ホラーが苦手すぎるゲーマーでも「8番出口」は遊べるのか?新たなジャンルとしての盛り上がりにも期待したい短編ウォーキングシミュレーターを紹介

どこか見覚えのある日本の地下通路、それでいて異質な雰囲気に配信前から注目され、配信後も個人ゲーマーに留まらず、あらゆるジャンルのストリーマーに幅広く遊ばれた「8番出口」。

そんな本作の魅力に引き寄せられ、筆者も遊びたい衝動に駆られましたが、ホラーゲームは大の苦手。興味はあるものの怖くて遊べないかもしれないという懸念からやや腰が引けていました。

配信直後から「怖くない」「ホラーではない」という声も見られ一瞬安心しかけましたが、これは辛い食べ物を好んで食べる人が言う「辛くないよ」と同じ理屈なのでは……? と疑念は深まるばかり。

今回のプレイレポートはそんな「遊んでみたいけどホラー要素が苦手だから遊べないかもしれない」と感じる方に特に見ていただきたい内容となっています。

なお、本稿では直接的な謎解きのネタバレは控えていますが、本作は遊び方がわからないくらいまっさらな状態からプレイするのも醍醐味となっているため、そのあたりの前提条件からまるっと楽しみたい方はぜひ先にゲームをプレイすることをオススメします。

■そもそも「8番出口」とはどんなゲームか

ゲーム開始時にいきなり“通路”に放り出されるプレイヤー、目の前からは見知らぬおじさんが歩いてくる。左右には扉やポスターが。そんな何の変哲もない地下通路。

「8番出口」がそもそもどんなゲームかと言うと、無限に続く地下通路に閉じ込められたプレイヤーが、その場から脱出するために周囲を探索しつつ“8番出口”を目指す、短編ウォーキングシミュレーターです。

では脱出ゲームなのかと言われると、隠されたアイテムを組み合わせたり、カギを探して扉を開けるといった要素はなく、プレイヤーが行うことは「進む」か「戻る」かという意思決定を下すだけ。また、使えるアクションは「歩く」「走る」「見回す」と非常にシンプル。

実際に「進む」か「戻る」をどこで判断していくのかというと、本作にはゲーム序盤に「異変を見逃さないこと」「異変を見つけたら、すぐに引き返すこと」「異変が見つからなかったら、引き返さないこと」「8番出口から外に出ること」と4つのルールが提示されるので、これに従うだけです。

スタート地点は「0番出口」。戻るか進むか、自分の回答が正しければ「1番出口」「2番出口」とステージが進んでいき、回答が間違っていると「0番出口」に戻されてしまう。最終的に「8番出口」に到達すればゲームクリアです。

異変を見つけられるか、見つけられないかで進むか戻るかを判断する必要があるのですが、その“異変”とは何なのかというのが本作のキモでもあります。

この認識はプレイヤーによってかなり差があるのですが、ポスターの文字が微妙に変化していたり、壁のタイルの大きさが変わっているといったようなイジワルなものはありません。一部わかりにくいものもありますが気づいてしまえば“一目瞭然”な異変となっています。

■結論「ホラー要素は“あります”」

怖がりつつも好奇心が抑えられず遊びはじめ、すべての異変を回収し、恐怖心も完全に無くなった今、振り返ってみるとたしかにホラー要素としてはかなりマイルドだと感じます。

発生する異変は怖いというよりかは“間違い探し”的な異変が多く、ホラー要素も数ある異変のうちのごく一部という印象でした。ホラーに耐性のある方はもちろん、“苦手なほうかな”くらいだと「全然ホラーじゃないだろう」と感じる方もいるかもしれません。

とはいえ、異変の中には急に大きな音を立てて驚かしたり、ワッと何かが飛び出してくるような、いわゆるジャンプスケア要素が含まれており、正直いってメチャクチャビビるものも用意されています。そういった演出はごくわずかであり、ゲーム性を理解したあとはそれほど恐怖ではなくなるのですが、それでも初見プレイ時は相当に怖かったです。泣きそうでした。

また、発生する異変の内容の順番は完全にランダムなため、異変に出会う順番でも印象が変わってきます。筆者はかなり序盤にホラー異変に遭遇してしまい、その後何に対してもビビりちらかしていました。

本作にホラー要素はたしかに存在するため、ホラーと呼ばれる要素が何ひとつダメな方はダメだと思います。しかし異型の化物が襲ってきたり、グロテスクな表現はないので、ヤバイものが出てきそうで出てこない、でもちょっとコワイ的な、“雰囲気ホラー”好きくらいまでなら遊べそうです。まあ、ヤバいものは出るには出るんですけども。

それと、好奇心は猫をも殺すと言いますか、危険を回避しようという意識が薄いとまんまとハマってしまいます。「異変があったら引き返すこと」。ゲーム内でも提示されたルールにしっかり従えばあんまり怖いことは起きません(起きることもある)。

■ホラー要素は苦手だけど、遊びたくなる魅力が「8番出口」にはある

筆者を含め、本作はホラー作品が苦手なプレイヤーにも広く愛される作品になったと感じています。

その理由の1つとしては、絶妙なゲームバランス調整にあるのかなと。本作のプレイ時間は、ストアの説明では15分から60分と記載されています。実際筆者も30分ほどで1周を終え、すべての要素を回収しても1時間弱のプレイ時間に収まりました。

1周のプレイで発生する異変の傾向として、失敗するまで同じ異変は表れなかったり、未発生の異変が起きやすくなっているのか、すぐに異変の全回収ができたりと、細かい調整の工夫も見られました。

また、自分の選択の正誤は進んだ道の先にある案内サインで確認できるのですが、これを確認するための“角を曲がる”行為による緊張感が、ゲーム体験としてはかなり新鮮でした。例えるなら、“テレビ番組の格付け企画で、浜ちゃんが正解の部屋に入る瞬間”に近いです。多分。

それゆえに「0番出口」だったときのショックは大きく、「壁のタイルの大きさが微妙に変化しているのでは」「歩いてくるおじさんの毛量が微妙に変わってるのでは」といったように、どんどん疑心暗鬼に陥っていきます。これも本作の醍醐味です。

ちなみに、異変があったのに進んでしまったとき、異変があった通路に戻ることができますので、そこでじっくり何が異変だったのかを探すことができます。これを知っているだけで難易度はかなり下がるので、覚えておくといいかもしれません。

異変があることがわかっている状態で探すのと、わかっていない状態で探すのとでは、大きな違いがありますからね。そういう性質上、「異変がない」ときのほうが難易度があきらかに高くなります。

ほかにも、ゲーム開始時から多くの時を共に過ごす“おじさん”も大きな魅力の1つです。彼は一体何者なのでしょうか。プレイヤーと同じようにこの通路に迷い込んでいた人間なのか、「8番出口」というダンジョンの一部なのか……。

細かい話ですが、ビジュアル面も忘れてはいけない魅力の1つ。ゲーム内のあらゆる箇所の質感はもちろんのこと、ポスターに映り込むおじさんの影などもリアルで、まるで実写のような空間についつい入り浸ってしまいます。VR空間でも見てみたいですね。

■「8番出口」系のように新たなジャンルとして流行るかもしれない

「8番出口」は、謎解きやウォーキングシミュレーターというジャンルとして見れば、決して珍しい作品ではありません。

しかしこれだけのプレイヤーを魅了し、話題を呼んだ背景には、ランダム要素や絶妙なバランス調整により、プレイヤーごとにドラマが生まれるという、正解が1つしかないパズルゲームにおいては珍しいゲームデザインになっていたからではないでしょうか。

今後はさまざまなフォロワー作品が産み出された「Vampire Survivors」や、記憶に新しい「スイカゲーム」のように、本作も「8番出口」系として、長く愛される作品になるかもしれません。

筆者は今でも1日に1回は8番出口を目指して最初からプレイしたくなるほど、同作の虜になっており、まだまだこれからの展開にも注目したいところです。しかしホラー要素は苦手なのでどうかお手柔らかに、何卒、何卒……。

「8番出口」Steamストアページ
https://store.steampowered.com/app/2653790/_/


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