「政治資金パーティーは錬金術」現役政治記者が語る、自民党裏金キックバック疑惑とは?選挙ドットコムちゃんねるまとめ

YouTube「選挙ドットコムちゃんねる」では、毎週選挙や政治に関連する情報を発信中です。

2023年12月12日に公開された動画は緊急生放送!テーマは「自民裏金疑惑の行く末」。朝日新聞政治部の現役記者、今野忍氏をお招きし、この問題の根幹から自民党派閥の因果までを語っていただきました。

歴史は繰り返す……?

【このトピックのポイント】
・「自民党裏金キックバック疑惑」とは?改めて説明します
・安倍派に支えられた政権はどうなる?
・今回の裏金疑惑、リクルート事件とのまさかの共通点とは?

政治資金パーティーや派閥、何が問題?改めて解説します

自民党の安倍派(清和政策研究会)で所属議員に対し、政治資金パーティーの販売ノルマを超えた分を、政治資金収支報告書に記載しないままキックバックしていた疑い。

今野氏は、政治資金パーティーの目的は「派閥への寄付金集め」だと解説します。

リクルート事件などのスキャンダルを経て、個人への献金の規制を強化してきたのが政治資金規正法です。

たとえば、現在の法律では、企業が個人の政治家に献金することはできません。ですが、自民党本部に寄付をすることや、派閥など登録された団体が政治資金規正法で定められた手順で行ったパーティーの参加費を買うことは認められているのです。

MC伊藤由佳莉「政党や、ちゃんと政治登録がしてある団体であれば、大丈夫なんですね」

今野忍氏「隠れ……抜け穴ではないですが、法律への対策としてできたのが、政治資金のパーティーなんですね、もともと。」

今野氏は派閥を、「自民党の中にさらに小さい政党が集まっているようなものだと思えばよい」と説明します。

派閥は事務所を持ち運営しているので、事務所の地代家賃や人件費が必要です。また、派閥内の交流があったり、議員に「餅代」「氷代」などの手当も配ったりします。そのための資金を集めたいけれど、大々的な献金を受けられません。よって、代わりに、政治資金規正法にのっとったパーティーを開催することで運営費に当てるのです。

パーティー券は、どの派閥でもほぼ同額で、1枚2万円とのこと。「高級お寿司店とか行けちゃう」値段です。しかし、かつて岸田総理が開催したパーティーの利益率を計算した結果では、なんと9割にものぼるものだったそう。

今野忍氏「利益率高いですよこの商売は」

MC伊藤「チケットを買っているわけですから、お金は手元に届いているんですね」

パーティー券を購入した側に取材すると、券を買っておくことが「保険だ」「通行手形だ」と表現をされるとのこと。確かに、パーティーに行けば、なかなか会えない大物政治家に会うことができて、顔つなぎをすることができるというのが魅力です。

MC伊藤「パーティーっていうと、いろんな紫色の包み紙が飛びかうものを想像してしまいますが、実際の雰囲気は?」

宏池会担当が長かった今野氏によると、宏池会では年1回、5月くらいの国会会期中に政治資金パーティーを開くことが多いのだそう。会場は東京プリンスホテル、安倍派はニューオータニなど会場は「だいたい決まっている」とのこと。

ところで、パーティーはどのように行われているのでしょう。

派閥議員が全員ひな壇に上がり挨拶をする時間があり、高級ビュッフェや寿司職人がいたり、議員の地元の酒をふるまうコーナーがあったり。帰りにはグッズなど地元のお土産を配るといった場で、今野氏によれば、「2万円の価値があるかというと、まあない」という程度だそうです。

パーティー券は一般人でも買うことができますが、どちらかといえば、企業献金ができないとなっている法律の抜け穴として活用されていると今野氏は指摘します。

たとえば、外国人や、国から補助金を受けているような団体は、本来は献金ができません。しかし、パーティー券なら買えてしまいます。今野氏は、政治資金パーティーを「政治資金の錬金術」、政治資金規正法を「ほとんど意味ない法律」だと喝破します。

さらに、パーティーを開いたことやノルマとして販売したことが問題なのではありません。今回の問題は、次の2点だと今野氏は指摘します。

・法律に基づいて政治資金収支報告書に記載しなかったこと
・記載しなかったのは単なる事務的ミス(不記載)でなく、キックバックではないかという疑い

今回、安倍派の議員にパーティー券のキックバックがあったことが疑われています。

キックバックは、パーティー券のノルマから生まれています。

ノルマ分は記載をして、ノルマとしてこなした分を派閥の収支報告書に記載する。ノルマを超えた販売分は議員の実入りになり、「『(収支報告書に)記載しなくていい』と指導があった」という新人議員の証言があったとのこと。

今野氏「この図、なんかちょっと不自然というか、違和感感じません?」

安倍派のパーティー券の販売ノルマは、トップクラスで750枚。幹部クラスで500枚くらい、新人で100枚と言われます。

360人いる自民党の国会議員のうち、自民党議員の1/4を占める、最大派閥の安倍派議員がパーティーの収入が半額以下なのは少なすぎないか。この差額が裏金として疑われています。

今野氏は、「安倍派の中にも、明確な記載ミスはあると思う」としながら、若手議員から明確にノルマをキックバックに対する証言が出てしまっていることから、「安倍派99人いるうち、何人出てくるかわからない」と予言します。

安倍派5人衆は一掃?安倍派に支えられた岸田政権、そして自民党の行方は

松野・西村・萩生田・高木氏が更迭、世耕氏も交代、安倍派5人衆が一掃されるという報道が流れています(編集部注※収録日は12月11日でした)。ただ、これらの安倍派のトップ議員にも濃淡がある、と今野氏は問いかけます。

今野氏「松野・西村・萩生田・高木氏の4氏の中にひとりだけ違いがあるんですけどわかりますか?これわかったらただの政治オタクですね(笑)」

松野・西村・高木氏は安倍派事務の責任者である事務総長経験者です。

事務総長経験者であれば、派閥の会計や収支報告書に関することに事情を聞かざるを得ないでしょう。

MC伊藤「ほかの派閥、ほかの政党は、こういった問題はどうなんでしょう?」

告発を受けているという点では、森山派以外の5派閥、つまり、麻生派、茂木派、岸田派、二階派も同様ですが、二階派では、パーティー券の派閥への収入が書かれておらず、パーティー券から議員への支出する部分についてだけ派閥側も議員側も記載していた、という「不思議な問題」が発生しています。

収入部分の会計担当と、支出部分の会計担当が異なる人物だった、という説明があったとのことですが、

MC伊藤「会計責任者が入りと出で別れるというのは……?」

今野氏「そうそう、逆に大きな疑惑があるかもね、という人もいますよ、わかんないんですよ」

今回の問題で、安倍派が窮地に立っていることは間違いありません。さらに、「安倍派幹部を重用してきた岸田政権や、派閥の集合体である自民党自体もピンチであることは間違いない」と今野氏はまとめました。

リクルート事件と今回の共通点は?

今回の事件を、リクルート事件やロッキード事件になぞらえる声もあります。確かに、リクルート事件に匹敵するほどの緊急事態とされる今の状態ですが、「事件のレベルとしてはそれほどではない」と今野氏は冷静です。

今野氏「いわゆる不記載だから」

とはいえ、資金を透明化するための政治資金規正法に反して政治家が裏金を作っている状態は、金額の軽重はあれど、深刻な問題であるのは間違いありません。

ここで今野氏は、リクルート事件と今回の事件の、因縁めいた巡り合わせを示します。

今野氏「リクルート事件の時(1993年)の総理大臣、誰だか覚えてます?」

リクルート事件では、当時の竹下内閣は総辞職。自民党は下野して、55年体制の終焉となる、大きな節目となりました。

当時の総理大臣は宮沢喜一氏、なんと宏池会政権だったのです。

リクルート事件当時は、経世会の田中角栄氏の時代が終わってもなお、「田中曽根内閣」などと言われながら、自民党では田中派を要職におき、政権を運営していました。

当時の経世会がリクルート事件で終焉を迎えたように、今回、安倍派が解体の危機に追い込まれているその瞬間に、なぜかまた政権を担っている宏池会。

今野氏「あれから四半世紀を経て、また宏池会政権ができて、今度は令和のリクルート事件。宏池会の宿命なのか。なんでこう貧乏くじを引かされるのか。宏池会番のボクは声を大にしていいたい(苦笑)」

繰り返し起こる「政治とカネ」の問題ですが、今回も疑惑のある国会議員を更迭するだけなのでしょうか。今野氏は、次回の総裁選では派閥のありかたが問われるだろうと予測します。

もちろん、リクルート事件の時のように、派閥の論理や、政治資金規正法の抜本的な改正も争点になるでしょう。

次の総裁選では、派閥によらない総裁が誕生するかもしれません。注目です!

動画本編はこちら!

選挙ドットコムちゃんねるは毎週火曜日から日曜日の18時に公開!

ぜひ高評価とチャンネル登録をよろしくお願いいたします!

© 選挙ドットコム株式会社