不法滞在者の本国送還と不法滞在狙いの外国人を入国させないための仕組みづくり|和田政宗 今年6月に入管法(出入国管理及び難民認定法)が改正された。改正を受けた難民審査の工程表作成を出入国在留管理庁(入管庁)に要請してきたが、先週その回答があった。今回は、不法滞在者や不法滞在での就労等を狙う外国人をいかに減らしていくか、取り組みの詳細について記していく。(写真提供/時事)

重要なのは難民審査の迅速化

今年の入管法改正は一部野党の根強い反対があり、参院法務委員会の採決においては、暴れた野党議員が自民党議員にけがをさせるという事件も発生した。

この改正の主要部分は、これまで無制限に可能だった難民申請を、原則2回までに制限するというものである。3回目の申請も可能だが、3回目以降の申請者については「相当な理由」を示さなければ本国への送還が可能になる。

こうした改正とともに、不法滞在者を減らすために重要なのは、難民審査の迅速化である。難民ではないのに難民だと称して日本への滞在を図ろうとする外国人が存在し、難民審査を長期化させている。昨年の難民審査の申請者数は3772人で、これに加え、難民不認定に対する審査請求者数は4461人となっている。

現在9860人が未処理となって積みあがっており、難民審査は1回目の審査が終わるまで平均で約3年かかっている。難民審査の迅速化を私は繰り返し要請してきたが、入管庁からは2年後までに6ヶ月に短縮する計画が示された。

そして、3回の申請が行われたとしても計1年以内に処理すると回答があった。私からは、さらなる前倒しを要請した。なお、迅速化がなされても厳格な審査は変わらない。

このようにして、不法滞在者の本国送還を強化していくが、不法滞在を狙う人物を入国させないための施策も強化していく。

(写真提供/時事)

一部を切り取った私への誤った言説

まず、来年度中に導入されるのが、「相互事前旅客情報システム(iAPI)」である。これは、我が国に渡航予定の外国人が海外の空港を出発する前の搭乗手続き時に、航空会社から入管庁に対し旅客情報を送信させ、入管庁が保有する要注意人物情報と照合して回答、航空会社が要注意外国人の搭乗拒否を可能とするものである。

さらに、「電子渡航認証システム(ESTA)」導入の要請に対しても入管庁から確約の回答があった。ESTAは米国などで導入されており、観光目的でのビザ免除国が主対象となる。

ESTAは、我が国への入国を希望する外国人について、入国目的や滞在先等の情報を申告させ、事前審査を行う。問題のない人物に対しては渡航認証を与え、問題のある人物は不認証とした上、ビザ申請を促す。渡航認証の所持を上陸の条件とし、認証を所持しない人物は原則として上陸を拒否する。

「相互事前旅客情報システム(iAPI)」と組み合わせることで、不法滞在を狙う人物や上陸拒否事由該当者といった外国人の入国を未然に防ぐことが可能となる。

このように、私は入管庁と綿密にやり取りをし、不法滞在者を減らし、不法滞在狙いの外国人を入国させないための仕組みづくりをしてきたが、一部を切り取った私への誤った言説が流布されている。当初は、真正面から反論してきたが、反論しても論点をずらしたり、意図的な決めつけによる拡散が行われている。

私は正確な情報を発信していくので、皆様におかれては客観的かつ冷静に判断をしていただければと思う。

声高に問題を叫ぶだけでは何も解決しない

補完的保護対象者(準難民)制度導入についても、誤解が広がっている。この制度は、政府が今年の入管法改正のなかに取り入れたものであるが、ウクライナの紛争避難者やウイグルの方々などを念頭に置いた制度である。

であるので、不法滞在狙いの外国人が「政治的弾圧を受けた」「紛争避難民」であると主張したことをもって、準難民とされることはない。難民審査と同様、厳格な審査が行われる。

なお、「政治的弾圧を受け政治犯とされたウイグル人やミャンマー人等も準難民の対象となる」と私が発信したところ、ある大学の准教授の方が、こうした方々は難民対象であり誤りだと指摘しているが、私は繰り返し入管庁に確認した上で発信したものである。

こうした方々は、難民として認定される場合もあるし準難民として認定される場合もあるので、この准教授の方は入管庁に確認していただけたらと思う。この方は、「入管法審議中に国会参考人として意見を述べた」と発信しているが、国会での参考人質疑でこの方は、現状の難民認定基準を緩めるべきとの方向性でお話をされている。

行政の運用と、学者の考えは異なる場合があり、法令に基づき行政がどのように運用するか確認することが重要であり、確認して私は発信した。

我が国における難民審査が緩められることはあってはならず、これまで述べてきた取り組みが進めば、不法滞在での違法就労やトラブルなどの根本的減少に繋がっていく。そして、これらの取り組みを進めるためには入管行政の体制強化が必要である。人員増や新システムの導入には予算が必要となる。

私は率先して予算獲得にも行動していく。声高に問題を叫ぶだけでは何も解決しない。行動によって解決を図っていく。

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和田政宗

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