県産シャクヤクで医薬品 広貫堂、25年度商品化目指す

広貫堂が採用を検討している県産シャクヤク「春の粧」

 医薬品メーカーの広貫堂(富山市梅沢町、塩井貴晴社長)は、富山県産シャクヤクを使った医薬品の開発に乗り出した。エゴマの栽培・加工などを行う「健菜堂」(同市草島)と連携してシャクヤクの栽培をスタート。2025年度末ごろの商品化を目指す。生薬の輸入価格高騰に対応するとともに、県内の医薬品メーカーでの活用を広げ、農家の収益増につなげたい考えだ。

 シャクヤクの根は鎮静効果があるとされ、「葛根湯」など漢方薬に広く用いられる。ほとんどが中国産だが、中国国内での需要の高まりなどから価格が上がっており、国産への転換が望まれている。

 広貫堂が採用を検討しているのは、県がブランド化を進める品種「春の粧(よそおい)」。有効成分「ペオニフロリン」の値の高さが特長で、6月には薬酒メーカー大手、養命酒製造(東京)の「薬用養命酒」の原料に採用された。広貫堂は健菜堂に栽培研究委託し、富山市大沢野地域で22年に栽培を開始。同年12月に千株、23年11月に1200株を植えた。

 シャクヤクは生根のまま出荷すると取引価格が安く、収益増には各農家が乾燥調製設備を持つことが望ましいが、導入費用に加え、乾燥にかかる時間の長さがネックになっている。そこで両社は根をカットしてから乾燥することで時間を短縮し、有効成分に影響が出ないかなどを検証する。

 広貫堂は21年の不適切製造発覚を機に生産品目を絞り込み、現在は受託製造に注力している。シャクヤクを使った製品を含め、新たな自社製品の開発を進め、25年度末ごろから順次市場投入する方針だ。

 県くすり振興課によると、23年度の「春の粧」の栽培農家は10戸。根は収穫まで4年かかるため、参入のハードルが高い。塩井社長は「効率的に乾燥できる方法が確立され、医薬品や食品メーカーに流通する仕組みができれば、栽培普及が進む。県内企業での活用を広げるきっかけになればいい」と話した。

漢方薬などに広く用いられる乾燥させたシャクヤクの根

© 株式会社北日本新聞社