兵庫にある国内現役最古の木造灯台、津波・高潮対策に伴い対岸に移設完了 再点灯は来年3月末以降に

石積み基壇の上に再設置される今津灯台の木造部=西宮市今津真砂町

 兵庫県西宮市の今津港にある現役最古の木造灯台で、対岸への移設作業が進められていた「今津灯台」が19日、正式な移設先に再設置された。約25メートル南西の仮置き場からクレーンでつり上げ、石の基壇に据えられた。来年3月末か4月上旬ごろ再点灯され、引き続き航路標識として使われる。(山岸洋介)

 今津灯台は市内の酒造会社「大関」を営む長部家が1810年に建て、現存する構造物は48年後に再建された。津波・高潮の対策工事に伴って対岸まで約160メートル移動させることになり、今年9月にクレーンと台船で仮置き場まで運ばれた。

 基壇は底面が約3.5メートル四方で、高さ約1.6メートル。91個の石に一つ一つ番号を振ってから解体し、移設先で全く同じように石積みを復元した。灯台の木造部を基壇に固定する4本の石柱(長さ約2.5メートル)も3Dスキャナーで測量し、位置や傾きを再現している。

 一方、基壇内部には石柱を支える細かい石のほか、新たに鉄筋コンクリートを施し、外観はそのままに耐震性を向上させている。

 再設置は11月上旬の予定だったが、基壇をいったん解体する時に、石柱の下から想定していない石の基礎が見つかり、内部構造を調べていたため、ずれ込んだ。つり上げ作業は午前8時ごろ始まり、約2時間で順調に終了した。

 大関の担当者は「丈夫な構造が分かり、先人の知恵を感じる。外観は寸分たがわず復元され、文化財の価値を保ちつつ地震にも強くなった。次の100年も港を照らせる」と語った。県尼崎港管理事務所の永田徹課長補佐は「慎重に作業し、無事にヤマ場を越えられた」と安堵した。

 灯台は年明けから側面の「はかま板」を取り付け、2月中旬ごろ元の姿になる予定。県は周辺を公園(340平方メートル)として整備する。再点灯も当初は2月初旬の見込みだったが、2カ月近くずれ込む。

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