「注目ポイントは、ダニエル・デッドワイラーの演技力」と中瀬ゆかりが太鼓判、黒人差別をありのままに描いた映画「ティル」

TOKYO MX(地上波9ch)の情報バラエティ生番組「5時に夢中!」(毎週月~金曜 17:00~)。11月30日(木)放送の「中瀬親方のエンタメ番付」のコーナーでは、新潮社出版部部長の中瀬ゆかりさんがおすすめのエンタメ作品を番付形式で紹介しました。

【"中瀬親方”による11月のおすすめ作品】

◆関脇
対談集「エンドロール! 末期がんになった叶井俊太郎と、文化人15人の"余命半年”論」
著 叶井俊太郎(サイゾー)

現在56歳の映画宣伝プロデューサー・叶井俊太郎は、昨年6月に末期のすい臓がんと診断され、余命半年と宣告されたことを今年10月に公表。余生は治療ではなく、仕事に投じることを選択。本作は、そんな叶井による対談集で、対談相⼿は、映画プロデューサー・鈴⽊敏夫、映画監督・河崎実、作家・中村うさぎといった各界の巨匠や文化人15人との対談を収めた前代未聞の作品。

中瀬親方のコメント「本作は、叶井さん独特の処世術や90年代サブカル映画界隈のはちゃめちゃエピソードが爆笑と共に語り尽くされている内容になっています。もちろん1人の映画人としての業界冒険譚というのを存分に味わえる作品になっています。

余命宣告された叶井さん自身がこれを企画して編集者として動いた(ことで実現した)んですけど、対談では叶井さんが相手に『もし余命半年と宣告されたらどうする?』と質問する場面が必ずあって15人皆さんの回答がそれぞれ違うんです。

本作は、末期がん患者を相手に、自らの余命に思いを巡らせるという本当に厳かでスリリングな展開も注目の1冊になっています。そして、私と岩井志麻子さんは、(叶井さんとの)鼎談で参加させていただいています。20年以上の付き合いになる叶井さんといろいろと語っていて、私たちの死生観も話しています。内容が濃く作られていますので、ぜひ手に取ってみてください」

◆大関
文芸作品「ともぐい」
著 河﨑秋子(新潮社)

舞台は、明治後期の北海道。たった1人で山中に暮らし、山の王者である"熊”に挑み続ける男・熊爪の物語。「命とは何なのか?」「生きるとは何なのか?」根源的な問いを読み手に突きつけながら、人間、そして獣たちの業と悲哀が心を揺さぶる、河﨑秋子による渾身の最新作。

中瀬親方のコメント「山や獣の骨太な息づかいとそれに揺らぐ人間の繊細な姿を表現した見事な作品です。めちゃくちゃ怖いし、めちゃくちゃ面白いし、最高にエキサイトしながら読みました。

熊と対峙した死闘の場面がすごくリアルに圧倒的な描写で、ページをめくる手が止められないほどの勢いが感じられて、河﨑さんはこれまでもいろいろと動物のことを書いてきましたけど、自然などを書かせると超一流の作家さんです。

北海道の厳しい冬や獣たちの鳴き声、においまで伝わってくるような文章で圧倒されます。目を背けたくなるほどの描写が続くのに、本当にやめられない止まらないの連続で、全国各地で熊との共存や熊問題などいろいろと問われている今、生きるということは何かと考えさせられながらも、ある意味、獣以上に人間というものについて、人間同士というものの難しさ、人間が生きるということについての残酷さや強さなどいろいろなことを考えさせられる、絶対に読み逃してはいけない震えるレベルの熊文学の誕生です」

◆横綱
映画「ティル」
12月15日(金)より全国ロードショー

物語の舞台は、1955年のアメリカ・イリノイ州シカゴ。黒人女性のメイミー(ダニエル・デッドワイラー)は、ひとり息子で14歳のエメット(ジェイリン・ホール)と平穏な日々を送っていたが、悲劇が起こってしまう。ある日、エメットが飲食雑貨店で白人女性に向けて口笛を吹いたことが白人たちの怒りを買い、白人集団に拉致され、壮絶なリンチを受けた末に殺されてしまう。

愛する息子の変わり果てた姿と対面したメイミーは、事件の陰惨さを世に知らしめるべく大胆な行動へ。彼女の姿は多くの黑人たちに勇気を与え、社会を動かす原動力に。自由を求め、世界を変えた1人の母親の実話をもとにした愛と勇気の物語。

中瀬親方のコメント「注目ポイントは、母親メイミー役のダニエル・デッドワイラーの演技力です。

冒頭で、息子の死に直面して絶望に引きずり込まれるシーンがあるんですけど、圧巻の演技で、(死亡した息子と面したときの)泣き声がすごく印象的でした。

絶望からある種の強さを持って立ち上がっていくんですけど、母親として、女性として活動を始めたメイミーには驚くほどの力強さを感じましたし、一人息子を惨殺された母親という難しい役柄を見事に演じ切っていました。その力強さと繊細さの演技の幅に心を打たれましたし、しかもこれは実話なので『(過去に)こんなことがあったのか……』というショッキングな映像もかなり続くんですけど、(息子の死に)打ちのめされた母親の愛と偉大さを改めて感じられる演技となっています。

当時の黒人差別をありのままに描いている作品なので目を背けたくなるシーンもたくさんあるんですけど、いまだ残り続ける人種差別の遺恨を、改めて認識していただける作品となっています。素晴らしい傑作でした!」

中瀬さんが推す3作品、ぜひチェックしてみてください! 毎月最終木曜日に発表するこのコーナー、次回12月のエンタメ番付は、12月21日(木)にお届けする予定です。お楽しみに。

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<番組概要>
番組名:5時に夢中!
放送日時:毎週月~金 17:00~18:00 <TOKYO MX1>
「エムキャス」でも同時配信(地上波放送エリアを除く)
メインMC:垣花正(月~金)
アシスタントMC:大橋未歩(月~木)、ミッツ・マングローブ(金)
番組Webサイト: https://s.mxtv.jp/goji/
番組X(旧Twitter): @gojimu
番組Facebook:https://www.facebook.com/5jinimuchuu

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