「かまいしの第九」有終の舞台 継続45年、釜石・テットに響く歌声

有終のステージで歓喜の歌を高らかに響かせる出演者

 岩手県釜石市で45年続いた師走恒例の「かまいしの第九」(実行委主催)の最後の演奏会は17日、同市大町のテットで開かれた。地元の音楽文化の象徴的な存在で東日本大震災時にも途切れなかったが、高齢化や活動資金の確保の難しさで、幕を下ろした。圧巻の歌声で「一区切り」をつけた出演者は、次なる文化の芽吹きと仲間との再会を願った。

 活動母体「かまいし第九の会」を中心にした合唱メンバーと、市民吹奏楽団、指揮者の瓦田尚さん(40)=同市出身、都立高教諭=率いるアマチュアオーケストラなど約180人が出演。ベートーベンの交響曲第9番と、震災被災地へのエールや離れ離れになった仲間を思う「明日を」や「群青」を披露した。

 時折目頭を押さえる歌い手も。第4楽章の歓喜の歌は「大団円」のハーモニーで会場を満たし、アンコールではさらに聴衆と一体になって歌い上げた。初回から来場している同市甲子町の阿部隆子さん(87)は「最後だと知り夢中で聞いていた。第九は憧れ。素晴らしく、ありがとうと伝えたい」と感極まった。

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