富士山が見守る甲府盆地 障害福祉サービス事業所でささやかに暮らす人々 「フジヤマコットントン」予告

2024年2月10日より劇場公開される、甲府盆地の真ん中にある障害福祉サービス事業所「みらいファーム」を舞台に、そこで働く人々の姿を見つめたドキュメンタリー映画「フジヤマコットントン」の、予告編が公開された。

予告編では、「みらいファーム」で働く人々の姿が手織り機のリズムに合わせて映し出される。綿を育て、糸を紡ぎ、布を織る。絵を描き、花を育て、時にお昼寝しながら仕事をともにする中で、育
まれていく友情や恋心が切り取られている。ナレーションは青柳拓監督自身が務めている。

「フジヤマコットントン」は、「東京自転車節」でコロナ禍の東京を自転車配達員の視点で描いた青柳監督が、母の職場であり、幼い頃から通っていた障害福祉サービス事業所「みらいファーム」を舞台に、相模原障害者施設殺傷事件の植松聖死刑囚の「障害者は生きている価値がない」という言葉へのアンサーとして制作されました。

一足先に本作を鑑賞した著名人によるコメントも公開された。コメントは以下の通り。

【コメント】

■町山智浩(映画評論家)
ここで働く⼈々を⾒ると、当たり前のことが不思議に思えてきます。
人はなぜ美しい花を愛するの?なぜ逝った人を慈しむの?なぜ人を喜ばせたいの?
「希望の花、咲かせてもいい?」という言葉で胸がいっぱいになりました。

■和田靜香(相撲/音楽ライター)
コットントン、コットントン、「みらいファーム」で機を織るリズムが生きるに大切なことを気づかせてくれる。あれもこれももっともっとって欲深く望み過ぎて走り回る自分を、立ち止まらせる。線を描いてマッキーのペンで模様に色を埋めていく、花を育てる、畑に座り込んでひとりで佇む。どれも誰も大切なかけがえのない時間であり生であり、そして仕事である。生産性とか効率性とか私たちを追い回す経済至上主義の考え方が侵食できない仕事の尊さを、ここに見るのだ。

■川瀬陽太(俳優)
俳優を30年近くやっていてもカメラ前で「良くみせたくて」緊張する。
カメラは時に人を従属させてしまう存在になりうるのを、身をもって知っている。それを青柳くんはみらいファームの皆へと向けた。
果たして、完成した作品ではむしろ青柳くんがファインダーの向こうのめぐさんやゆかさん、けんいちさん、皆のむきだしの強い生に圧倒されているのが伝わるのだ。
彼らに届く様な映画が作れるかな。まだまだ修⾏だな。

■小森はるか(映像作家)
一人一人の歩き方、手の動かし方、話し方がある。
一人の歩幅が見えるまで、⼀緒に歩き、待ち、話を聞こうとするカメラがある。この映画は、身体と心のペースが人とは違うことを、誰よりも理解しているのはその人自身だということを、そっと写している。
だからこそ、他者のペースを尊重し合える⼈たちでもあるのだと教えてくれる。みらいファームの日々が、風景が、なぜこんなにも胸に沁みるのか。
この豊かさが問うてくることに向き合いたい。

■根矢涼香(俳優)
自転車節での怒り悲しみを、祈りや願いの糸にして、じっくりコツコツ色とりどりに、編まれた95分の布。複雑になりすぎた社会に疲弊する私たちをぐるりと包み、みらいファームの温もりを分けてくれる。悩みながら、喜びながら、その日その日を歩いてく。花と、ものと、貴方と、ヤマと。胸の絡まりが解けてゆく。人は、本来受け入れ合い、支え合えるのだと、この映画と共に叫びたい。

【作品情報】
フジヤマコットントン
2024年2月10日(土)より ポレポレ東中野ほか 全国順次公開
配給:ノンデライコ
©nondelaico/mizuguchiya film

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