防災×プログラミングで新教材 ゲーム感覚で楽しく学ぶ、和歌山県と和高専が共同開発

防災とプログラミングを合体させた新しい教材を使って行われた防災学習(14日、和歌山県那智勝浦町で)

 和歌山県那智勝浦町にある県土砂災害啓発センターと御坊市の和歌山工業高等専門学校(和高専)が、防災とプログラミングを合体させた新しい教材を共同開発した。この教材を活用した初の防災学習が14日にあり、地元の小学生が体験。楽しそうに学ぶ様子を見た関係者は手応えを感じていた。

 センターによると、これまでも土砂災害について学べるロールプレーイングゲームなど和高専と連携した取り組みを進めてきた。今回は小学校などでプログラミング教育が必修化されたことに着目し、防災教育と掛け合わせた新しい教材を共同開発することになったという。

 この教材では、教室内に36マスの地形や土砂災害を模したフィールドを設け、その中でロボット役の人をスタート地点からゴールの避難所まで安全に移動させるため、子どもたちはあらかじめ「前へ一歩進む」や「左を向く」という行動をパソコンを使ってプログラミング。その指示は、ロボット役の人のお面の中に設けられた電子機器に矢印として表示される仕組みになっている。

 紀伊半島大水害(2011年)で被災し、防災教育に力を入れている那智勝浦町市野々小学校でこの日、5.6年生10人が新教材を体験した。児童はまず最初に地滑りや崖崩れ、土石流といった土砂災害やその対策について学んだ上で、三つのグループに分かれて想定の異なるフィールドに挑戦。相談しながらロボットを行動させるプログラムを作り、無事にゴールできると拍手が起こった。5年生の中瀬伊織君(10)は「楽しかったし勉強にもなった。またやってみたい」と笑顔を見せた。

 センターの稲田健二所長(55)は「前もって順序立てて考えておくプログラミング的思考は防災教育と共通する点が多い。子どもたちが主体性を持って学んでくれたと思う」。和高専の辻原治教授(63)は「子どもたちが『楽しかった』『新しい学び方だった』と言ってくれてすごく良かったし、手応えを感じた。防災をいろんな角度から学ぶことができる良い教材になったと思うので、今後展開していけたら」と話していた。

 センターでは今回の防災学習の効果を検証した上で、他の小中学校にも広げていきたいという。

© 株式会社紀伊民報