福祉有償運送 年内で終了 NPO法人ぐりーんバスケット 会員高齢化、人材不足背景 障害者、高齢者の移動支援に尽力

20年にわたってボランティア有償移送サービスを行ってきたNPO法人「ぐりーんバスケット」。糸魚川市南押上3の事務所前で前田副理事長、岡崎理事長、松澤副理事長(左から)

糸魚川市で福祉有償運送事業を行ってきたNPO法人「ぐりーんバスケット」(同市南押上3、岡崎忠雄理事長)が年内で同事業を終了する。

1人で公共交通機関を使って外出することが困難な障害者や高齢者の移動支援として、自家用車による移送サービスを20年にわたって続けてきた。近年は運転を担う提供会員の高齢化やボランティア意識の変容などの課題を抱え、現状では安全安心の事業を維持継続することが難しいと、区切りをつけるに至った。法人も本年度末までに解散する予定。

「これからどうしよう」。本年度登録の利用会員は324人。定期的に利用する会員からの声に、岡崎理事長(81)をはじめとする役員らは「後ろ髪を引かれる思い」でいる。

◇厳しい現実 悔しさにじむ

提供会員の本年度登録は18人。多い時で44人が登録、活動していた。講習を経て移送サービスの運転ができる年齢制限(75歳の誕生日前日まで)に達する会員の〝引退〟がここ数年相次いでいた。岡崎理事長は「危機感を持っていた。5年前から必死に集めてきたが。どこも人材不足。仕方がない」と諦めざるを得ない現実に悔しさをにじませる。

◇交通手段確保に懸念材料

「お互いさま」のボランティア精神も社会情勢とともに変わってきたという。「心に生活に時間にゆとりがない。自分のことで精いっぱい。人と人とができることを助け合うことが今の社会に通用しなくなった」と嘆く。

移送サービスの利用の主は通院、次いで買い物。同法人の事業終了に伴い、糸魚川市は人工透析通院者の介護、一般タクシー利用の運賃補助など支援を図るとしている。一方で対象とならない〝はざまの人〟、タクシーの利用時間が集中した場合など懸念材料が残る。松澤明子副理事長(73)は「交通手段の確保が大事。自由に出かけられなくなる不安がある」と心配する。

平成16年度にNPO法人設立認可を受け、同18年度に福祉有償運送認可を得てスタート。同23年度に福祉有償運送運転者認定講習機関として認可された。同市が避難を受け入れた東日本大震災の被災者の買い物支援や通院送迎も行った。前田光恵副理事長(69)は「利用者からの感謝の言葉に支えられた。ボランティアの仲間に恵まれた」と振り返る。

◇時代に対応し「新たな方式」を

岡崎理事長は「(補助金などの)金銭的な対応で解決できる課題ではない。大きな時代の流れに沈んでしまわないよう、これからの人たちには糸魚川に合った新たな方式を生み出していってほしい」と福祉の充実を切に願っている。

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