津波に備え、庁舎を高台へ 南海トラフ地震対策で和歌山県すさみ町、26年春目指す

現在のすさみ町庁舎(和歌山県すさみ町周参見で)

 南海トラフの大地震による津波に備え、和歌山県すさみ町は2026年3月末までに、町庁舎を紀勢自動車道すさみインターチェンジ(IC)=すさみ町周参見=近くの高台(海抜約11メートル)に新築移転する計画を表明した。

 岩田勉町長が11月27日、町議会全員協議会で説明した。町によると、周参見保育所北側にある農地約5700平方メートルを購入し、木造平屋約2千平方メートルの庁舎を建設する計画。事業費は用地購入や建設費など計十数億円を見込んでおり、国が7割負担する緊急防災・減災事業債を利用する。建設の関連予算は新年度当初予算に盛り込む予定。

 鉄骨3階建ての現庁舎は、2000年3月の完成。耐用年数はまだあるが、海抜3.2メートルの土地にあり、東海・東南海・南海3連動地震で0.3~1メートル、南海トラフ巨大地震で6.8メートルの津波浸水が想定されている。

 大地震後、円滑に町を復旧、復興していくためには町庁舎の機能を守ることが重要であるとし、岩田町長は4月の町長選で、災害対策本部となる新施設建設の検討を公約に掲げていた。

 計画では、人口が集中する土地にある現在の庁舎には、移転後も住民に必要な窓口業務などの機能を残し、その他の空きスペースは企業、団体などに貸したいとしている。

 新庁舎について岩田町長は「器だけではなく中身を変えたい。県や民間企業の指導、協力の下、日本一テクノロジーを利用できる未来型の役場にしたい」と説明した。町民約3600人の防災だけでなく、健康、福祉、観光、教育なども最新のデジタル技術を使って管理し、「町民が安心して住める町にしたい」と語った。

 また、新庁舎はワンフロアで、約100人の職員が課を超えて情報交換するなど「庁舎の移転を職員の意識改革にもつなげたい」と話している。

 町は、巨大地震で想定される津波被害を考慮し、14年2月に公共施設の高台移転計画を作成。これまでにすさみIC近くの高台に、周参見保育所、すさみ消防署などが入る防災センター、給食センター、国保すさみ病院の4施設を移転している。

和歌山県すさみ町新庁舎建設予定地

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