「証拠隠滅されない?」検察が家宅捜査を安倍派に“予告”も影響がないワケ…過去には“ドリル優子”事件も

(写真:時事通信)

自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、東京地検特捜部は12月19日、政治資金規正法違反の疑いで安倍派と二階派の事務所に強制捜査に入った。

去年までの5年間で安倍派はおよそ5億円、二階派は1億円を超えるパーティー収入が政治資金収支報告書に記載せずキックバックされた疑いがあるという。

「特捜部は、すでにそれぞれの派閥の事務担当者や、安倍派の議員本人などから任意で話を聞いていますが、全容解明には、強制捜査が必要と判断したものとみられます。しかし、“19日”と日付まで明らかになった状態で特捜部が家宅捜索に入る方針を固めたことが事前に報じられたことで、小渕優子氏の“ドリル事件”を思い出し、証拠隠滅を危惧する声もSNS上で上がりました」(政治部記者)

裏金を捻出する目的で政治資金収支報告書に巨額の虚偽記載をし、元秘書2人が有罪判決を受けた9年前の「ドリル事件」。検察の捜索前に、事務所のパソコンのハードディスクが電気ドリルで破壊されていたため、小渕氏は今でも“ドリル優子”の汚名をそそげていない。

実業家のひろゆき氏もX(旧Twitter)で次のように疑問を呈した。

《安倍派・二階派事務所、きょうにも強制捜査へ 東京地検特捜部が方針固める。強制捜査の予告って、「捜査が入るので、今のうちに証拠はドリルでぶっ壊しておいてね」という証拠隠滅の手伝いになると思うけど、なんで予告するんだろう?》

検察の捜査に詳しい、大手メディアの社会部キャップは、今回の“事前予告”について次のように解説する。

「今回の件は、事前に会計責任者などからすでに話を聞いて、資料の任意提出も受けているので、19日の強制捜査は形式的なものです。主要な資料は結構前にすでに任意で出させてるらしいので、事前に捜査日時が判明しても、もうダメージはないです。早い段階で、清和会の会計責任者から資料を持ってこさせています」

すでに行われている任意の捜査の際は、“事前予告”があったわけではないという。

「昔、ドリル事件がありましたけど、実際立件されるのは事務員みたいな会計責任者です。証拠隠滅すると結構まずいことはわかっている。結局、派閥の指示で上からやらされてるので、下も自分が証拠隠滅しても全然意味がないっていうか、要は“指示された通りやってただけです”ってことで、今回は素直に捜査に協力していたみたいです」

つまり、ひろゆき氏も懸念する捜査の“予告”は、今後の行方には影響はないということのようだ。

「収支報告書はほぼオープン情報なので、そことの突き合わせはもう隠しようがない。あとは、具体的にメールとか派閥でメモ作ったかどうかっていう話は、おそらく最初に出させているので、あまりダメージはないでしょう。19日からの強制捜査は、どっちかというと聴取の方です。

証拠物とかは、事実上もう押収してあるので、追加で押収するものもあるでしょうけど、“強制捜査で押収”って形にしないと、目録上は任意だと後で“返してくれ”と物理的には言えてしまうので、そこからこれまであるやつも強制にして押収という形にするわけです。なので形式的な捜索という感じですね」

とはいえ、議員まで立件するのは難しいという。

「明確に指示してるメールとか、そういうものが出てくれば話は別ですが、議員本人が共謀していたことが立証できないと難しい。今回は不記載のキックバックが3000万円以上の人が3人ぐらいいるようです。その3人は金額が多いことで悪質だということで、去年、薗浦健太郎が同じようなやり方で、3000万円で略式起訴され公民権停止になったので、同程度にはなるんじゃないかといわれていますが、逮捕まではおそらくない見通しです」

トカゲの尻尾切りで終わらないように、検察の本気に期待したい。

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