「メンズコスメ」なぜ拡大? 近年は大谷売れも…モデル起用に変化

コロナ禍でのリモートワークやオンライン会議から、モニター上で自分の顔と向き合う時間が急増したことで高まった「メンズコスメ需要」。その後も市場は拡大しており、最近ではメイク姿のサラリーマンの姿も決して珍しくはなくなった。

11月29日にリニューアルオープンした「阪急メンズ大阪」の地下1階「メンズビューティー」

これまではスキンケアや眉毛など、さりげないメイクによるエチケットが主流だったが、今では純粋にメイクアップを楽しむ男性が増えているという。

■ 涙袋まで!? 男性メイクもアップデート

大手美容サイト「@cosme(アットコスメ)」のビューティーアドバイザー・村上宏明さんによると、「これまでは、土台を整えるという点でベースメイクから購入される方が多かったですが、最近はアイメイクを楽しんだり、リップやハイライトを付けたり、涙袋を作っていたり、アップデートしているという印象があります」という。

この時期に限定販売されるクリスマスコフレに関しても、男性客から「買えなくて残念だった」という声が挙がっていたと村上さん。またアイシャドウは、肌馴染みの良い暗め・茶系のベーシックな色味はもちろん、カラーを使ってかわいく魅せたり、雰囲気を変えるために購入する客も多いという。

2023年9月には、JR大阪駅直結の商業施設「ルクア イーレ」(大阪市北区)に西日本最大規模の店舗「アットコスメオーサカ」をオープン。売場には男性客も見受けられ、この光景に同社のリサーチプランナー・原田彩子さんは、化粧品ブランドの男性モデル起用を1要素として挙げる。

「近年では、北村匠海さん(VT:ブイティー)や坂口健太郎さん(魔女工場)と、俳優をモデル起用するケースも増えてきています。アイドルよりも俳優がモデルとして起用された方が、生活者も『自分もこの商品のターゲットである』という意識を持ちやすいのではないかと分析する。

大谷翔平の広告起用したことで「大谷売れ」している、コスメデコルテ リポソーム アドバンスト リペアセラム(50ml・1万2100円)。こういった高額商品「諭吉コスメ」も売れているそうで、投資すべきものはお金をかけるといった傾向にあるという

■ 2008年に誕生、阪急メンズビューティーにも変化

リニューアル後の「阪急メンズ大阪」のメンズビューティーには、約500種の香水がずらり

「阪急メンズ大阪」(大阪市北区)のビューティーフロアは、2008年の誕生以降、着々と売場を増築中。仕切りのないさまざまなブランドを混在させた売場で、選びやすさを意識しているという。同館ビューティー担当の前田浩介さんは、「男性はうんちくを知った上で比較して購入するというケースが非常に多いので、環境作りが大事なんです」と話す。

同フロアでは、スキンケア商品とメイクアップ商品の比率は9:1とのことだが、「その1の部分が伸びてきているというのが現状。弊社の新入社員もメイクをしている男性がおりますし、特に今の20代前後の方はメイクが当たり前になっているなと感じます。ここの担当をして5年になりますが、当時はコスメブランド「THREE」がジェンダーレスなメイクプロダクト「FIVEISM × THREE」を発表しただけで結構な話題になりましたし・・・時代は変わりますね」。

11月末のリニューアルではフレグランスを強化し、「ロエベ」「ジョー マローン ロンドン」など、世界的なフレグランスメゾンを中心に40ブランド・約500種類を揃える。最近はトレンドはなく、個性がバラバラになっている印象らしく、これまでは柑橘系、石鹸のさわやかな香りが売れ筋だったりところ、女性的だと言われてきたローズ系やフローラル系も売れてきているという。

ラグジュアリーブランド「メゾン マルジェラ」のミニボトル香水を取り扱う「アットコスメトーキョー」でも男性客の需要は高いといい、村上さんは「甘い香りのフレグランスを購入される男性のお客様もいらっしゃる」とコメント。「アットコスメオーサカ」では、店舗入口部分にフレグランスコーナーを設置するなど、力を入れている。

肌を整えるといった「身だしなみ」から、自身の気分を上げるメイクへ・・・。メンズコスメ市場は年々自由度を増している。

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