【矢野顕子さんライブ詳報】奈良美智さん個展の美術館で「津軽海峡・冬景色」も 青森愛あふれるステージ

奈良さんの作品が並ぶ展示室で開かれた矢野さんのギャラリーライブ

 青森県弘前市出身の現代美術家・奈良美智さんの個展「奈良美智:The Beginning Place ここから」が開かれている青森市の県立美術館で7日夜、同市出身のシンガー・ソングライター矢野顕子さんがギャラリーライブを行った。矢野さんは「久しぶりに来たおん、青森の。やっぱりいっきゃの」などと津軽弁を交えながら、代表曲の「ラーメンたべたい」「ひとつだけ」など計10曲を披露。終演後には、幸運にもチケットが当選した約70人の観客からスタンディングオベーションを浴びた。

 ギャラリーライブは、奈良さんが10月の個展開幕後、交流サイト(SNS)上で矢野さんに直接アプローチしたのがきっかけで実現。定員70人に対し、1501人の応募があった。

 同美術館でのライブは開館10周年の2016年以来、7年ぶり。午後7時過ぎ、拍手に迎えられて登場した矢野さんは、満面の笑みで個展の展示室に設置されたピアノの前に座り、「わたしのバス」を演奏。「今日は全ての曲を津軽弁でやろうか」と冗談を飛ばし、「この会場で作品に囲まれ、音楽ができるというのは特権です」とかみしめるように語った。

 続いてSNSでの奈良さんとのやりとりを津軽弁で振り返り、「私がまず(奈良さんの個展を)見たかったのさ」と説明。ライブ前には奈良さんの案内で個展を楽しんだことも明かし、作品からインスピレーションを受けて即興で作り上げたという新曲も披露した。

 「私は東京生まれではありますが、3歳の時に家族で青森に来て、中学終わるまで育ちました」。曲間のMCでは青森明の星学園のピアノ教室(当時)でカナダ人の先生からピアノを教わったことや、青森駅と上野駅を結んだ夜行列車「はくつる」などの思い出を語りながら、石川さゆりさんの「津軽海峡・冬景色」、津軽民謡のホーハイ節を取り入れた「津軽ツアー」、ねぶたばやしをアレンジした「ふなまち唄PartⅡ」といった青森県ゆかりの楽曲を立て続けに演奏した。

 故郷と芸術との関係性については、「奈良さんの作品に青森ということはあまり(感じない)。矢野顕子の音楽も『やっぱり青森の人ですね』とは言われたことはない」と説明。「アートというのはその人の頭の中、心の中、体の中から出てくる。真に個人的なものは真にユニバーサル。奈良さんの作品はそういうものだから、全世界の人に良いなと言われる」と語った。

 「ラーメンたべたい」の演奏前には、「私にとっての一番のごちそう、ラーメンと言えば合浦公園のつじい。今、思い出の味を反すうしている」と地元ネタで観客を沸かせる一幕も。会場には奈良さんも姿を見せ、矢野さんと津軽弁でやりとりしながら「本当にありがとう。すごい良いライブだった」と絶賛した。

 風邪気味と言いながらもアンコールにも応え、約1時間半にわたって歌声を響かせた矢野さん。最後の曲「ひとつだけ」を歌いきった後には「どうもありがとう。気をつけてお帰りください」と晴れやかな笑顔で締めくくった。

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【ギャラリーライブの演奏曲目】

①わたしのバス
②終りの季節
③津軽ツアー
④津軽海峡・冬景色
⑤ふなまち唄PartⅡ
⑥ごはんができたよ
⑦(個展を見て作った即興曲)
⑧GREENFIELDS
⑨ラーメンたべたい
<アンコール>
⑩ひとつだけ

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