「甲南医療センター」の運営法人と院長らを書類送検 勤務医の過労自殺で

 昨年5月、甲南医療センター(神戸市東灘区)の若手医師が過労自殺した問題で、西宮労基署はこの病院の運営法人と院長らを違法な長時間労働をさせた労働基準法違反の疑いで12月19日に書類送検した。病院側は長時間労働は事実ではないと反論している。

死亡直前1ヵ月の時間外労働約208時間、約100日間連続勤務か

 西宮労基署は19日、昨年5月、「甲南医療センター」の消化器内科の専攻医だった高島晨伍さん(当時26)が自殺した件をめぐり、使用者だった同病院の運営法人「甲南会」と具英成院長、高島さんの上司だった医師を書類送検した。

 遺族は自殺直後の病院側の対応に納得せず反発、昨年12月に労働基準法違反疑いで刑事告訴。他方、西宮労基署は今年6月に、高島さんの勤務状況について、亡くなる前に100日連続勤務し、かつ1か月間の時間外労働は207時間50分に上っていたとし「極度の長時間労働により精神障害を発症し自殺した」と労災認定しているが、病院側は労災認定されたのちも高島さんの過重労働を認めず「睡眠時間や自己研さんの時間が入っているので、実際の時間外労働は1ヵ月30時間だ」と主張しており、これまで遺族側に謝罪はおろか経緯の説明もほとんどしていない。

 書類送検を受け、高島さんの遺族はコメントを発表した(以下抜粋)。

公益財団法人甲南会甲南医療センター、その関係者の書類送検を受けて

 私たちは晨伍を亡くした後、甲南医療センターの今の対応のままでは「晨伍の死がうやむやにされてしまう」と感じ昨年 12 月刑事告訴に踏み切りました。
1年経過し、書類送検をされたことに安堵する一方で、晨伍はもう二度と戻ってこないという現実に改めて向き合っています。未だ謝罪はおろか、晨伍の死に関する説明をして頂けない甲南医療センターの対応に悲しみと怒りを感じています。

 晨伍の死に真正面から向き合ってもらえず、労災認定を受けても過重労働などを否定する病院側の記者会見に大変な痛みを受けました。書類送検を経てもこの痛みが消えることはなく、甲南医療センターがどう体制を改めたのかを知るすべもなく、先の見えない暗闇に私たち家族は取り残されています。

「1人の医師として、1人の人間として誠意ある対応をしてください」
これは晨伍の通夜から一貫して同センターに対してお願いを続けてきたことです。晨伍が命をかけて示した過労死の問題から目を背けないで欲しいです。このようなこと容認されては、医療界に大きなモラルハザードを起こしかねません。

 晨伍のような若手医師の過労死がまた起きてしまわないか、そんな想いです。 私たちのような辛い思いをもう誰にも味わってほしくありません。

書類送検で終わり、ではありません。
今後、適切な刑事処分が下され、司法の場で晨伍の死についてより明らかになることを望みます。 そして行政や各機関が各々適切な対応をとることが晨伍に続く若手医師を守ることにつながります。しかし、その前に、どうか甲南医療センターが医師の働き方改革の先頭を行かんとする施設に生まれ変わることを願っています。そのためには私たちと共に今日この日からでも、まずは晨伍の 死に真摯に向き合って欲しいと切に願っています。

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