年で早20年。今でこそジャンルも多様化し、人間ドラマやサスペンスなどでも高い評価を得ている韓国ドラマだが、その醍醐味、真髄は、やはり「愛の物語」にあるように思う。一生に一度の恋かと思われるほど、愛することに凄まじいエネルギーを注ぐ主人公たちに、どれだけときめかされてきただろう。というわけで、今回はラブストーリーに特化して、その変遷を見ていきたい。


タイムスリップを素材にした「シンイ-信義-」「イニョン王妃の男」「屋根部屋のプリンス」(すべて2012年)も、他の時代から来た相手が「いつか去ってしまう」切なさが根底にあり、2人の愛が深まれば深まるほど、視聴者の心を揺さぶった。

マンガの世界の主人公と恋に落ちる、「W-君と僕の世界-」(2016年)もこの系譜だろう。 そして、今やファンタジーロマンスは韓ドラ名作の宝庫になっている。

また、「君の声が聞こえる」(2013年)から始まる、ロマンスにサスペンスの要素を入れ込むパターンは、「愛する人を危険から守りたい」という切実さが、2人の絆を強くする仕掛けとなった。

殺人の加害者の息子と被害者の娘の愛を描いた「ここに来て抱きしめて」(2018年)もこれに当たる。悲しい宿命は純愛を生む。

何かの試練が加わることは、愛を描くうえで必須なのだ。

「愛の不時着」

そして、ある種ファンタジーの進化系といえるのが、2019年の「愛の不時着」だ。「冬のソナタ」が純愛+足かせの切なさでシンドロームを巻き起こしたとすれば、「愛の不時着」はラブコメ+足かせという両極のタッチをうまく掛け合わせた成功例。

北朝鮮と韓国という国境を超えた男女の異文化交流をコミカルに見せつつ、南北の叶わぬ恋という切ない展開に昇華した手腕は見事。本来ならあり得ない設定だが、想像し得るリアル度が絶妙だったのだろう。

ファンタジーやジャンルミックスものが果敢に作られる一方で、近年は「スタートアップ:夢の扉」(2020年)、「その年、私たちは」(2021年)、「二十五、二十一」(2022年)と、再び等身大ロマンスが増えている。

御曹司でも神でもない平凡な主人公たちが、夢を追いながら愛や友情を育んでいく、どこにでもあるシンプルな恋愛ストーリーだ。それでも、ドキドキさせられ、胸を締め付けられるのは、主人公たちがいずれも愛に対して真っ直ぐで全力だからだろう

様々な切り口で、愛というものを真正面から描いていく韓国ドラマ。そのエネルギーを、羨ましく思い憧れる気持ちが、韓ドラに魅了され続ける理由なのかもしれない。


TEXT:高橋尚子(編集・ライター)

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