【今週のサンモニ】地球温暖化に大きく貢献するサンモニ|藤原かずえ 『Hanada』プラス連載「今週もおかしな報道ばかりをしている『サンデーモーニング』を藤原かずえさんがデータとロジックで滅多斬り」、略して【今週のサンモニ】。「裏金問題」では無抵抗な当事者を好き放題に叩き、「温暖化問題」では無根拠にはしゃいでいました。

国民のルサンチマンを不必要に刺激

2023年12月10日の『サンデーモーニング』では、トップニュースと『風をよむ』のセグメントで自民党の政治資金収支報告書不記載問題、いわゆる「裏金問題」について報じました。

青木理氏:この問題はある種の構造悪だ。自民党の一強政権を支えた最大派閥でこれだけ堂々と長年にわたって完全なる違法行為を続けてきた疑惑となると、果たしてこういう与党に政権を任せていいのか政治資金改正法の改正は勿論だが、「知らなかった」「派閥に支持された」という言い訳をにわかに信じるわけにはいかない。倫理の底が抜けている。こういう政治を戴いていいのか。

派閥とカネ 安倍派の政治資金問題の背景にあるものとは【風をよむ】サンデーモーニング | TBS NEWS DIG

青木氏がこの問題を「構造悪」と主張することには理があります。

ここまでの経過から、清和会を中心に自民党内で【集団無責任 collective irresponsibility】状態が発生し「少額の不記載、皆ですれば怖くない」といったような暗黒面に陥る【リスキー・シフト risky shift】が発生した可能性が高いと考えられます。少額の不記載も積もれば山となり、総額にしてみると、5年間で5億円という規模になるわけです。

実質的に使い勝手が無制限と言える文書通信交通費を月に100万円も得ている国会議員がこのような資金を秘密裏に受け取る行為は、国民に対する冒涜に他なりません。

何よりもどうしようもないことは、年に159億円の政党交付金を受け、収入総額が249億円にも及ぶ自民党が、年に1億円程度の不記載を犯したことで、問題が山積する日本の政治議論を阻害していることです。政治資金規正法の改正は至上命令です。

ただし、このことを根拠に「政権を任せていいのか」などと自民党の政治能力を否定するのは理に適いません。この不記載に関与した議員には倫理上の問題があり、事の軽重に応じた責任を取る必要がありますが、このことと政治能力とは無関係です。国民の【ルサンチマン ressentiment】を不必要に刺激して社会を混乱させるのは不合理です。

ドサクサ紛れに「モリカケ桜」を事実化

このような不祥事が一度起きると、無抵抗な当事者に対して、メディアが好き放題に叩く行為が横行します。今回も例外ではありません。

後藤謙次氏(VTR):安倍一強というのは党内議論を封じた。公認を貰いたいがために党内で異論を唱えなくなる。森友学園問題、加計学園問題、桜を見る会、この問題は権力の座にあるが故に起きた事件。長期政権の後にひずみが生まれる。

「モリカケ桜」は、『サンデーモーニング』『報道ステーション』などのテレビ番組を含めた日本メディアによる空前の魔女狩りでした。追及する側が挙証責任を怠り、追及を受ける側に【悪魔の証明 probatio diabolica】を求めるという非論理的な状況が繰り返され、最後まで政権の関与は証明されませんでした。

今回の後藤氏のコメントは、ドサクサに紛れて「モリカケ桜」に対する安倍政権の関与を証拠もなしに事実化するものであり、事実を曲げないことを義務付けた放送法4条違反です。

田中優子氏:国民を見ていない。それから日本を見ていない。自分がどうやってお金を握って勝って行くかということしか見ていない。ということは政策も重視していない。国民にとって非常に危険なことだ。派閥を壊すのを国民側ができることなのかと思ってしまう。やっぱり政権交代しかない。

田中氏は、合理的根拠を示すことなく言いたい放題に憶測を展開し、公共の放送電波を通じて特定の投票行動を呼び掛けています。勿論これは、政治的に公平であることを義務付けた放送法4条違反です。

田中氏が『サンデーモーニング』を通して特定の投票行動を呼び掛けるのは、これで何回目になることでしょうか(笑)

反原発を掲げるサンモニこそ地球温暖化に大きく貢献

さて、今年も『サンデーモーニング』は、この季節の風物詩とも言える温暖化対策会議について報じました。

サンモニ・アナ:ドバイで開かれていたのは、温暖化対策を話し合う国連の会議COP28。焦点は、石炭・石油・ガスなどの化石燃料をめぐる対策です。欧米などは化石燃料の廃止を要求、一方産油国などは削減にとどめるよう求めていました。そして協議が難航する中、突然壇上に現れたのは…

少女:化石燃料をやめて!化石燃料をやめて!

サンモニ・アナ:地球温暖化対策を話し合う国連の会議でのハプニング、突然壇上に上がりプラカードを掲げて訴えたのはインド人の少女。警備員に促されて退場しましたが、会場からは拍手が。さらに…

COP28マジド・アル・スワイディ事務局長:若者の熱意を大変誇りに思います。もう一度拍手を送りましょう。

サンモニ・アナ: 12歳の環境活動家、リシプリヤ・カングジャムさんです。インドでたびたびサイクロンの被害を受け、大気汚染で悩まされたことから環境問題に関心を持ち、7歳からCOPの会場で活動していると言います。

リシプリヤ・カングジャムさん:指導者からは具体的なアクションは何もなく、地球と私たちの未来を破壊し続けています。

サンモニ・アナ:スウェーデンのグレタ・トゥンベリさんの訴えにも重なる若者の切実な声。今回の会議は1日延長され、「化石燃料からの脱却」を進めることで合意しました。

科学的な論拠もなく7歳から活動している12歳の女の子の非常識な不規則行動を称賛する参加者が、人類の生活に重大な制限を与える会議を行っていることの方が、人類にとって危機であると言えるかと思います。

そのおバカな状況をドラマ仕立てで報じる『サンデーモーニング』の印象報道は、論理的な問題解決を阻害するものであり、番組制作者がこの問題を真剣に考えているとは到底思えません。

サンモニ・アナ:2021年時点での日本とEUの電力の割合を見てみますと、再生可能エネルギーは、日本がおよそ20%に対しEUは倍近い37%、一方で石炭などの化石燃料は、日本は70%を超えていますが、EUは半分近くの37%に抑えています。

フランスに大容量の原発が存在して広域にわたる国家間の電力融通が可能なEUに対して、日本は、原発をフル稼働させずに化石燃料をベースロード電源に充てていること、および国家間の電力融通が不可能なことから、自ずと化石燃料の割合は高くなっています。

次の表は、各国のCO2排出量に加えて環境負荷への取り組みを示すCO2原単位(排出量/GDP)を示したものです。原発をフル稼働できていない日本のCO2原単位は原発を主力電源としているフランスの倍近くあります。

反原発を掲げる『サンデーモーニング』は、日本の温室効果ガスの排出とそれに伴う地球温暖化に大きく貢献しているのです。

ちなみに温室効果ガスを多量に排出する生産活動を行っているのは、『サンデーモーニング』が問題視する日本ではなく、CO2原単位が異常に高いロシア・インド・中国です。

再生可能エネルギー導入に必要な莫大なコスト

荻上チキ氏:日本は、再生可能エネルギーに力を注いでいく方向性そのものは示されているが、具体的に早くしなければ未来が見えなくなってしまう。危機意識を持っている若者が増えている。早ければ早いほどいいというより早くしなければいけない。一刻も早く具体的なアクションに繋げていく。これが政府には必要だ。

何を言いたいのか意味不明です。

調整力をもたない日本が、変動性再生可能エネルギーである太陽光発電や風力発電をこれ以上導入すれば、調整力を持つ火力発電を増強せざるを得ません。

また変動性再生可能エネルギー導入に伴う調整力を増強するには、莫大な

①プロファイルコスト(変動性再生可能エネルギーの発電量が上下することに伴う、既存火力等の運用変更と発電効率低下に伴うコスト)、
②バランシングコスト(変動性再生可能エネルギーの発電量が予測不可能なことに伴う、既存火力等の発電量の調整や予備力の確保に伴うコスト)、
③系統・接続コスト(変動性再生可能エネルギーの適地と需要地が一致しないことに伴う基幹系統整備費用や基幹送電網につなぐコスト)

を要することになり、日本の産業が廃れると同時に、日本国民とりわけ若者の生活は益々苦しくなるのは自明です。

【今週のサンモニ】反原発・反核原理主義を大爆発!|藤原かずえ | Hanadaプラス

田中優子氏:合意文書には、はじめて原子力が記載された。しかも2050年までに世界の原発の発電容量を3倍にするという文言だ。本当にそれでいいのか。

地球温暖化を問題視する『サンデーモーニング』は、反原発と再エネ推進と電力自由化推進によって地球温暖化の促進、電力需給の逼迫、電力料金の高騰、日本列島の広域にわたる環境破壊に大きく貢献しています。本当にそれでいいのですか。

藤原かずえ | Hanadaプラス

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