プレーを見せずとも!名刺交換でアピールした奈良満了MF片岡爽のトライアウト

日本プロサッカー選手会(JPFA)が主催する「JPFAトライアウト」が今月12、13日に開催された。今季契約満了を言い渡されたJリーガー(元Jリーガーも含め)たちがピッチ上でスカウトたちにアピールした。

この日スーツ姿でトライアウトに参加した選手がいた。奈良クラブの契約が満了したMF片岡爽は左足のふくらはぎを負傷したため、プレーを見せられる状況ではなかったが、名刺を片手に関係者にあいさつしてアピールした。

今季はリーグ戦27試合に出場するも、先発は7試合に留まった。それでも3アシストを記録してチームに貢献してきた中盤、右サイドバックもこなせるユーティリティプレーヤ―は、慣れない名刺交換も軽快にこなした。

11月に左足のふくらはぎを肉離れを負った。片岡は「もう3週ぐらいなんでちょうど治るぐらいなんですけど、状態的にあまり良くなくて…」という状態で契約満了を言い渡されて途方に暮れていた。

「まずはトライアウトに出る前提で準備を進めていたんですけど、直前まで本当にギリギリだったという話をドクターとトレーナーさんとしていました。最後のほうまでリスクをかけながら、トライアウトなんで強度も高いじゃないですか。その中で自分のアピールもしないといけない。いい状態を作って、それでこの日になれるかどうかっていうのをトライしてたんですけど…。単純にプレーできるんではなくていい状態でプレーするため、そういう状態を作ろうとして取り組んだんですけど、やっぱり強度を上げていくとどうしてもリバウンドであったり、本当の意味での100%のスプリントとかジャンプができないとなって…。それを3、4日前ぐらいに『この状態でプレーするのは厳しい』という決断をして、トライアウトには出ないという判断にまずなりました」と振り返った。

ただ下を向くわけにはいかない。自問自答した上で自身が取るべき行動を導き出した。

「その上で、『いま自分にできることってなんだろう』と考えたときに、もちろん去年の山田(尚幸、J3ヴァンラーレ八戸)選手の前例もあったことがすごくありがたいことでした。自分にいまできることをやろうと思って名刺を配って、少しでも自分の名前とかを知ってもらおうと思いつきました」と名刺交換の経緯を明かした。

プロの舞台で戦いたい

片岡はQolyに以前掲載されたインタビュー記事「【インタビュー】大ケガからの契約満了、名刺を配ったトライアウト、J3八戸MF山田尚幸が逆境を乗り越えて成し遂げた偉業とは」を読んで参考にしたという。

「記事を読ませてもらってました。そういう話を聞いてましたし、それで八戸に入られたと聞いてました。なのでも僕もやらない選択肢がないと思いました。正直格好いいことではないかもしれないんですけど、それでもサッカーが好きで、サッカーを続けたい…。応援してくれる人もたくさんいた。奈良クラブをアウトになったときも、たくさんの人が温かい言葉を掛けてくださりました。僕は思いつく限りのことは全部やろうと思ってここに来ました」

2021年に開催された同トライアウトに右膝前十字靱帯(じんたい)断裂の大ケガを負った山田が関係者に名刺交換する形でアピールして八戸入団をつかみ取った。この前例に倣って自身も名刺交換でアピールした。

名刺には連絡先以外にプレー動画のQRコードもプリントされており、できることはすべてやろうと考えて動いた。その中で関係者からは温かい声をかけられたという。

「中にはもちろん自分のことを知ってくださっている方や筑波大の関係の方とかもいらっしゃった。すごく温かく…『いや、すごいね』と言ってくださる方もたくさんいました。ネガティブな反応なんて一切なかったです。ポジティブに『わざわざありがとうございます』とか『すごい、素晴らしいね』と言ってくださる方もたくさんいらっしゃいました。それとプレーはまた全然別だとは思うんですけど、ピッチ内で見せられない分、そういういい印象を少しでも与えられたらなと思いました」と振り返った。

契約満了後はヴィッセル神戸アカデミー時代の恩師後藤雄二アカデミーダイレクターからもエールを受けるなど、筑波大で主将を務めた経験がある片岡は人柄の良さや人望がある人物と定評がある。

「できるだけそれはプロでやりたいなと思っています。少しでも上のカテゴリーで、Jリーグでやりたいと思ってます」といるべき場所を目指して奮闘した。

声援を送るファンに向けて片岡は「僕はどんな状況でも今自分に出来ることを常に100%でやって、そのピッチで活躍する姿を、輝く姿をみなさんに届けられるように頑張っていきたいと思いますので、是非次のチームでも応援していただけたら嬉しいです」と意気込んだ。ひた向きに名刺を交換する姿は関係者に届くはず。片岡は吉報を待ち続けている。

© 株式会社ファッションニュース通信社