<ライブレポート>YUTORI-SEDAI、初ワンマンで伝えた想い「“あなた”のおかげで救われた」

“西東京発・3ピースバンド”YUTORI-SEDAIが12月7日、東京・新代田FEVERにてワンマンライブ【one man live「yume」-はじめてのワンマン-】の追加公演を開催した。

YUTORI-SEDAIは金原遼希(きんぱらはるき)(V/G)、上原しゅん(うえはらしゅん)(Ba)、櫻井直道(さくらいなおみち)(Dr)によるギターロックバンド。今年2月にリリースされた「すき。」がTikTokなどのSNSで拡散され、大きな注目を集めた。その後も「ぎゅっとして、」「足りないくらいがちょうどいい」を発表し、切なくも愛らしいラブソングによって知名度を上げ続けている。10月22日に東京・下北沢SHELTERで行われた初ワンマンが即日ソールドアウトとなり、急遽開催が決定した今回のワンマン追加公演(2公演ともチケットはソールドアウト)で彼らは、バンドとしての個性、そして、この先の大きな可能性を力強く示してみせた。

観客の中心は10代後半~20代前半。今年バイラルヒットをしたYUTORI-SEDAIのワンマン会場は今どきのお洒落な若者たちで溢れていた。

19時過ぎ、ライブがスタート。弦楽器とピアノによるクラシカルなSEとともにメンバーが登場し、金原が弾き語りで〈最近、同じ事繰り返すだけの毎日です〉と歌い始める。1曲目は「23×3」。「会いたかったぜ! 楽しむ準備できてますか? 西東京発・3ピースバンド、YUTORI-SEDAIです!」と叫び、疾走感のあるバンドサウンドへと移行し、青春の風景と未来への希望を描き出す。さらに爽やかなメロディと切な過ぎる恋愛模様が響き合う「サマートリガー」、そして観客のハンドクラップから最新のヒット曲「ぎゅっとして、」へとつなげ、心地よい一体感を生み出してみせた。

「初ワンマンを10月にやって、追加公演もソールドアウト。平日にこれだけたくさんの人が来てくれて、めちゃくちゃ嬉しいです!」(金原)という挨拶の後は、生々しい感情を反映したラブソングが披露された。「恋人にフられたときに作った曲。あのとき言えなかった言葉を伝えるために作った曲をやります」という言葉に導かれたのは「もう一度好きになって」。別れた恋人に対する思いを切々と歌い上げ、会場全体を抒情的な雰囲気に染め上げる。さらに彼女がいる男性との関係をテーマにした「カラダノカンケイ」、そして、「12月24日に僕は好きな人に告白をしたことがあります……」(金原)というエピソードからはじまった「クリスマスの夜に」。じっくりと歌に聴き入るオーディエンスの姿も印象的。リアルな体験に基づきながら、聴いていると誰もが共感できる映像やストーリーがありありと浮かんでくる――楽曲へと導くソングライティングこそが、このバンドの核なのだと改めて実感させられるシーンだった。

MCを通し、メンバー自身の思いをしっかり伝えようとする姿も心に残った。

「初めてのワンマンにあたって、これまでの活動を振り返り、辛いことばかりを思い出してしまった。メンバーが抜けて活動すらできない時期もあったし、上原が加入した後もなかなか動員が増えなかった。でも、“あなた”が曲を聴いてくれて、ライブに来てくれることで救われてきた――」

「あなたのために音楽をやってるんだなって、心から思います。YUTORI-SEDAIを愛してくれとは言わない。でも、これだけはわかってほしい。本当に本当に心から愛してます。これからはあなたの希望になれるように、この曲を」(金原)という言葉に導かれたのは、「yume」。サビの〈信じていたかった「僕」という意味を〉が響き渡る瞬間はこの日のライブの最初のハイライトだったと思う。さらに鋭いバンドグルーヴが炸裂した「憧れ」、音楽を続ける決意、リスナーへの強い思いを込めた「君と音楽」(金原、上原、櫻井の体制になって初めて作った曲)を披露。ポップスの要素も強いYUTOR-SEDAIだが、3人の音をぶつけ合うことで生まれるアンサンブルは驚くほどに刺激的だ。ギターロックバンドとしての魅力をダイレクトに感じられたのも、この日のライブの大きな収穫だったと思う。

鋭利にしてキャッチーなギターリフを軸にした「足りないくらいがちょうどいい」からライブは後半へ。演奏が進むにつれて観客とバンドの感情の距離はどんどん近づいていった。今年バイラルヒットした楽曲「すき。」では〈好き 好き〉の大合唱が発生。

本編ラストは「アイラブユーベイビー」。しなやかなバンドグルーヴとともに〈出会えただけでこんなに/世界が輝いて見えるなんて〉というラインが広がり、ライブはクライマックスを迎えた。

アンコールでは、上原、櫻井もファンやメンバーに対する感謝、これからの活動への決意を丁寧に話し、会場から大きな拍手が送られた。「ライブが終わって、日常に戻ったときに、どれだけあなたのことを支えられるか?にこだわっていきたいと思ってます」(金原)という思いとともに最後に演奏されたのは「幸せにしたいんだ」。“君を守りたい”という真摯な願いを刻んだ楽曲を一人一人に手渡し、ライブは終了した。

2024年3月23日に渋谷WWWでワンマンライブ【2nd one man live 夢のつづき@渋谷WWW】の開催も決定。2024年はYUTORI-SEDASIにとって、大きなターニングポイントになりそうだ。

Text:森朋之
Photo:堤 瑛史

◎公演情報
【2nd one man live 夢のつづき@渋谷WWW】
2024年3月23日(土) 東京・渋谷WWW

© 株式会社阪神コンテンツリンク