“魔改造”に特化した尖りに尖ったロボットSTG「カスタムメックウォーズ」プレイレポート

ディースリー・パブリッシャーより発売中のPS5/PC(Steam)用ソフト「CUSTOM MECH WARS -カスタムメックウォーズ-」のプレイレポートをお届けする。

■自由度が高すぎる“魔改造”で時間が溶ける

2023年12月14日に発売を迎えた「CUSTOM MECH WARS -カスタムメックウォーズ-」。さまざまなユニークなパーツを自在に組み合わせて自分だけのロボットを作成できる“魔改造”が特徴のロボットSTGだ。

本作の舞台となるのは、巨大彗星の接近にともない、人類の多くが地下へと逃れた近未来の地球。現在の地上は自立型のAIを搭載した巨大ロボット・Gメックによって管理・維持がされている。プレイヤーはそんなGメックのメンテナンスを担う警備会社である“47警備保障”の新人スタッフであり、有人操縦型のGメックのパイロットとして、突如として暴走を始めた無人Gメックとの戦いに巻き込まれていくことになる。

最初に挑戦するミッションと難易度を選択して、ミッション内で敵がドロップするパーツを集めてGメックを強化していき、より難しいミッションに挑んでいく……というのが主なゲームの流れ。

ミッションは何度でもプレイ可能で、難易度を上げるほどよりいいパーツがドロップし、さらに強力なメカを作れるようになる。このあたりのサイクルはディースリー・パブリッシャーの代表作でもある「地球防衛軍」シリーズをイメージしてもらえると分かりやすいだろう。

そして本作の最大の特徴となっているのが、自由度の高いメカのカスタマイズである“魔改造”。プレイヤーが搭乗することになるGメックは、脚・胸・頭・右腕・左腕の5箇所に装備するキーパーツによって構成されており、さまざまな種類のパーツが用意されている。

機体の核にあたるのは脚のキーパーツで、脚部のパーツの性能によって重量上限が決まり、戦闘中に脚部が破壊された時点でその機体は行動不能になる。脚部には2足や逆関節、車両、ホバーなど様々なタイプがあり、脚部のタイプによって移動の操作感も変わってくる。

この脚部をベースとして胸部、腕、頭といった部位のパーツをつけていくことになるが、ぶっ飛んでいるのは脚部が1つあればその時点で出撃ができるようになる点。胸部はブースト能力、頭部はカメラ能力に索敵範囲、両腕は手持ちの武器を装備できるなど性能的なメリットは大きいが、必ずしも装備させる必要はなく、脚に武装を直につけただけのロボットで出撃することも可能だ。

手や頭を胴体とくっつけておく必要もなく、空中に浮いていても問題なく動作する。

キーパーツとは別に「攻撃パーツ」「アクセサリー」というカテゴリも存在し、これらはキーパ―ツ側に存在する「ジョイント」に装備することで使用できるようになる。とくに「攻撃」パーツは、本作のメカの攻撃力の大半を担うといっても過言ではないパーツで、各カテゴリごとに最大10個まで搭載できる。

攻撃パーツには、「主兵装」「投擲・ロックオン」の2つのカテゴリが存在する。

本作が特にすごいのが、すでに装備済みのジョイントにもさらにパーツをつけられること。同じジョイントに複数のパーツを設置すると、当然武器が武器の中にめり込んで表示されたりするが、本作では無視することも可能。ジョイント部分にさらにキーパーツをつけることもできるので、「腕から頭と胴体が生えている」「腕が8本ある」ようなぶっ飛んだメカも作ることができる。

一方のアクセサリーは、主にロボットの外見に影響するパーツで、機体にはりつけるデカールから装甲、角、ボードなどさまざまなバリエーションがあり、大きさや取り付け位置、角度も自在に変更できる。性能を向上させるものや、一部には発光などのギミック機能をもつパーツも存在している。

カッコいい系のロボットを作りたい時にオススメなのがスタビライザー系のパーツ。サイズを大きくすると大きな翼に近い外見にもできる。

最大数や制限はあるものの、ほとんどのパーツを自由な位置に配置することができるようになっており、合計が総重量を下回ってさえいれば、あとはほぼどんな組み合わせでも許されるのが本作のカスタマイズの面白さ。ふざけた見た目にするもよし、カッコよさだけを追求するのもよし、純粋な性能面を追求するのもよしで、プレイヤーのスタイルにあった楽しみが見いだせるようになっている。

機体のカラーリングやパーツごとの質感・汚れも設定可能。見た目のカスタマイズの自由度は抜群に高い。
ユニークなパーツが多数実装されており、はちゃめちゃな組み合わせのロボットを作れるのも本作の魅力だ。

■アクションは体験版から改善され大幅に軽快に

ミッション内の操作は、3Dフィールド内でカスタマイズしたGメックを実際に操作できるアクションパートとなる。

特徴的なのが、ロボットゲームの中でも極めて操作がシンプルなこと。ゲームパッドでプレイする場合、機体の移動と視点移動に使うスティックを除けば、ダッシュボタン。ジャンプボタン、主攻撃ボタン、投擲&ロックオン攻撃ボタンの4つが基本になる。近接攻撃など一部の特殊な武器や攻撃は例外となるが、ほぼ4種のボタンだけで主な操作を一通り行えるようになっている。

例えば、主攻撃ボタンを押すと、カスタマイズで機体に搭載した「主兵装」に相当する武器が一斉に発射される。投擲・ロックオン武器の場合も同様で、ミサイルだろうがグレネードだろうが機雷であろうがすべての武器が一気に発射されることになる。

ここまで操作を簡略化したロボットゲームは近年ではほとんど記憶になく、好みが別れる部分なのは間違いない。ただ、個人的にはワンボタンであらゆる武器が掃射されるのは新鮮で、凄まじい数のミサイルが一斉に発射されていく様子はなかなか爽快感も感じられた(まだ使いたくない武器の弾も無駄に消費してしまうというネックはあるが)。どんな状況にも対応できるように、いろいろな射程の武器を混ぜておくか、無駄がないように射程や弾数の近い武器同士で統一するかなど、カスタマイズする際に意識するべき点でもある。

また、筆者は2023年の10月頃から配信されている本作の体験版もプレイしていたのだが、体験版からもっとも大きな違いとして感じられたのがダッシュ・ジャンプ周りの操作感だ。

ダッシュ・ジャンプボタンは、そのままボタンを長押しすることで地上や空中をブーストで移動し続けられるのだが、とくに体験版では、ジャンプで飛べる高さが低く、空中を移動する気持ちよさをあまり感じられなかった。

製品版ではブーストの挙動は改善されており、初期のパーツでもかなり自在に空中を動きまわれるように。それに伴い全体的なスピード感や爽快感も増しており、気持ちよくロボットを動かせるようになっている。体験版でこのあたりが不満だった人は、かなり印象が変わるはずだ。

また、ミッション中は、いつでも機体から降り、パイロット状態で行動することもできる。パイロット状態は、移動速度が結構早い上に小回りが効き、入り組んだ場所のアイテム回収などに使えたり、フィールド内に存在するデコイやタレットといったギミックを起動する役割もある。攻撃も可能だが耐久値はかなり低く、3発攻撃を受けるとミッション失敗となってしまうので直接戦闘は避けたい。

メカの脚部が破壊された場合は、機体が即座に爆発し、自動的にパイロット状態となって脱出する。その際に重宝するのが、パイロット状態でのみ使用できる要請システムで、代わりとなる機体を無線で呼び出して戦闘を継続すること可能。戦闘中には武器の弾薬がなくなってしまった際にも、新しい機体を要請するのが効果的だ。

要請を行うとそれまで乗っていた機体は回収される。しばらく経てば、壊されたパーツなどはそのままだが、一度乗った機体を弾薬が回復した状態で再度要請することも可能だ。

■荒削りな点は多いが相応の魅力もある意欲作

ここまで本作の魅力となる部分を紹介してきたが、一方で荒削りな部分もかなり見受けられたのも正直なところだ。

個人的にもっとも気になったのは、近接武器の使い勝手が悪いこともあり、どんなカスタマイズをした機体でもブーストで飛び回りながら射撃で削る一辺倒の戦闘スタイルになりがちな点。各ミッションの内容も似通っているため、ある程度慣れてくるとゲーム的な変化に乏しくなってくる(ジャンルがSTGである以上、近接攻撃が使いづらいのは止む得ない部分ではあるが)。

加えて、本作にはロックオン機能がないため、「地球防衛軍」のようにエイムをプレイヤーがあわせて攻撃する必要があるが、体験版よりもスピード感のある動きができるようになった分、細かい狙いをつけるのが少し難しい。弾が一斉に発射されるのでそこまで致命的ではないのだが、サイズが小さい敵に対して、近くにいるのに攻撃が当たらないという場面も何度か見受けられた。

UIも気になる点は少なくない。ミッション中に会話イベントが発生すると、画面の下にウインドウが表示されるが、ウインドウ自体のサイズは操作機体が隠れるほど大きいにも関わらず、表示される文字が非常に小さく読みにくい。テキストの表示領域はローカライズにも関わるとはいえ、ここまでスペースが空いているのはプレイしていてひっかかった点だった。

オプションでウインドウの大きさを少し小さくすることもできるのだが、印象はそれほど変わらない。

カスタマイズ画面では、任意の場所のジョイントを選ぶのに1つ1つ順送りにする必要があったり、設定したカスタマイズを保存するための「完了」ボタンが目立ちにくい位置に配置されているなど、直感的に操作ができない場面がいくつかあった。カスタマイズは本作の売りでもあるだけに、ここはもったいないと感じられた点だ。

ただ、そうした“惜しい点”を差し引いても、筆者は本作を楽しんでプレイできたことも間違いない。

ミッションをクリアするためには、装備できる限りは武器をひたすら盛りまくるのがてっとり早いのだが、当然ながら積む武器の量が増えるにつれ見た目も破綻しやすくなる。

筆者はロボットの外見にはかなり拘りがあるタイプなので、理想のデザインに近づけるため「これ以上は武器を積みたくない……!」と葛藤しながら、大量の武器がすんなりと機体のデザインに馴染むように、ジョイントの配置やアクセサリーのパーツのサイズをいじって工夫する工程はかなり楽しめた。

アクションはかなりシンプルではあるが、それ故に誰でも動かせるという良さもあり、「アクションゲームは苦手だけど、自分だけのロボットを作って動かしたい」というプレイヤーにとってはちょうどいいと感じられるかもしれない。

要請で1ミッション中に複数の機体を乗り分ける関係上、それぞれの機体ごとに別々にパーツを集める必要があり、装備できるパーツ数も多いので、集めたパーツが無駄になりにくく、繰り返しプレイしたくなるハック&スラッシュ的なゲームサイクルもしっかり確立されている。

パーツにはそれぞれLV・サイズ・レア度が設定されており、同じパーツを集めるほどLVが強化されていく。

ただ、それでも本作は、おそらく万人に受け入れられるタイプのタイトルではないだろう。「自分なりのロボットをカスタマイズで作る楽しさ」の一点がすべての面白さの中心にあり、この点を楽しめるかどうかで評価はがらりと変わってくるからだ。

一方、その一点においては、他のタイトルでは味わえない独自の魅力をもっており、かなり挑戦的で尖った作品であると言える。

戦闘中でも、ゲームを一時に停止して自分が動かすロボットの写真がとれるカメラモードが存在しているのも嬉しい。

荒削りながらも唯一無二の面白さも兼ね備えた本作。とくにロボットゲームが好き“魔改造”に興味をもっているのなら、是非ともプレイしてみてはいかがだろうか。

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