【桜坂劇場・下地久美子の映画コレ見た?】ロスト・キング 500年越しの運命 希代の悪王に自ら重ね

 歴史は勝者によって作られる。社会に出て、いろいろ目にして、その言葉の意味がすごく身に染みる。歴史から消えた偉人や、改ざんされたかもしれない史実の存在を想像するだけで、感情が高ぶる。

 好奇心と想像力でいろいろ妄想しながら、例えば「古事記」を読み、編さんに関わった者たちの腹を探り、天津神に出雲国を譲った国津神の無念を思う。数千年の歴史浪漫の中にいると、最近白髪が増えた程度の悩みなら消えていく。

 500年間行方不明とされた英国王リチャード3世の遺骨を見つけ出した1人の主婦の実話を描いた本作。彼女が歴史にのめり込んだ理由は、希代の悪王として語り継がれたリチャード3世の不遇の人生に自らの人生を重ねたから。

 「悪い人じゃないはず」。その仮説の答えを探しながら、彼女自身も自己肯定感を取り戻していく。

(桜坂劇場・下地久美子)

◇同劇場で16日から

スクリーンガイド/ロスト・キング 500年越しの運命

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