「とにかく津波から逃げて!生きて!」 東日本大震災の被災者が心からの訴え 新潟日報と河北新報が教訓伝える講座「新潟むすび塾」・新潟市北区

東日本大震災で被災した3人が講演などをした「新潟むすび塾」=12月16日、新潟市北区名目所

 2011年に発生した東日本大震災の教訓を伝え続けようと、新潟日報社と宮城県を拠点に新聞を発行する河北新報社(仙台市)は12月16日、被災者の経験などを聞く「新潟むすび塾」を新潟市北区の北地区コミュニティセンターで開いた。3人の語り部が、津波にのまれた経験などを基に命を守るためにできることを訴えた。

 河北新報社は震災を伝え続ける目的で、12年に「むすび塾」を始めた。宮城県を中心に全国で開き、今回が113回目。新潟県では初めて開かれた。地区住民ら約80人が参加した。

 講演した東北大学大学院医学系研究科准教授、菅野武さん(44)は震災時、宮城県南三陸町の公立志津川病院で内科医をしていた。患者を病院の最上階の5階に垂直避難させていたが、津波が襲来。入院患者72人と看護師ら3人が犠牲になったという。

 津波が引いた後、4階の生存者の救出に向かったが、「津波が再び来る可能性もあり、それが正しい行動だったのか分からない」と強調。「まずは自分の命を守ってほしい」と語った。

 高校生の時に、それぞれ宮城県石巻市と女川町で被災した男性(29)と女性(29)は、避難せずに津波に襲われた後悔を吐露した。家ごと流された男性は「避難する時間はあったのに、しなかった。失敗だった」とし、母とめいを亡くした女性は「結果的に津波が来なかったなどの空振りを恐れず、逃げてほしい」とした。

 3人は、地区住民らと地域防災についての意見も交わし合った。

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