新渡戸家に旧記念館の建物無償譲渡か 青森・十和田市、議会に合意案提案へ

 青森県十和田市が旧市立新渡戸記念館を巡り、同市の新渡戸家に建物の明け渡しを求めて青森地裁十和田支部に起こした訴訟で、市が新渡戸家側との調停合意に向けた議案を、開会中の定例市議会に追加提案することが14日、分かった。同支部の調停条項案提示を受けたもので、複数の関係者によると、建物を新渡戸家に現状のまま無償で譲渡することが柱の一つとみられる。

 追加議案は議会最終日の19日に審議される見込み。可決されれば耐震診断結果などを巡り8年以上にわたって続いてきた市と新渡戸家側の対立が解消に向かう。

 14日、市が議員向けに非公開の会合を開き、調停条項案や追加議案について説明。終了後の取材に対し、北舘康宏副市長が追加提案することを明らかにした。内容については「コメントできない」とした。

 同館は1965年建設。市が建物を、新渡戸家側が土地と多くの収蔵史料を所有している。市は2015年4月、建物のコンクリート強度不足を理由に休館。6月に市議会本会議で記念館廃止の条例案を可決した。新渡戸家側は条例取り消しを求めて行政訴訟を起こしたが19年12月、最高裁が新渡戸家の上告を棄却し廃止が確定。民事調停の不成立を経て20年8月、市が明け渡しを求め提訴した。

 明け渡し訴訟で、市側は建物が地震で倒壊する危険性が高く、コンクリートの補強効果にも疑問があるなどと主張。新渡戸家側は、独自に行ったコンクリートの強度検査の結果を基に「建物の補強は可能。耐震性に問題はない」などと反論していた。訴訟はその後、話し合いによる解決を探り、民事調停法に基づく調停に移行したとみられる。

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