安宅伸明(daisansei)×池澤英(Ezoshika Gourmet Club)×荒川大輔(SPRINGMAN)-『新宿LOFTの年末大感謝祭 2023』の開催を前に、出演バンドを代表して気鋭3組のフロントマンが意気込みを語る!

新宿LOFTでの思い出やエピソードから

樋口:『新宿LOFTの年末大感謝祭』は毎年恒例で、1年を総括して新宿LOFTに出演してくれたニューフェイスや新人バンドを軸にブッキングしつつ、今年に関してはBenthamだったり山さん(山岡トモタケ&FLAMINGSとして出演)のような中堅どころも久しぶりに、しかも何度も新宿LOFTに出ていただけたこともあって、今年はこんなラインナップになりました。その上でこの対談に関しては、daisanseiは以前ワンマンライブからスタートしてメンバーチェンジを繰り返しながらも定期的に出演してもらって、話すうちにちょっと面白いぞと思いまして。Ezoshika Gourmet Clubも以前から出てもらいながら今年は定期的に出てもらい、自分たちで企画をやったり精力的に動いてる。SPRINGMANは去年の『年末大感謝祭』に初めて出て今年も出てもらえるのと、個性が強そうでどんな感じのお話をしてくれるのか(笑)個人的に楽しみで、この3組でお話をしてもらいたいと思った次第です!

安宅:荒川さんとは初めまして、ですよね。

荒川:そうです、よろしくお願いします。すぐるさんとは昨日、お話ししました。

安宅:すぐるさん、とは?

池澤:僕です!

安宅:“すぐる(英)さん”って読むんだ、良い名前! よし、これで僕たちもう仲良しだ!(笑)

──では、皆さんの初・新宿LOFTの出演時やLOFTでの今年の思い出などを話していきましょう。

安宅:僕らは活動の1年目、フルアルバムを出したリリースツアーのファイナルをやらせていただきました。僕はずっとお笑いとかテレビとかが好きで27歳ぐらいのときにたまたま音楽を始めたんですけど、そんな俺ですらも新宿LOFTという場所の名前は知ってたしメンバーも興奮してたんで、すごいんだって思って。まずそこでできたのが嬉しかったのと、今年に入ってからはライブに呼んでいただける機会が多くて。僕にとっては自分の節目みたいなタイミングでライブを入れてくれる感じで、もしかしたら波長が合ってるのかもしれないなと思うから、もっとお客さんを増やして恩返しをできたらなぁと。“母親のような存在かつ心の新宿LOFT”で、“新宿にぽっかりと開いた陽の当たる岡のような地下”みたいな場所です。

daisansei

──(思わず拍手しつつ)オフィシャルのプロフィールにテレビ制作会社勤務をされていたと記載がありましたが、テレビやお笑いからそんな表現力が身についたのでしょうか。なぜ音楽の道へ?

安宅:人前に出るのに憧れつつ、でも俺の力じゃ無理だと裏方に行ったんですけど、でも捨てきれなかった人前に出たいという気持ちを、音楽活動で始めた感じでした。ものづくりは好きでしたし、中2でくるりを聴いたときのカッコ良さに触れてすぐギターを買って曲作りは趣味でずっとやってはいたので。

──なるほど。続いてEzoshika Gourmet Clubは?

池澤:僕はフジファブリックが大好きで。新宿LOFTを拠点にしてたのを知って、バンドを結成した最初期ぐらいの約5年前に音源を持って“LOFTに出させてください”って直接、行ったのが最初です。『LOFT POWER PUSH!!』(補足;現在も続く不定期開催の若手アーティスト応援企画)に出させてもらってから毎年お世話になっている感じですけど、やっぱり憧れの場所ですね。NUMBER GIRLもすごく好きで、2019年の新宿LOFTでの復活ライブも見に行きましたし、僕の中では伝説のライブハウスで、そこでライブができているのはすごく嬉しいことです。今年は3回かな? ライブをしてますが、今年は事務所を辞めてフリーになりまして。ホームのライブハウスというのを明確に打ち出していけると良いなと考えていたときに新宿LOFTがあり、あとは初めてライブをした下北沢ERA、この2カ所を大事にしていきたいなとすごく思っているところですね。

Ezoshika Gourmet Club

──フジファブリックの音楽との出会いはいつ頃でしょう?

池澤:僕はけっこう遅いんですよ。NUMBER GIRLに先に出会ってそのコピーバンドを高校生のときに演っていて、良い鍵盤を弾く親友がいたので彼とライブをやりたくて鍵盤を入れてNUMBER GIRLを演っていたら、“フジファブリックぽいね!”って言われて。聴いてみたら“僕がやりたかったのはこれか!”と衝撃を受けて、大好きになったんですよね。

3者の共通項は、なんとスポーツ!!

──SPRINGMANは2組に比べると、新宿LOFTの初出演は最近になりますね。

荒川:メメタァの(Vo&Gt・西沢)成悟さんと仲良くなりだした時期が、去年の『年末大感謝祭』の頃だったんですよ。

樋口:そう、SPRINGMANのことは最初、成悟くんが連れてきて(『年末大感謝祭』打ち上げの)遅くまで、2人ともいた(笑)。

荒川:そのあと車で成悟さんを送り届けました(笑)。成悟さんのお陰で新宿LOFTとも樋口さんとも出会えて、それで今年9月のイベントにも声をかけてもらって出演しました。僕はもともと、栃木・宇都宮駅前で路上ライブをしてて“ライブハウスは怖いから行きたくないわ”って感じだったんですね。今は事務所に所属して、ライブハウスにはたくさんの(ミュージシャンの)ポスターが貼ってあって“ありがとうございます”とか書いてあってライブハウスの歴史とかも分かっていく中で、新宿LOFTには2019年だったと思うんですけど、さよならポエジーっていうバンドがすごく好きで、それを見にサーキットイベントに行ったのが初めてだったと思います。それでお客さんとの距離の近さにすごくびっくりした覚えがあります。熱量がバババーッと来て“やっぱり怖いなぁ”っていう気持ちにもなって。(その後)新宿LOFTに初めて立たせてもらえたときはバーステージだったんですけど、やりにくいなぁ、っていう印象だったんです。

池澤:中音(=ステージ上で聞こえる音)と外音(=スピーカーから客席に聞こえる音)が分かれていないような感じで、出したままの素の音が出る感じでね。木の壁なので(音の)反響も独特で。

荒川:でも、だからこそ燃えるんですよ、皆そうかもしれないんですけど。“ライブハウスという環境ではこう見せれば良いんだ”っていうのをストイックに教えてもらった、そんなステージだったと思ってますね。ホールでライブしたいなとも思ってましたけど、成悟さんに“バーステージでやれたら怖いものないし、やりこなせたらカッコ良いことだよ”みたいに教えてもらってましたし、マネージャーが“皆、バーステージを経てホールステージへ”って言っていて、これは当分行けないなと思ってたいたんですが今回の年末大感謝祭はホールでというお話で、プレッシャーを感じておるところですね。この日までに、ホールステージに立つという意味をしっかりとアレして、ホールステージに立たなきゃと思っております。

SPRINGMAN

──阪神・岡田監督みたいで良いです(笑)。そんな新宿LOFTはコロナ禍はできなかったもののライブ後に“皆でお疲れ様の乾杯と挨拶はしよう”という姿勢があって、出演者が交流を深められるのも良いなと思っていますが、お酒や打ち上げは皆さんは?

安宅:お酒の席とかは元来そんなに好きじゃないし、時間の無駄とも思うタイプなんですが、僕は人とコミュニケーションを取る時間が日常あまりないので、それができる打ち上げは貴重な機会でありつつ、個人的にはステージにいるよりそういう場のほうが自分らしいとも思っていたりして、自分らしい自分でコミュニケーションを取れるチャンスなので楽しみにしてますね。LOFTは長机を置いてお菓子も出してくれるし(笑)、最近は歳下と一緒のことが多くなって歳下の話を聞きながら、メンバーで僕だけ終電を乗り過ごしちゃう、みたいになってます。バンドをやってるだけあって話してみると皆、人としてやっぱりオモロいですよね。でもフロントマン同士よりは、訳も分からず他バンドのドラムの人と喋って、みたいな構図ができがちなイメージがある(笑)。

荒川:(フロントマン同士は)何やかんや主張したい、ってバッティングしちゃうんですよね。

池澤:確かに(笑)。LOFTは樋口さんが間に入ってくれて紹介しながら喋れるので、つい最後まで居ちゃうんですよね。あとは音楽性と言うか、ソウルが近い人が集まる感じになるので友達になりやすいなっていうのを感じますね。

荒川:僕はもともと3ピースバンドで(バンド内では)一番、営業もやっていたので残らざるを得ないものをやってましたけど、今は“絶対に帰る!”という基本スタンスではいます。(ライブ後は)宿題も多いし、車移動ですし。でも本当に飲みたいっていうときは、車の中でベッドを作って寝られるようにしてるんですよ。

樋口:この日は10代の出演者はいなくて全員20〜30代だから、私からすると同世代が大集合という感じで、そこまで年齢差はない? かな。

安宅:とは言っても、(荒川とは)7つぐらいの差がありますよ!

樋口:でもBenthamとか山さんとかは、(安宅の)7つぐらい上じゃないかな?

安宅:あ、じゃあ先輩ヅラしなくて良いんですね!(笑)

樋口:大丈夫、(安宅が)中間管理職ぐらいな感じ。

安宅:そうなのか、真ん中ぐらいってことは上原(浩治/補足:中継ぎ投手としても日米で活躍)か?

──すみません、急に野球の喩えでしょうか?(笑)

池澤:ちょうどこの前(安宅と)話してたんですよ、“上原はすごいんだよ!”って。

安宅:僕、一番見てるのが(テレビから現在YouTube番組として配信の)『フルタの方程式』ですもん。曲も作らず見てるときもありますね。

荒川:僕はそのタイトルの本を読んでました。中学まで硬式野球をやってたんですよ。左利きで、ピッチャーとセンターを一番多くやってました。

安宅:僕も小〜中で軟式野球やってた! キャッチャーで古田と同じ青いミットを買って!(笑)

池澤:僕も小学校はエレクトーンを習いつつ、軟式野球もやっててファーストでしたね。

安宅:(荒川が)硬式野球ってことは、ガチな野球!?

荒川:ガチでプロ野球選手になろうと思ってたぐらいやってました。お父さんが甲子園にも出てたので“夢は叶う!”みたいなテンション感でやってたんですけど、あるとき背が低いから無理だわって気づいて。一生続けられないものは無理だ、って野球を辞めてぽっかり空いた穴に来たのが音楽でした。音楽ならオッサンになってもできるかも、って。

安宅:今日初めて(荒川が)話すのを聞いてると、自問自答と論理的な考えが合わさってて、何かカッコ良いっすね。

荒川:それはもしかしたら『フルタの方程式』のおかげかもしれないです(一同笑)。

12月26日は新宿LOFTでお会いしましょう!

──偶然にも野球という共通項で話が止まりませんが、続きは12月26日にお願いします。ということで、皆さんは『年末大感謝祭』が年内最後のライブでしょうか?

全員:そうですね。

▲当日のタイムテーブル(クリックすると拡大します)

──では最後に、2023年のライブ納めとなる『年末大感謝祭』への意気込みや来年の抱負等、お一人ずつ聞かせてください。

安宅:バンドとしては今年、久々にアルバムを出しまして(2nd『彼は紫陽花の行方』/11月リリース)ワンマンライブもある。それを経ての新宿LOFTでこのメンツなので、今年一番のライブができるはずだしそうしたい。というのと、年齢的にもペースを考え始めている面がありまして、できれば来年は、いちソングライターとしてはちゃんと自分が好きな曲を、僕が愛を持っている状態で世の中に出す。反響を問わず、もうちょっと自分と向き合って我儘にやるべきだとは思ってますね。daisanseiというバンドとしては、続いていくだろうけど変革がありそうな気がしていて。タロット占いをしたんですけど“180度変わる”って出たので何か起きるんだろうな、でもそうだとしてもそれを受け入れつつ続けていこうと思ってますね。来年の今頃はこの結果発表ができる(笑)と思っております。

池澤:Ezoshika Gourmet Clubはこの4年間、“年内最後のライブは絶対に良いライブができない”というジンクスがありまして(笑)。5年目の今年はそれを覆そうということで、この日は気合を入れて向かいたいですね。12月22日に下北沢ERAでワンマンライブがあって、そこで4曲入りのEP『YORU.E.P』を発売するんですけど、今年はフリーになってこれまでサポートしてもらっていたギタリストが加入して4人になって。今年は準備期間として来年は今年蓄えたものを出しつつ、より自分たちにしかない部分をもっと前面に分かりやすく、何だったらバンド名も変わっちゃうぐらいに押し出していきたいなと思ってます。

安宅:(今年リリースの)「おいッ!」っていう曲、あの曲をライブで見てからずーっと残ってる。

池澤:(ZOOM回線が途切れて)ヤバい、何言ってるか全然聞こえないです!

安宅:一番良いこと言ってるときに何でだよ、おい!!(一同笑)

池澤:ちゃんと聞こえなかったんで、続きは26日にお願いします(笑)。「おいッ!」は、今までの“楽しい方へ”みたいな曲から一転してトゲのあることをやってみよう、って自分たちの活動に対する不満とかを詰めた曲で。その思いは一番、エネルギーになるのかなって思ってます。

荒川:僕は2018年からSPRINGMANを3ピースバンドで始めて、2022年にソロプロジェクトになって。2023年は人生の中で一番、曲をリリースした年でした。事務所がお尻を叩いてくれたおかげで“こだわりと納期”というものを意識して、こだわりが勝てたときと納期に負けたときのどちらも感じた、そんな1年でした。また(考えが)いろいろと変わるかもしれないんですが、ライブ作りも音源作りにしても当たり前のことを当たり前にやって来て、振り返るといい子ちゃんでやってこれた感覚なんですけど、当たり前のことを当たり前にやるだけだと興味が薄れるものなんじゃないかな、と思ったんですよね。もともと反旗を翻して噛み付いたりするほうが性に合ってたのに、当たり前のことができる人に育つことを選んで…ないんだけど、反旗を翻すことを思い出して。ホールステージに立たせてもらえる意味みたいなのをさっき喋ったんですけど、まずは一旦、そこでちゃんとできるようにして。それからどうやったら、失礼を越して面白くできるかなというのを考える。生意気さを忘れないようにっていう気持ちで今は、26日のライブをやりたいなと思ってます。ミュージシャンになったからには、僕が生意気でなければ誰が生意気をやるんだって思ってますので。そうじゃないと俺が楽しくないし、俺が楽しくないと誰も楽しませられないのではないかと思ってるし、心から音楽って楽しいと思わせるためには自分も楽しんで正直にならなくてはと感じ出している今です。それが来年の課題にもなってくるだろうと思ってます。

──1組ごとにもっと突っ込んでいきたいお話でした。来年はそれぞれにインタビューできたらと思いましたし、まずは『年末大感謝祭』を楽しみにしていますね。

樋口:私もいろいろと聞かせてもらって、年末がとても楽しみになりました。あとはこの日に向けて私たちのほうでもしっかりと準備をしていきますね。体調などを崩さずに備えてもらえたらと思います。では当日、よろしくお願いします!

全員:よろしくお願いします!

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