AIを活用し既存の公共交通との共存を 宮城・利府町が乗合交通サービスの実証運行始める

宮城県利府町で、スマホアプリなどを使い指定した場所に車を呼ぶことができる乗合交通サービスの実証運行が11月から始まりました。既存のバスやタクシーとの共存を目指すサービスの期待や課題についてです。

11月、利府町で新たな乗合交通サービスmobiの実証運行が始まりました。
熊谷大利府町長「利府町の大きな課題の1つとして、公共交通機関の充実がありました。住民の皆様によりきめ細やかに届くように、mobiシステムを導入致しました」

人口3万5000人余りの利府町は、幹線道路沿いに大型商業施設などが集積し周辺には住宅街が広がります。
実証運行が行われるは町の人口の約6割が住む、利府町総合体育館から半径2キロ以内のエリアです。

12人乗りのバス2台が、午前8時から午後7時まで毎日稼働します。乗り降りできる場所として197カ所ものポイントが設定され、利用者がスマホアプリや電話で乗り場と行先を指定し車を呼ぶと、おおむね20分以内に車が到着するというサービスです。
利用料は大人1回300円、回数券は6回分で1500円、定額乗り放題プランは5000円です。

AI活用の乗合交通サービス

公共交通の充実を求める町民の声は以前からありましたが、路線バスの増便は容易ではありません。そこで、町は路線バスなどとの相乗効果を期待してmobiを導入することにしました。
熊谷大利府町長「既存の公共交通システムを補完するためのmobiでございますので、まさしく共創、共に創って公共交通網の充実を図りたいと思っております」

mobiは、高速バスを運営するWillerとKDDIによる合弁会社が開発し、全国で導入されているシステムです。人工知能=AIが、2台の車からより利用客に近い車両と目的地までの適切なルートを導き出します。
例えば、バスが1人の客を乗せて走行している時に別の予約が入ると、AIは効率の良い新たなルートを探し出して運転手のタブレット端末に提示します。

こちらの男性は、利府町の大型商業施設までの通勤に乗り合い交通を利用しています。これまで使っていた路線バスは本数が少なく、mobiを利用することで出勤時間に合わせた利用が可能になりました。
利用者「合うバスが無くて午前8時前とかのバスに乗っていたので。このサービスができてからはちょうどいい時間に出退勤できるようになってありがたいです」

実正運行の開始から3週間が経過し、利用者からは時間を気にせず買い物ができるようになったなどの声が聞かれ、町では順調な滑り出しとしています。
利用者「一番メインは病院ですね、子どもたち(を連れていく時)の。雪が降る時とかは助かるんですよね。あと買い物とか」「(今までは)歩いていましたが、足が丈夫じゃないので助かりました」

町は、定額使い放題プランの登録者150人を目標にしていて、利用者を増やすため各地で説明会を開いています。この日は、老人会の忘年会を訪れ65歳以上の高齢者約60人を対象に説明会を開催しました。

高齢者に周知を

高齢者の関心は高いものの、登録に必要なメールアドレスが分からないなど序盤からつまづくく人が相次ぎました。
利府町町民生活部菊地浩平主査「スマホになじみがない方が多いので、想定はしておりました」

担当者も額に汗をかきながら、1人1人丁寧にアプリの導入方法を説明します。
町民「この携帯電話で使えるということが初めて分かりましたので勉強してみます」
利府町町民生活部福島俊部長「高齢者の方に使っていただきたいのですけれども、スマートフォンを使うと便利に使えるのですが、なかなかそのスマホの操作の普及が課題となっているところです。充実した商業施設、医療施設、そういったアクセスの利用が上がることで住民満足度が上がったり、持続的な公共交通が出来上がることにつながればと思っています」

地域交通に詳しい福島大学の村上早紀子准教授は、mobiを持続性のある公共交通とするためにこう指摘します。
福島大学経済経営学類村上早紀子准教授「今回のmobiのプロジェクトの一番の柱である共創、共に創ると書いて共創というのが大きなテーマでありますので、そういう意味では既存の公共交通と共創を図っていくという軸は、ブレずにいく必要があると思います」

実証運行は2024年3月末までで、利用客の年代や利用客が多い地域、他の公共交通機関への影響などを調査し本格運行を目指します。

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