【リニア】静岡・川勝知事が再び「部分開業論」 過去に事実上撤回も…『再燃』のワケ

リニア新幹線に関し、静岡県の川勝平太知事が「部分開業」に言及しました。川勝知事は以前も部分開業を提案しましたが、事実上撤回しています。再び、「部分開業」に言及したのは、なぜなのでしょうか。

川勝知事「開通できる部分から開通させる」

静岡・川勝平太知事(12日):「開通できる状況になった部分から開通させる」

JR東海が2027年の開業を目標としていたリニア新幹線。しかし、静岡県が水問題などを理由に南アルプスでの着工を認めていないことから、「2027年」としていた開業時期は「2027年“以降”」と改められました。そんなリニアをめぐって、再び開業時期に影響するような動きが…。

10月 「リニアの解決策出せる」

静岡・川勝平太知事(10月):「これ大きなビッグイフですけど、(私が)JR東海の意思決定者であれば、川勝と膝を突き合わせて、その場で解決策を出せる自信はあります」

10月、川勝知事がリニア新幹線の「解決策を出せる」としたこの発言。これを受け、県議会最大会派の自民改革会議が、現在開かれている県議会で厳しく追及しています。

自民改革会議 中田次城県議(12日):「解決策とは何なんだ。十分な答えをしていると思いますか?」

静岡・川勝平太知事(12日):「意思決定者は私ではありません。従って私がそれ(解決策)を言うのは失礼にあたる、というか資格がない」
「失礼じゃないよ」の声

10月には「自信」をのぞかせていた川勝知事ですが、県議会ではその解決策についての言及をさけました。ところが、議長から再答弁を求められると…。

静岡・川勝平太知事:「開通できる状況になった部分から開通させるということが、営業実績となり解決策になると考えている」
「どこが解決策なんだよ」の声

この知事による「部分開業」の発言が後日、委員会でも尾を引くことに。

県の担当者も「県の公式見解」

くらし環境委員会 公明 蓮池章平委員(14日):「解決策が『部分開業』という認識は、県の統一見解と認識して良いのか?」

これに対し県の担当者は…。

県の担当者(14日):「知事自身の考えをもとに答弁をしたものであり、組織としてこれまで議論したことはない。しかしながら、議会で答弁したというものですので、これは県の公式見解であると考えている」

つまり、議会の答弁は川勝知事個人の考えだったものの、「部分開業」は県の公式見解になったということのようです。さらに、知事のこの発言についても…。

「いったんとどまって考え直す必要がある」

静岡・川勝平太知事(6日):「いったんとどまって改めて考え直す必要がある」

これについては…。

県の担当者:「今、工事を止めてもう一度考え直すということではなく、環境の変化を踏まえたうえで、それに対応することを考える必要があるのではないか、ということを言ったにすぎない」

あくまで工事を止める意図はないということのようです。

過去にも「部分開業論」唱えたが…沿線知事から反発

今回の一件で重要なキーワードとなる「部分開業」。実は、話題になるのは今回が初めてではありません。さかのぼること去年8月。

静岡・川勝平太知事(去年8月):「とにかく、できるところからやっていくこと以外に建設を促進する方法はないだろう。(神奈川県相模原市の)橋本あたりから、(山梨県)甲府に行き交うことが一種の暫定開業として唯一可能な場所である」

当時、川勝知事は会見の中で神奈川と山梨県の間を先に開業させる「部分開業論」を唱えたのです。ただ、この発言はリニアの沿線知事から強い反発を生みました。

愛知県 大村秀章知事(去年8月):「部分開業で事業として成り立つかというと、それは成り立たない」

神奈川県 黒岩祐治知事(去年9月):「リニアに乗ってみたいと思う人は乗るかもしれないが、そういう遊園地の電車ではない」

またJR東海も知事の“持論”を完全否定。

JR東海 金子慎社長(当時)(去年8月):「そういう(部分開業の)選択肢は全くない」

リニアに試乗後『持論』に変化が

部分開業という持論を展開した3カ月後の去年11月、川勝知事は山梨県内の実験線でリニア新幹線に試乗。

JR東海 金子慎社長(当時):「時速500キロになりました」

川勝知事:「全然、普通に動けますね。たいしたもんだ」

最高時速500キロの世界を体験した川勝知事。この試乗後、“持論”に変化が…。

川勝知事(去年11月 藤枝市)
「(山梨県)都留の実験センターのすぐそばに高さ10mぐらいの変電所があって、それが実は電気を送っている。目下のところ今、変電所は変電センターはこの実験センターに1つしかない。東京~神奈川どころか、甲府(山梨)~神奈川間も変電所ができていないので、それ(部分開業)が出来ないと分かった」

車両に電力を送る変電所の設置に時間がかかることから部分開業はできないとして持論を事実上撤回しました。

「社長が代わってJRの考え変わる可能性も」

あれから1年以上が経過し、再燃した「部分開業」論。川勝知事は13日の会見で記者から問われると…。

川勝知事(13日)
「(当時のJR東海社長が)変電所をつくる意思はない。予定もないといったので出来ないと考えた。変電所がひとつできれば動かせるということは、皆さんご存じなわけです。それをやるかやらないかは、会社の意思ではないか。今度は社長が代わった。丹羽さんになりましたので、(JR東海の考えが)変わる可能性がある」

JR東海は変電所が1つ完成しても、リニアの運行は出来ないとしていますが、川勝知事は自身の考えを展開。さらに15日、リニアの開業が2027年以降と表現が改められたことに対し、川勝知事は自身の考えを改めて念押ししました。

川勝知事コメントより
「2037年の全線開通を一刻も早く実現するため、開通できる状態 になったところから開通をしていくべきである」

県内では大井川の水や環境保全に不安の声があがるリニア問題ですが、県外目線では沿線県やJR東海と川勝知事がどのようなバランスをとるのか、来年も注目がされそうです。

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