飲酒運転の摘発増加 母親が語る亡き長男への決意と活動

広島県内で、飲酒運転の摘発が増えています。12年余り前に高校生の長男が飲酒運転の車にはねられて亡くなった母親の、飲酒運転根絶への決意と活動を取材しました。

■三浦さん講演

「真っ二つに折られた自転車を見られて、皆さんはどんな感情を持ったでしょうか。 どんな言葉で語るよりも伝わる思いがあるのだと思っています」

11月9日、広島市内の大学で講演に臨んだ三浦由美子さん。飲酒運転で家族を失った遺族です。語るのは、事故の悲惨さと残された家族の悲しみ。三浦さんは、各地で講演しています。高校2年生だった長男の伊織さんが亡くなって、12年余りが経ちました。

クラブ活動を終え、自転車で帰宅していた伊織さんが、広島市内の県道で飲酒運転の軽乗用車にはねられたのは、2011年5月2日。即死でした。

■三浦さん

「なぜ、伊織が亡くならなければならなかったのか、なぜ加害者が生きているのか、なぜこんなにも苦しいのかわからず、頭がぐちゃぐちゃになりました」

「飲酒運転はやってはいけないこと、ただそれだけのことなんです。それができない人が、罪のない人を傷つけ、命を奪い、その人にかかわるすべてを絶ってしまう」

加害者は、「危険運転致死」の罪で「懲役10年」の判決が確定し服役。三浦さんは、4年半に渡り手紙のやりとりを続け、自らの思いを伝えましたが、遺族に寄り添った言葉を聞くことは出来なかったと言います。

■三浦さん

「まだ許しましたとは言い切れない私ですが、許しとは何なのか、自分自身に問いながら少しずつ変化していく答えを心で味わっていこうと思います」

最愛の息子を奪い、今も残された家族を苦しめる飲酒運転。悪質な運転を処罰する「自動車運転死傷行為処罰法」の2014年の施行後、県内の交通事故は減少傾向です。しかし、飲酒運転はそうではありません。今年10月末までに、347件を摘発。去年の同じ時期の312件を大きく上回っています。11月には、呉市教育委員会の幹部職員が、酒気帯び運転の疑いで逮捕。市の職員も同乗していたことが分かりました。コロナ禍を経て、飲酒運転に対する罪悪感が薄れていると指摘されても仕方ない事態です。

一方、去年の「道路交通法」改正に伴い、今月1日から、営業用の車や社用車を使う事業者に対して、アルコール検知器による酒気帯びの確認が義務付られました。広島市西区で飲食店向けにカット野菜などを扱う「おおたけ」。社用車を運転する社員は出勤すると、管理者立ち会いで検査するきまりです。

■交通担当

「機械を使うことで数値化されて簡単に判断できるというのは非常に有難いなと思いました」

「常に自分の飲酒状態を把握するように、普段から意識づけというのも社員に浸透していけばいいな」

伊織さんが、16歳で命を絶たれて12年余り。母親の由美子さんの心境に変化が起きていました。

■三浦さん

「自分が被害者意識でい続けることが嫌になってきて、自分の人生を自分らしく生きることが伊織が喜んでくれることだと思うし」

そして、飲酒運転事故の遺族の声を、1人でも多くの人に伝える。それがなき長男に誓う覚悟です。

■三浦さん

「自分は飲まないから、自分はしないからとか、他人事で済ませるのではなくて、事故を起こさないように、みんなが幸せでいられるように、考えて頂きたいなと思ってます」

《2023年12月14日放送》

© 広島テレビ放送株式会社