奈良にある実際の老舗旅館が舞台にした家族の物語 「霧の淵」公開決定

村瀬大智監督、三宅朱莉、水川あさみらが出演する映画「霧の淵」が、2024年4月に劇場公開されることが決まった。

「霧の淵」は、実際にある老舗旅館での“時間”が、静かに美しく映し出されていく作品。奈良県南東部の山々に囲まれたある静かな集落。かつては商店や旅館が軒を並べ、登山客などでにぎわったこの集落で、代々旅館を営む家に生まれた12歳のイヒカ。数年前から父は別居をしているが、母の咲は父との結婚を機に嫁いだこの旅館を義理の父・シゲと切り盛りしている。そんなある日、シゲが姿を消してしまう。旅館存続の危機が迫る中、イヒカの家族に変化の時がやってくる。

なら国際映画祭の学生作品部門「NARA-wave」で観客賞を受賞した村瀬大智監督が、実際に奈良の地を訪れて構想・企画する同映画祭のプロジェクト「NARAtive(ナラティブ)」にて制作。本作が長編商業デビュー作品となった。監督自らが単独で川上村に長期滞在、現地の人々と交流し生み出された。イヒカを演じて主演を務めるのは、オーディションで選ばれた奈良県出身の新人俳優・三宅朱莉。本作が映画初出演にして初主演となる。イヒカの母・咲を水川あさみ、イヒカの父・良治を三浦誠己、イヒカの祖父・シゲを堀田眞三が演じる。

村瀬大智監督やキャストのコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■イヒカ役:三宅朱莉
この「霧の淵」という作品の出演が決まった時、喜び以上に驚きや不安がありました。
それまで映画に出演した経験もなく、不安な気持ちもありました。
ですが、いざ現場入りしてみると、監督さんやスタッフさん、共演者の方々が私のことをイヒカとして接してくれて、イヒカとして生活する事で、とても自然体で撮影に臨むことができました。
奈良の川上村で過ごす、日常を切り取った様な暖かい作品です。ぜひ劇場でご覧下さい。

■イヒカの母・咲役:水川あさみ
奈良の川上村で住むようにして撮影した日々を思い出します。
山で椎茸や山菜をとったり、薪で火を焚べたり、沸騰するお湯の湯気すら愛おしい時間でした。
わたし演じる咲のモデルとなった朝日館の女将から、色んな話を伺う事で役が生きてきて映画に反映される。
東京で暮らすわたしには全てが贅沢で素晴らしい経験でした。
それぞれ登場人物の想いや葛藤はもちろんですが、雰囲気や匂い、そんなものまで感じてもらえたら嬉しいです。

■イヒカの父・良治役:三浦誠己
大好きな出演作が、またひとつ増えました。
撮影現場で何度も映画が「育つ」瞬間を体験でき、また演技の中で導かれるように動く自分に鳥肌が立ちました。
この映画は村瀬監督のもと、素晴らしいチームの力と奈良県川上村の方々の協力によって「育てられた」映画だと思っています。
素晴らしい脚本が、撮影現場の様々なアンサンブルによって超越していく瞬間がありました。
是非、映画館で「風の音」「森の匂い」を感じて下さい。

■イヒカの祖父・シゲ役:堀田眞三
令和4年3月23日、古来より神秘の力が宿り、悠久の歴史を誇る 奈良県の奥吉野川上村、朝日館さんにてクランクインしました。
峰にはまだ雪があちこちにあり、 以来 山全体 吉野桜 満開の絶景 に至る 大自然の元 3週間撮影しました。安全成功祈願祭、さざれ石、てんから釣り、見事な苔・石垣 、源流館 、ジビエのロールキャベツ、鹿の焼き肉弁当 春増さんのお話、撮影では百々カメラマンの笑顔に助けられ、尽きぬ想い出ばかりです。
そして何よりの喜びは 皆々さんに 凄ーく良くして頂け心豊かな毎日を過ごさせていただいた事です。『霧の淵』に関わる皆様、本当にありがとうございました。

■村瀬大智 監督
『霧の淵』は、川上村で川上村の皆さんと作った大事な映画です。
2020年から川上村で長い時間を過ごさせてもらい、撮影も沢山の村民の方々にご協力やご出演いただきました。
そして『霧の淵』は、過疎化が進む村で老舗旅館を営む家族の映画です。
この映画の舞台となった奈良県の川上村は、2018年には人口減少率では全国でワーストになってしまった村です。
僕はこの村出身でもないし、縁もゆかりもありませんでした。言ってしまえば他所者です。
他所者には分からないこともあれば、他所者だからこそ感じるものもあります。
村内の人が住まなくなってしまった集落、 ダムの底へと続く旧道。
かつての人々の生活の痕跡。
何かを永遠に保存していたい気持ちと衰退の過程の瞬間にある無常を美しいと思ってしまう矛盾した気持ちを抱きながら、この映画は出来上がりました。
過去、現在、未来と、フレームの外へ伸びてゆく川上村での時間を体感していただけたら嬉しいです。

【作品情報】
霧の淵
2024年4月公開
配給:ナカチカピクチャーズ
©2023“霧の淵”Nara International Film Festiva

© 合同会社シングルライン