ETRCの2024年カレンダー発表。ドイツ・ニュルでの祭典『ADACトラック・グランプリ』含む全8戦を予定

 ノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)が自身5度目のシリーズチャンピオン獲得を決めているETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップが、来季2024年のカレンダーを公開。5月末のイタリア・ミサノ開幕で、年間最大の“祭典”となるドイツ・ニュルブルクリンクでの『ADACトラック・グランプリ』を含む全8戦がスケジュールされている。

 またシリーズは年間表彰式に先立ち、この11月を中心にFIA国際自動車連盟とともに持続可能性を見据えた“水素”の動力源と、そのモータースポーツにおける活用へ向けた取り組みを強化するワーキンググループの創設や、次世代のレーシングドライバーや才能ある選手を支援する『ヤングドライバー・デイ』を主催するなど、その将来に向け精力的な活動を続けている。

 すでに10月初旬にシーズン最終戦を終えているETRCは、この11月末にFIAと協力してパリでワークショップを開催。メーカー、エネルギーサプライヤー、コンポーネントサプライヤー、航空宇宙工学の専門家を含む46の業界代表者が集まり、最先端の技術と持続可能性への取り組みを強化すべく“水素”のテーマについて、オープンで生産的な議論が交わされた。

 この“水素ワークショップ”は、トラックレースのコミュニティ内において「持続可能性の促進における重要な一歩」だと、ETRAマネージングディレクターのゲオルグ・フックスもその意義を強調する。

「我々の使命は、グッドイヤーFIA ETRCを持続可能な慣行と最先端技術を促進するための顕著なプラットフォームとして確立することだ。FIAの規制の現状や、道路利用やモータースポーツにおける水素に関連する業界の構成要素、技術動向の評価など、いくつかの目的を達成することを目指している」

 ミーティングでは、この分野で進行中のプロジェクトが紹介されるなか、シリーズにとって重要な焦点のひとつは、とくに水素貯蔵システムと燃料補給手順に関して、トラックレースの規制を水素燃料車両特有の要求に適合させるための洞察を収集することにあった。

 すでに2021年より化石燃料を廃止し、100%持続可能なサステナブル・フューエルへの切り替えに成功した初のモータースポーツ・シリーズとして歴史を刻んでいるETRCだが、この7月に開催されたドイツ戦のパドックではチーム・ハーン・レーシングが製造した世界初のフルEVレーシングトラックもお披露目されている。

「チャンピオンシップはあらゆる種類のテクノロジーを受け入れており、水素は将来、トラックレースのグリッド上で別の持続可能なソリューションとなる可能性がある」と続けたフックス。

毎年10万人を超える来場者を集める欧州物流業界関係者が一堂に介するファンに人気のイベント『ADACトラック・グランプリ』をハイライトに、前年度同様10月のスペイン・ハラマまで続く8戦がプロットされている
シリーズはFIA国際自動車連盟とともに、持続可能性を見据えた“水素”の動力源と、そのモータースポーツにおける活用へ向けた取り組みを強化するワーキンググループを創設した

■2024年ETRCは5月にミサノで開幕「素晴らしいシーズンとなるだろう」

「参加者全員から非常に肯定的なフィードバックを得た水素ワークショップは、初めてかつ重要な試みとなった。水素技術についてさらに理解し、シリーズでのその潜在的な応用を探求するための一歩となるはずだ」

 同じく、次世代のトラックレースのスター候補生たちにインスピレーションを与え、相互に結びつけ「レース・コミュニティ内でのコラボレーションと相互成長のためのプラットフォームを構築すること」を目指し、パリのFIA本部で『ヤングドライバー・デイ』も主催した。

 ポルトガル出身のホセ・エドゥアルド・ロドリゲス(ロボコノーテ・レーシング・トラックチーム/マン)は、2023年のヨーロッパ・ヤング・ドライバーズ・チャンピオンシップのタイトルを獲得した最初のドライバーとなっており、アゼルバイジャンの首都バクーのコンベンションセンターで開催されたFIA年間表彰式では、改めて彼の功績が讃えられた。

 今季2023年に初導入されたヨーロッパ・ヤングドライバーズ・チャンピオンシップは、30歳未満のドライバーに参加資格が付与され、シリーズのプロモーターズ・カップと同じ方法で競い合い、ポイントを獲得し、最速ドライバーがタイトルを獲得する。

 この新しいカテゴリーは若手有望株を見つけ出し、トラックレーシングドライバーとしての将来性を高め、次世代の欧州トラックレーシング・チャンピオンを見つけることを目的としている。

「私たちは若いトラックレーシングドライバーの育成と潜在能力の開発に取り組んでいます。欧州ヤングドライバーズチャンピオンシップとこのヤングドライバー・デイは、潜在的な将来のチャンピオンを特定するうえで重要なステップになるでしょう」と語るのは、ETRAのオペレーション・ディレクターを務めるジャニーネ・マイヤー。

 そのFIA ETRCの新年度は、5月25~26日にイタリア・ミサノで開幕し、前半戦に移動したベルギー・ゾルダーなどを経て、毎年10万人を超える来場者を集める欧州物流業界関係者が一堂に介するファンに人気のイベント『ADACトラック・グランプリ』をハイライトに、前年度同様10月のスペイン・ハラマまで続く8戦がプロットされている。

「チームとドライバーにとって、トラックの内外で我々が持つ素晴らしいレーシングプロダクトをふたたび示すための、非常に強力なプラットフォームがある」とETRAマネージング・ディレクターのロルフ・ウェルナー。

「スケジュール上のおなじみの日程の範囲は、我々がヨーロッパ最大のサーキットのいくつかと今後も素晴らしい関係を築いていけることを示している。2024年もあらゆるビッグネームが揃う素晴らしいシーズンとなるだろうし、我々はグッドイヤーFIA ETRCの舞台で持続可能性とイノベーションを推進するために引き続き努力していくだろう」

「このヤングドライバー・デイは、潜在的な将来のチャンピオンを特定する上で重要なステップになるでしょう」とジャニーネ・マイヤー(左)
自身5度目のシリーズチャンピオン獲得を決めたノルベルト・キス(レベス・レーシング/マン)と、ホセ・エドゥアルド・ロドリゲス(ロボコノーテ・レーシング・トラックチーム/マン)

■ETRCヨーロピアン・トラック・レーシング・チャンピオンシップ 2024年カレンダー

ラウンド 開催日 開催地
Rd.1 5月25〜26日 イタリア/ミサノ
Rd.2 6月8〜9日 スロバキア/スロバキアリンク
Rd.3 6月22〜23日 ベルギー/ゾルダー
Rd.4 7月13〜14日 ドイツ/ニュルブルクリンク
Rd.5 8月31〜9月1日 チェコ共和国/モスト
Rd.6 9月14〜15日 ポーランド/ポズナン※
Rd.7 9月28〜29日 フランス/ル・マン(ブガッティ)
Rd.8 10月5〜6日 スペイン/ハラマ
※主催者との契約条件協議中

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