「シャニソン」における3D表現や新ユニット・コメティックのコンセプト、ゲームデザインを聞く【シャニマス連続インタビュー第2回】

ゲームにとどまらず、多方面での展開を見せる「アイドルマスター シャイニーカラーズ」の連続インタビュー企画。第2回は11月14日に正式サービスを開始したiOS/Android/PC向けタイトル「アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism」について、プロデューサーの高山祐介氏に話を聞いた。

「アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism」(以下、「シャニソン」)は、アイドルたちを育て、輝くステージへと導くアイドル育成シミュレーション&リズムゲーム。すでにサービス5.5周年を迎えたenza対応ゲーム「アイドルマスター シャイニーカラーズ」(以下、enza対応版)にも登場するアイドルたちが3Dで表現されている。

サービス開始後まもなくのタイミング(※11月中旬)で、プロデューサーの高山祐介氏にインタビューを実施。ゲームのコンセプトをはじめ、現状の手応えや今後の展開などについて語ってもらった。

高山祐介氏

インタビュー・編集:TOKEN
文:胃の上心臓

■Demo版から重ねたブラッシュアップ、リリース前後の手応えを聞く

――「シャニソン」は発表から半年強くらいでリリースとなりました。開発期間も含めた現在の心境や、プロデューサーのみなさんの反応についてお聞かせください。

高山氏:4月29日に「シャニソン」を発表してから、一部のプロデューサーさん(※「アイドルマスター」シリーズのユーザーの呼称)にDemo版のテストプレイをしていただき、そこでいただいたご意見や所感を踏まえて今後の開発の方向性を度々お伝えしてきまして、11月14日に正式にサービスを開始することができました。

我々としてはプロデューサーのみなさんに実際に触れていただいたり、MVに関してもご意見をいただきながら、それを開発に取り入れられたタイムラインだったのかなと。半年というとお待たせしてしまったかなと思うのですが、我々としてはご意見を踏まえつつ開発を進められる貴重なお時間をいただくことができたと感じています。

――Demo版をプレイさせていただいた際もある程度の完成系が見えていましたが、プロデューサーのみなさんの意見を受けてのブラッシュアップ作業はどこに力をいれられましたか?

高山氏:プロデュースパート、ライブパートそれぞれにあります。プロデュースパートは遊びごたえや遊び様の部分です。我々としては、育成の過程でスケジュールを選択していきパラメーターを上げていく体験と、カードデッキを拡充させていくデッキ構築の遊びを楽しんでいただければと思っていました。ですが、やることや考えることが多かったり、ずっと考えながら進めていく結果プレイ時間が長くなってしまったりする部分は、プロデューサーのみなさんからご指摘をいただきました。

僕たちが楽しいと思っている遊びを提供しつつも、ご意見をいただいた部分を取り込めるようUI(ユーザーインターフェース)の改修やテンポ感の向上、プロデュースパート以外にも関わる部分ですが、ロード時間の短縮も行い、ゲーム全体のテンポを上げられないかというところを狙っていました。

ライブパートも、リズムゲームにおける遊びの楽しさはもちろんなのですが、やっぱりアイドルたちが歌って踊る部分はすごくキャッチーでプロデューサーのみなさんからもご期待いただいている部分なので、アイドルのパフォーマンスを魅力的に見せられているかというところは注力しました。

プロデューサーのみなさんからは、カット割りが多くてアイドルたちの表情やパフォーマンスを捉えにくいであったり、カメラワークも早くアイドルたちをしっかり写したスクリーンショットを撮影しにくいなどのご意見がありました。ライブの中で頑張るアイドルたちをもっと楽しみたい、応援したいというニーズをより深くすくいあげる映像表現ができるのではないかと開発チームと議論を重ね、結果ほぼ全てのMVに見直しを掛けることにしました。

――インタビュー時点ですでにリリースから数日が経過していますが、現時点の反響はいかがでしょうか?

高山氏:リリース近辺の反応で言うと、やっぱりリリース日を発表してから一気に盛り上がっていただいた印象です。まだまだリリースが先だと思っていたプロデューサーさんもおられたと思うのですが、そこを公式からアナウンスすることで、「いよいよシャニソンがはじまる」といったムーブメントをプロデューサーのみなさんに作っていただけました。

また、夕刻ロベルさんと天音かなたさんに事前にゲームをプレイしていただいたことで、それをご覧になった方が本作がどういったゲームなのか、配信やHP等で説明するよりもよりイメージを掴んでいただいたようでして。リリース日のアナウンスや事前プレイなどの形でお伝えしていくことで、リリースまでの数日をプロデューサーのみなさんの中で楽しんでいただけたのかなという感覚があります。

リリース以降は、平日の日中のサービス開始ではあったのですが、当日からたくさんの方にプレイいただいて、14日の夜から15日にかけてはたくさんの方にダウンロードしていただくことができました。みなさんのお陰でプラットフォームのダウンロード数ランキングでも上位にランクインし、それがきっかけでリリースされたことに気づいてくださってプレイをはじめてもらえたり、はじめてシャニマスを知ったという方もいらっしゃったのかなと思っています。プロデューサーのみなさんが作り上げてくださったムーブメントが、リリース後もよい雰囲気を生み、それが新たなプロデューサーさんに届くという、非常に良い形でサービスをお届けできていることがとても嬉しいです。

■アイドル育成シミュレーション&リズムゲームになった経緯や3D表現へのこだわり

――そもそも、なぜ「シャニソン」を制作しようとなったのかをお聞かせください。

高山氏:enza対応版は、当初からブラウザゲームとして開発していたこともあり、2D表現に長けた技術形態だと思っています。一方で3Dモデルを取り扱うのは不得手な領域ではあったので、3Dでのアイドルたちの新たな魅力・可愛らしさというところを狙っていました。

というのも、enza対応版「シャニマス」のサービスをご提供する中で、「アイドルマスター シンデレラガールズ スターライトステージ」や「アイドルマスター ミリオンライブ! シアターデイズ」、当時の「アイドルマスター SideM LIVE ON ST@GE!」の文脈に沿うと、やっぱり3Dでアイドルが歌って踊るようなパフォーマンス表現というところを「シャニマス」の楽曲でも見たいというプロデューサーさんは一定いらっしゃるという認識がありました。

とはいえ、enza対応版ではアイドルたちと真っすぐに向き合うプロデュース体験をご提供するため、たくさんのコンテンツやシナリオ、イラストを提供していこうという想いもありましたので、そこには注力しつつも、283プロダクションのアイドルたちが歌って踊る表現を真剣に考えようかというタイミングがきて企画を練っていったのが、「シャニソン」の開発の背景です。

――3Dの表現を突き詰める中で、他のタイトルとの差別化にはどんな苦労がありましたか?

高山氏:企画のスタートが283プロのアイドルたちがライブパフォーマンスをする姿をゲームでお届けするというところだったので、3Dパフォーマンスのあるリズムゲームというところがベースにありました。

それをシンプルにそのままお届けする形も検討はしたのですが、ただそうなった時に「アイドルマスター」シリーズでは既に複数のリズムゲームタイトルが出ていますし、時系列的には新しい作品になるので、何かそこにプラスアルファの体験を加えることでシリーズ全体としても前に進んでいる姿をプロデューサーさんにお届けしたいと考えていました。

そして、「シャニマス」が大切にしてきたのは、アイドルたちと向き合って彼女たちを導き、さまざまな場所で輝かせるというプロデュース体験でした。「シャニソン」というタイトルを制作するにあたっても、アイドルたちと真剣に向き合ってプロデュースをした上で、日常を共に過ごした彼女たちがステージに立つ姿を見守るほうが感慨深く、「シャニマス」らしい体験がお届けできそうだと感じて、アイドル育成シミュレーション&リズムゲームというところに落ち着きました。

――プロデュースパートの最後で楽しめるメモリアルライブにおけるカットシーンの演出は、今おっしゃられた積み重ねの感慨深さを示しているように感じました。

高山氏:enza対応版でも繰り返し描いてきたように、アイドルたちもステージに立っている時はプロでファンを魅了する存在ではあるものの、ステージを降りるとひとりの等身大の人物であって、悩みもあるしテスト勉強をしたりする我々と同じ、ごく普通の感覚を持っています。

そんな普通の子たちがステージで凄いパフォーマンスをするのは、プロデューサーとして彼女たちと親交を深め、普段の姿を知っている分大きな感動があるんじゃないかと思っていて。それを「シャニソン」というゲームの中で表現できたらなという風に考えていました。

――そういった発想には実際の映像を見ると納得感がありました。enza対応版と「シャニソン」の差別化はどういったところから押し出していくのでしょうか?

高山氏:プロデューサーのみなさんには、シナリオとアートワークを中心に好意的に受け入れてくださっている方が多くいらっしゃることはもちろん認識しているので、「シャニソン」でもその期待を裏切らないよう3Dモデルという表現の中で、2Dイラスト表現の特徴的な部分を要素分解し、3Dに落とし込めるような試作や研究を開発の初期段階に重ねました。

通常、顔から落ちる影であれば髪の輪郭やあごの輪郭があったり、服から落ちる影でもスカートだったらプリーツ部分のギザギザの影が落ちたり、というのがリアルな表現です。3Dであればそういった影を落とすことは容易なのですが、これまでの「シャニマス」の2Dイラストでは正確な影のかたちではなく、あくまでアイドルの表情やイラストにおいて最も表現したい部分に注目いただけるように工夫をしてきました。

その工夫の一端としてあえて情報量を削っている部分や、デフォルメとして影をシンプルな直線で表現している部分などは、「シャニソン」における3Dモデルでもあえてリアルな形状で影を落とさずにイラスト的な表現にこだわっています。今申し上げたのは一例ではあるのですが、イラストの魅力を3Dでも表現できるようこだわっているのがグラフィックの特徴となっています。

シナリオについては、プロデュースを楽しんでいただく際のエピソードが特徴的なのですが、コメティックを除くそれぞれのユニットのエピソードは、enza対応版に収録した内容を再構成した形式となっています。

その意図としては、「シャニソン」から触れていただく方もおられる中で、アイドルやアイドルたちによるユニットに対して、enza対応版を既に遊んでくださっている方はある程度知った状態からスタートしても振り返るように楽しんでいただけると思うのですが、新しく始めてくださる方がプロデューサーとアイドルたちが知り合った状態から物語を読んでしまうと、どこか疎外感を感じてしまうのではないかと思ったためです。

もちろん、そういうものとして楽しんでもらうことも可能ですが、本当の意味でプロデュースをしている感覚、彼女たちと出会ってステージに初めて立った姿を見て感動するといった、感情のリンクが生まれにくいなと。やはりプロデューサーとアイドルが出会って、アイドルユニットが始動する様をもう一回描く必要がありました。

ただ、本当に同じものをなぞるだけではゲームが変わっている意味がなくなってしまうので、enza対応版では描かれていなかった角度から、シナリオ分岐によっては新たな情報や発見があるようになっています。そういった要素を入れることによって既にenza対応版でご存じの方も、「シャニソン」から触れる方も楽しめるような、アイドルたちとこれから関係性を築いていけるようなシナリオ表現になっています。

■「シャニソン」で描くのは「シャニマス」と同一の世界線、コメティックのコンセプトも

――「シャニソン」とenza対応版で描いている出会いの部分に関して、それぞれの時間軸はどのように捉えればいいのでしょうか。

高山氏:大前提でいうと、僕の中ではenza対応版「シャニマス」も「シャニソン」も、ひいては「シャニアニ」もコミックもドラマCDも、基本的には全て同じ世界線の上で語られていると思っています。

とはいえ、媒体が違うことによって拾い上げるストーリーや描き方は微妙に異なってくると思っています。その上で、僕の中で意識しているポイントは“それぞれのアイドルのターニングポイントは同一である”というイメージです。

例えば櫻木真乃は、enza対応版でも「シャニアニ」でも高台の公園で鼻歌を歌っているところをプロデューサーからスカウトされます。そこからの過程で初めてデビューライブに挑むにあたって、enza対応版で実装されているシナリオイベント「Light up the illumination」のストーリーのように、3人の足並みが中々揃わない中で風野灯織が体調を崩し、心情を確かめあったうえで3人で練習するようになり、関係性が築かれていきます。

そういった大筋のストーリーは、どのメディア作品であっても共通しているものと考えて制作に携わっています。ですので、「シャニソン」の時系列はenza対応版の「Light up the illumination」のシナリオを読む時系列、アイドルとプロデューサーが出会ったその後、イルミネがデビューライブに挑むまでという形で捉えていただければ大丈夫かなと思います。

――ありがとうございます。続いて、新ユニットのコメティックについて、コンセプトなどをお聞かせいただけますでしょうか。

高山氏:コメティックはイメージカラーとして黒を採用しているアイドルユニットで、283プロでソロアイドルとして既に活動している斑鳩ルカをメンバーに擁する8つ目のアイドルユニットです。彼女たちのイメージカラーの黒は、正確には色ではなく、光のない状態だと思っています。

今まで「シャイニーカラーズ」というタイトルで輝くアイドルたちを表現してきましたが、光り輝く場面だけではなくて、時には影が落ちる場面であってもそこから反語的に希望を見いだせるとか、ポジティブな感覚になる表現も徐々に広げてこれたと思っています。

斑鳩ルカはこれまでの背景からネガティブな心情を抱え、そして今も心の中にわだかまりがありながら283プロでアイドルを続ける子ではありますが、そんな彼女の存在も283プロに内包し、黒や影といった表現も肯定するような意味合いを、黒のアイドルユニット「コメティック」が担ってくれるといいなと思っています。

――先日のライブで曲ごとにセンターが変わるというお話をされていましたが、そういった部分もユニットのコンセプトに関わるのでしょうか?

高山氏:先ほど斑鳩ルカを擁すると表現したのですが、便宜上彼女を中心に配置することが多いものの、彼女が絶対的なセンターかというとそうではないですし、彼女自身もそれは全く望まないのではないかと。

コメティックは経験豊かなルカと、新人アイドルの羽那・はるきという3人ですが、経験が豊富だからといって283プロのプロデューサーはルカにばかりセンターを強制することはないだろうとも思いますし、羽那やはるきもソロとして活動をはじめ、コメティックというユニットではなくとも活躍の幅を広げつつあったふたりではありますので、そんな彼女たちがユニットを組む中でのユニットの表現方法として、センターが変わり、それに伴い楽曲のイメージも変わっていく形になっています。

■プロデュースパート、リズムゲームパートそれぞれに意識された遊びのポイント

――enza対応版と同様に「シャニソン」はプロデュースパートを通じた育成の比重が大きいように思いますが、全体的なゲームサイクルや仕様の部分でブラッシュアップに気を使った点もお聞かせください。

高山氏:プロデュースでいうと、スケジュールを進めていく中でプロデュースカードを獲得するためにはレッスンを、パラメータを伸ばすためにはお仕事や自主練を受けていくことになりますが、レッスンを行う際のテンポ感には気を配りました。プロデュース中に複数回行うレッスンではありますので、30秒という時間制限を設けて、その中でテンポよく終わるかたちとしています。

また、お仕事や自主練というスケジュールにはゲーム性を入れていないのも、先ほど申し上げたテンポ感を気にしてのことです。ひとつひとつの行動すべてに時間がかかるとどうしても冗長なプレイになってしまいますし、レッスンで成功した!パラメータが伸びた!というように楽しさや気持ちよさを感じながら、テンポ良く進められることが大切だと思っているので、スケジュール選択については今のバランスに落ち着いています。

シナリオ表現については、長いシナリオをガッツリ楽しみたいというニーズと、今は育成に集中したいというニーズが実は違うものだということに、enza対応版を運営する中で気づきました。プロデューサーのみなさんのプレイの仕方としては、プロデュースする時はプロデュースに集中、シナリオを読み込む時はオート再生で集中して楽しんでいただくなど別個に楽しむプレイスタイルの方が多く見られました。

という背景もありましたので、育成の中でシナリオを通じてアイドルたちを感じていただくには、ある程度長さにも気を配らないと別で読めばいい、プロデュースの最中はシナリオを読まないという状況になってしまうと思いました。ですので、1シナリオあたりのワード数を抑え、テンポよく楽しめるようなシナリオ表現を模索し、シナリオの長短によってプロデュースに掛かる時間が変わってしまうようなことなく、ある程度一定の時間で毎回のプロデュースを楽しんでいただける工夫をしています。

一方でライブパートについては、プロデュースパートで育成したアイドルたちを編成することが基本にはなっていますが、手に入れたPアイドルをすぐにライブで使用したい、リズムゲームだけ楽しみたいといった方向けに、育成前のPアイドルであっても編成が可能、リズムゲームも楽しめる仕様にしています。

もちろん、アイドルたちを育成し、彼女たちの輝きをステージを通して見守るという育成・ライブ体験は楽しんでいただきたいのですが、アイドルたちと触れ合っていただくうえで、育成もライブも、必ずどちらもやらなければいけないということは避けようという話は、開発チームと制作初期の段階で議論して決めていました。

――プロデュースパートにはオート機能、ライブパートにはオート機能とスキップ機能がそれぞれ入っていますが、そちらの意図もお聞かせください。

高山氏:プロデュースやライブのオートモードやスキップ機能は、基本的にさまざまな方のニーズに対応できるようにしたいという想いから実装しています。

プロデュースのオートであれば、今しっかり触る時間はないけれどオートで回しておきたいとか、STを使っておきたいとか、それこそ新しい編成をまずはオートで試したり、検証したいとか、どちらかというと育成を繰り返していただく際のニーズに応えるものです。

ライブのオートやスキップ機能も同様で、移動中等でプレイできないタイミングでもスキップで報酬だけもらっておこう、のように基本的には時短や隙間時間でのプレイにおけるニーズにお応えするものになっています。

また、チャレンジツアー向けにはしっかり育成をするけども、ライブ向けにはオートでプロデュースを行うといった使い分けなどもできますし、その反対ももちろん可能ですので、さまざまな方にオートモードは活用していただけると思います。

逆にライブパートでは、高難易度の譜面を何とか頑張ってクリアしたけれど、それを何回もやるのは大変だなという方向けに1回クリアすればスキップできるようになっています。こちらも幅広い活用ができるように機能を用意しているイメージです。

――プレイのハードルを下げる施策はenza対応版でも順次実装されていきましたが、その経験は活きているのでしょうか?

高山氏:enza対応版で得られたフィードバックは「シャニソン」でも活かされています。もちろんプレイ時間が短ければ短いほど良いとは思っていません。あくまで、ソーシャルゲームは様々な状況で触れていただくものであって、プロデューサーのみなさんもプレイしたい環境はさまざまかと思いますので、さまざまな方のプレイスタイルに沿うような機能をご用意したいという考えになります。

話は逸れますが、プレイの長さという視点で言えば、育成は短すぎると1回1回の行動の重みが増していく傾向にあります。例えば28ターンで能力を上げる場合と10ターンで能力を上げる場合だと、10ターンでは1回1回の行動の重要さが変わります。失敗するとリカバリーが難しく、プレイに緊張感も出てしまうのかなと。

そういった意味では短すぎず長すぎない、かつ育成の際に「上振れ」していく感覚も楽しめるようなプレイボリュームを狙えたらというところが「シャニソン」の考え方になっています。

――プロデュースカードゲームの仕様は人によって理解に幅が出てくるかと思います。そのあたりのフォローに力を入れている印象がありますが、今後の取組についてはいかがでしょうか?

高山氏:現状の認識として、ユニットごとにプロデュースカードゲーム部分の基本的なルールや立ち回りが異なっていて、ユニットによって手触り、理解度の差が生まれている点について把握しています。

本来、シャニソンの育成パートで目指す「ローグライクカードゲーム」ジャンルであれば、ルールのシンプルな簡単なユニットを先にプレイできるようにし、カードゲーム自体に慣れてきたら少し複雑なルールを持ったユニットでもプレイできるようにする。そういった流れでコンテンツを開放するのがモバイルゲームの設計にとっては正しいと思います。

ただ、そうしてしまうと好きなユニットを最初からプロデュースできない方も出てきてしまうので、入口としてはユニットごとのプレイや立ち回りの難易度に差がある点は理解しつつも、担当ユニットをプロデュースできることを優先した状態になっています。

そのため、プレイの基本やユニットの立ち回りの基本をチュートリアルで体験いただいたり、難易度「イージー」ではレッスン中にカード効果を確認しながらプレイできるカウントストップの仕様を取り入れていたりと、プレイしながら理解を深めていただけるアプローチを目指しています。その他にも、配信などを通して実際にプレイを見ていただく機会を作ったり、ゲーム内のヘルプの拡充、困った時に確認できる公式FAQなどフォロー施策は意識的に多数用意しています。

さらに、公式HPでの攻略ガイドの公開をはじめ、困った時に振り返るポイントや参考になる情報がありつつ、それを手助けにしてゲームをプロデューサーさんなりに攻略してもらう流れができたら理想かなと思っています。

――リズムゲームに関しては、その時々でトレンドの変化があると思いますが、「シャニソン」ならではのアプローチはありますか?

高山氏:リズムゲームパートの制作で最初に決めたのは、奇をてらわないということでした。

まさにトレンドの変遷の中でこういう機能があると便利だという要素がユーザーの中で作られていったと思うので、そういった要素は当然兼ね備えた状態で提供することを意識しました。我々が全く新たなリズムゲームを開発して楽しんでもらうというよりは、馴染みのあるリズムゲームでかつ、かゆいところに手が届くデザインを採用する方が、プロデューサーのみなさんに受け入れていただきやすいのかなと思い、今のようなかたちになっています。

――リズムゲームパートの手触りの部分はしっくりくるものがありました。MVを見せる部分との構成のバランス感で気を付けた部分も教えてください。

高山氏:リズムゲームの表示関連で言えば、このノーツはフリック、このノーツは長押しといったように、わかりやすくシンプルなUIで構成しています。

MVについてはプレイ中にも楽しんでいただけるよう、ノーツが落ちてくるレーンについて画面全体を覆うのではなくて、奥は狭まって手前は広がっていくように、画面の描画領域みたいなところを広げるイメージはしています。

ただ、リズムゲームをプレイするときにはノーツに集中したいし、MVを見ていただく時はMVモードで見ていただく方が多いと思っているので、MVを見てほしいから現在の仕様になっている、という要素はあまりありませんでした。

■運営タイトルならではのゲームサイクルや今後の展望は?

――楽曲の追加に関して積極的な印象もありますが、実装の流れはどのように考えていますか?

高山氏:11月はリリース時点で残りはおよそ半月という形なので、ややイレギュラーなスケジュールになりますが、現在の運営サイクルでは、1ヶ月の運営スパンを通して少なくとも3曲は追加されるようになっています。

ひとつは新曲で残りふたつは既存曲になるのですが、11月に登場した放課後クライマックスガールズの新曲「裸足じゃイラレナイ」のように、「シャニソン」で書き下ろされた新たなユニット楽曲が毎月1曲、プロデュースパートのエピソード追加のタイミングで追加される既存CD収録のユニット楽曲が1曲、後はソロ楽曲というかたちで現在のベースは3曲追加になります。

この後のタイミングによっては、例えばアイドル全員で歌う全体曲の追加があったりだとか、全体曲以外も追加するタイミングを予定していたりします。現在のベースは3曲ですが、3曲以上追加する月も今後は出てくるという予定にはなっています。

――リズムゲームを触りたい層のニーズや新曲を楽しみにしている方の期待にも応えられそうですね。

高山氏:ありがとうございます。「シャニソン」の楽曲追加に関しては、アイドルたちのパフォーマンス表現の結実したものと思っていますので、アイドルたちがどんなパフォーマンスをしているのかをプロデューサーのみなさんに楽しんでいただきたいと考えています。

そういった考えからMVのある楽曲を現在毎月3~4曲ほどの追加をさせていただき、プロデュースパートとライブパートを合わせて現状の運営サイクルとさせていただいています。

――プロデュースパートに割くボリュームも踏まえて、ゲーム内のイベント開催のサイクルはどのような形を現状ではイメージしていますか?

高山氏:1ヶ月の運営サイクルのイメージとしては、新曲追加と新衣装・新シナリオを楽しんでいただけるユニット毎の楽曲ストーリーイベントを毎月開催していきます。楽曲ストーリーイベントはこのインタビュー時点で開催中の「茜色ドローイング」と同様、新曲の追加があってその期間中にどの楽曲でも構わないのでライブをプレイするとポイントが貯まり、そのポイントを新登場のPアイドルや様々な報酬と交換できるという形式です。

次がプロデュースパートの新エピソードの追加になっています。リリース当初は各ユニットエピソード1までが実装されているのですが、運営の中で毎月1ユニット分のエピソードを追加していって、そこで新たなプロデュースシナリオと育成体験を楽しんでいただけるものになっています。プロデュースのエピソード追加のタイミングでも既存CDシリーズのユニット楽曲を新規実装して、それが新たなメモリアルライブとして表現されたり、リズムゲームでも遊べたりといったところが2つ目のコンテンツ追加になっています。

3つ目はソロ曲の追加と、後はその曲追加と同じタイミングで行われるミッションの追加です。また、現在開催しているチャレンジツアーに関しては、毎月ではないものの、ステージ数の拡張なども考えていまし、今後PアイドルやSキャラの育成の手助けとなるようなコンテンツ追加も考えています。その他、毎月新シーズンという形でプレイするほどに報酬がもらえるコンテンツもあり、Sキャラやアイドルの衣装が目玉報酬となっています。

大まかにまとめると、ライブパートの追加、プロデュースパートの追加、その他のコンテンツの追加のように、1ヶ月を通してバランスよくプレイコンテンツや報酬を追加していくかたちを考えています。

――enza対応版はさまざまなアプローチの対人要素がありますが、今後「シャニソン」に対人要素が入ってくることはありますか?

高山氏:前提として今のコンテンツ群で完成だとは思っていなくて、enza対応版で「ファン感謝祭」や「マッチライブ」などが追加されていったように、新しい遊びのコンテンツ追加は運営タイトルにおいて重要だと思っています。新たな目標が生まれることでまた遊び直せる部分もあったり、既存のPカードやSキャラも新たに活用できる余地も生まれると思っていますので、基本的にコンテンツ拡張は今後も継続していこうと考えています。

まだ具体的に決まっている訳ではないのですが、あくまで構想として考えているのは、ユーザー間で競い合うようなPvPコンテンツであったり、もしくはプロデューサー同士で協力して手ごわいステージに挑むようなGvEコンテンツについても選択肢には入っています。

ですが具体的にどんなコンテンツで、追加をするとしてもいつ頃追加をするのか、というのは、まだ未定の状態です。今はまさにプロデューサーのみなさんがライブやプロデュースなど、毎月追加されるコンテンツをプレイいただいている状態かと思いますので、プロデューサーのみなさんの今後のプロデュースも見つつ、引き続き検討をしてまいります。

例えば今のチャレンジツアーであれば、プロデューサーのみなさんのクリア状況や育成の状況も踏まえて、今後追加するステージの特徴なども考えていくべきだと思っています。そういった意味では、今のプロデューサーのみなさんの反応を踏まえつつ新たなコンテンツを考えていきたいなと考えています。

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