多様化する韓国ドラマ!日本でもリメイクされた「ミセン」「シグナル」、レトロブームを巻き起こした「応答せよ1997」

2003年に日本で「冬のソナタ」が放送されて以降、韓国ドラマといえば、出生の秘密や記憶喪失、貧富の差などを取り入れた純愛ドラマや、劇的な悲恋もののイメージが強かった。その後、典型的なシンデレラストーリーが影を潜めていき、様々な形の恋愛ドラマが生み出された一方で、恋愛をメインテーマとしないドラマが増加。

今回はヒューマンドラマやサスペンスといった多彩なジャンルの作品と、その制作背景について振り返ってみる。


韓国ドラマは、長らく3大地上波局(KBS、MBC、SBS)で放送されてきた。それが2011年、一般にケーブル局と呼ばれる総合編成チャンネルが次々に開局。これらの局でドラマ放送が始まったことが、年間制作数の増加とジャンルの多様化へと繋がり、韓国ドラマが大きな転換期を迎えることになる。

この時期のひとつの事象として挙げられるのは、従来のラブストーリー偏重の傾向に飽き足らなくなった有能な作り手たちが、非地上波という自由な制作環境のもと、ロマンスよりも人間を描くことに主眼を置き、ヒューマンドラマをヒットさせたこと

また、地上波局では規制される刺激的な描写が、ケーブル局作品ではある程度まで許容されるなど表現の幅が広がったことも、質の高いサスペンスやスリラー、ダークな犯罪捜査劇を生み出す背景になった

最初にジャンルの多様化をはっきり感じさせたのは、ケーブル局tvNの2014年作「ミセン-未生-」だ。社内恋愛もない新人サラリーマンの日常をリアルに綴ったこの作品が感動を呼び、社会現象を巻き起こした。

これにより、恋愛を描かなくともドラマをヒットさせられる、ということを多くの人に知らせたエポックメイキング的ドラマとなった。

同作を手掛けたキム・ウォンソク監督は、2016年には「シグナル」を送り出す。ファンタジーとミステリーの要素を併せ持つ秀逸なヒューマンドラマは、韓国ドラマの歴史を変えたと賞賛された

監督の世界は、2018年の傑作「マイ・ディア・ミスター〜私のおじさん〜」でさらに極まる。

そしてもう一人、ヒューマンドラマを人気ジャンルとして定着させたのが、シン・ウォンホ監督だ。

2012年に「応答せよ1997」をヒットさせ、tvN飛躍のきっかけを作った。

「応答せよ1997」© CJ ENM Co., Ltd, All Rights Reserved.

一昔前の高校生の青春をノスタルジックに綴ってレトロブームを巻き起こしたドラマはシリーズ化され、ソ・イングクやパク・ボゴムなど新たなスターも誕生

シン監督はその後、「刑務所のルールブック」(2017年)、「賢い医師生活」(2020年)を手掛け、さらに幅広い人気を獲得。名実ともに群像劇の名手となった。

財閥企業傘下のtvNは、2006年の開局後、徐々にドラマ制作に力を入れ、潤沢な資金力を背景に多くの才能を地上波局から次々に引き抜いて地固めをした

その際、2011年にKBSから移籍してきたのが、まさにキム・ウォンソクとシン・ウォンホの両監督。そして着実に結果を出すことに成功した。


TEXT:小田香(ライター)

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