「高岡発ニッポン再興」その119 空き校舎でみえた「対話の重要性」

出町譲(高岡市議会議員・作家)

【まとめ】

・政治、行政の基本は、住民との対話。

・市、閉校の旧平米小学校の校舎に教育総合支援センターを設置する方針。

・地元では、空き校舎のまま放置されるのではないかと懸念の声が出ていた。

市議会議員になり、3年目に突入しました。この間、私は市民の方を対象に、100回近く集会を開きました。とにかく、市民の皆さまの思いを聞こうと思ったからです。市民の声が大切。そう思うようになったきっかけは、34年前の1989年11月9日です。この日ベルリンの壁が崩れたのです。ベルリンの壁の崩壊の直後、東ヨーロッパの共産党の独裁政権も次々崩たのです。私は勝手に、現場に駆け付けました。歴史的な現場で人々の話を聞きたいと思ったからです。

そこで耳にしたのは、自由を求める人々の思いです。「リーバイスのジーンズが欲しい」「マクドナルドが食べたい」「テレビを見ていても、政府の情報しか流れない」。不満が充満していました。結局、共産党の一党支配も、国民の声で崩れ去ったのです。

その後、国内外でジャーナリストとして、ずっと取材してきました。改めて政治、行政の基本は、住民との対話だと、考えています。この対話の重要性、私は市議会でもたびたび訴えています。高岡市は閉鎖的なのです。

中心部にある旧平米小学校は令和4年3月に閉校しました。それ以降、ずっと空き校舎として放置されています。グラウンドは雑草だらけ。住民の不安が募っています。

地元では去年、空き校舎になったころから、高岡市に住民説明会の開催を求めました。しかし、高岡市からの反応はありません。高岡市は基本的に空き校舎については、解体、もしくは売却という方針を打ち出しています。

局面が変わったのは、3月です。教育長は3月議会で、比較的新しい校舎については、教育センターを移転し、新たに教育総合支援センターを設置する方針を示されました。

代表質問での答弁でした。重い意味がありますよ。教育総合支援センターは、いじめや引きこもりなどの子どもたちなどを対象にした施設です。高岡市でも、こうした子どもたちは増えています。意義のある施設です。また、急増する外国人の子どもたちの受け入れも想定しております。

私は議論せず決定したことに、驚きましたが、センターは十分意義があり、設置に関しては妥当な判断だと考えました。そして、この校舎は建設されてから22年しか経っていません。しかも、耐震工事も終えています。壊すのはもったいないのです。

それから半年余り。地元では、移設自体がとん挫する可能性があるという話が広まりました。空き校舎のまま放置されるのではないかと懸念の声が出ていたのです。

そこで、私は12月13日開かれた12月定例会で、教育長に聞きました。「教育総合支援センターを設置するという方針に変更はないか」。

教育長はこんな答弁をしました。「令和5年3月定例会で答弁したとおり、本市が抱える課題の解決を図るため、教育総合支援センターを設置するという方向性に変わりはない」。

今年3月答弁した内容をなぜ、9カ月後に、もう一度聞いたのか。疑心暗鬼になっていた住民の不安を解消するためです。一連のプロセスで、私は住民との対話の重要性を改めて痛感しました。

トップ写真:旧平米小学校(筆者提供)

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