本人いるのに「失踪」…相談中に途中離席→生活保護打ち切り手続き 支援団体と越谷市、説明に食い違いも

再発防止点をまとめ、NPO法人が市に提出した要望書のコピー(画像は一部加工しています)

 生活保護を利用する70代女性に対し、埼玉県越谷市が本人がいるにもかかわらず「失踪」と判断し、生活保護を廃止する手続きを進めていたことが分かった。女性が失踪した事実はない。

 女性の相談を受けたNPO法人が指摘したことから、廃止手続きは取り消されたものの、女性は「失踪していないのになぜ」と市の対応に憤る。女性と同法人は市生活福祉課を訪れ、再発防止とこれまで同様のケースがなかったか調査を求めた。

 女性の相談を受けた生活困窮者支援のNPO法人「TENOHASI(てのはし)」の清野賢司代表(62)によると、女性は今年春ごろ、息子を頼って同市に来たが、会えないまま、45日もの間、路上生活を送っていた。7月に市に生活保護を申請し施設に入ったものの、入居者とのトラブルなどで入退去を3度繰り返していたという。

 女性は今月5日、住居相談のため市生活福祉課の窓口を訪問。この際、ケースワーカーの市職員から「(トラブルが続くと)生活保護を廃止になるよ」と告げられたという。女性が安価な住居物件を探すため、面会の途中で席を離れたことから、同課はその行動を「失踪」と判断。再訪を待つことなく生活保護の廃止手続きを始めた。

 女性は同日午後、同法人に保護され、清野さんは市に連絡。7日に再度、清野さんが事実確認をしたところ、ケースワーカーは「失踪のため5日付で生活保護を廃止した。(女性に)待っててくれと言ったのに待ってなかったから」と理由を説明したという。

 清野さんは「本人がいるにもかかわらず、失踪として生活保護を廃止するのは、生存権を剥奪する行為」と指摘。市の対応について問いただすと、同課は一転し「女性(の存在)が確認できたので」として生活保護廃止の手続きを取り消した。生活保護は継続され、女性は現在、一時滞在施設で生活している。

 今回の件について、市生活福祉課長は「施設に入る調整の間に本人がいなくなり、失踪手続きをしようとしていたところ(同法人と女性から)連絡が入った。生活保護の廃止にはしていない。あくまで途中」と説明している。早期に「失踪」とした理由についてケースワーカーは「人と場合による。(今回のように)処理を進めるケースもある」と話した。

 清野さんはこうしたトラブルをきっかけに、市が生活保護を打ち切るため、安易に「失踪」の手続きを進めた可能性を懸念。「施設をトラブルで退去になったとしても、相談で訪れている人を失踪という名目で生活保護を打ち切るのは違法な行為」と指摘した。

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