築320年古民家の蔵、カフェに再生 喫茶巡りの女性の思い、所有者に届く 姫路・網干「片岡家蔵 きなり」

歴史ある町家をカフェに再生した舘麻由さん。食材にこだわったメニューを提供する=姫路市網干区新在家

 築320年を超える古民家「片岡家住宅」(兵庫県姫路市網干区新在家)の米蔵だった建物が今秋、カフェに生まれ変わった。10代の頃からカフェ巡りが好きだった同区の舘麻由さん(42)が、内装を整えて開業。コーヒー(500円)やカレー(700円)などを用意し、舘さんは「歴史ある建物で日本の文化に触れ、心身が豊かになる時間を過ごしてほしい」と話す。(田中宏樹)

 片岡家は龍野藩の大庄屋で、同住宅は1702(元禄15)年の建築とされる。母屋に隣接する米蔵だった建物は、昭和30年代から2000年ごろまでカメラ店として使われたという。11年には市が「都市景観重要建築物等」に指定した。

 舘さんは大阪府箕面市出身で、高校生の頃から神戸や京都にあるカフェや喫茶店によく訪れた。店主の人柄や内装の雰囲気が店舗で異なり、「どの店も個性的で、心を豊かにしてくれる場所だった」と振り返る。

 そんな個人経営の店舗は、コーヒーチェーン店の勢力拡大で数を減らした。約10年前、結婚を機に転居した姫路市もチェーン店が多く、画一化されたサービスや内装に寂しさを覚えた。「自分が行きたいと感じられる店を開きたい」との思いが徐々に膨らんだ。

 22年1月から姫路商工会議所の創業塾に参加。同年春には古民家に親しむイベント「町家の日」で同住宅に足を運んだ。保存活用に携わる人たちと知り合い、カフェ開店の思いを伝えたところ、所有者から建物を借りられることになった。

 内装の壁を張り替え、梁(はり)や柱、天井の汚れを丁寧に落とした。店で提供するコーヒーは豆の量や比率、蒸らす時間などを変えて何度も試作。こだわりの器もそろえ、今年9月下旬にカフェ「片岡家蔵 きなり」と名付けて開業した。

 カレーはルーから手作りし、農薬を減らして栽培された丹波篠山市産の米や淡路島産のタマネギを使うなど地産地消を意識する。県内産の小麦粉を100%使用したパウンドケーキ(300円)も用意する。

 「普段から家庭でおいしく食べ、安心して提供できる食材を使った」と舘さん。娘2人を育てる母親でもあり、「子育ての悩みなども気軽に話せる場にしていきたい」と話した。

 火、水、金、土曜日の午前10時~午後3時に営業。問い合わせは店のインスタグラムで受け付ける。

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