探索×2Dスクロール×弾幕シューティング!探索や謎解きにシンプルかつ爽快なアクションなどが合わさった「TEVI」をレビュー

2023年11月30日よりNintendo SwitchおよびSteam向けに配信中の2Dアクションゲーム「TEVI」。今回は本作のSteam版に触れる機会を得たので、そのレビューをお届けしよう。

■さまざまな種族が暮らすアズ大陸を舞台に、テビィはアストラルギアを集める旅へ

本作では、人族や獣人族、魔械族など、さまざまな種族が独自の社会で暮らしている。なかでも人族は“マナ”の操作に長けており、その力を使って魔法と機械が融合した高度な文明を築き上げていた。

しかし“魔械族の反乱”が起こると、人族の社会は瞬く間に崩壊。本作の舞台であるアズ大陸全土を巻き込む大乱に発展し、その後は人族や獣人族が協力し合うことでこれを鎮圧する。

それから30年後。膨大なマナを内包している“アストラルギア”という古代遺物を求めて、主人公のテビィはゴールドハンド団のアジトに潜入し、そこで魔械族の天使・セリアや悪魔のセーブルと出会う……というのが本作のあらすじだ。

キャラクターたちはドット絵やアニメ調のグラフィックで表現されており、全体的に雰囲気は温かくてとっつきやすかった。うさ耳姿のテビィだけでなく、天使のセリアは白を基調とした神々しい姿で、悪魔のセーブルはコウモリを思わせる翼に加えて、全体的に黒い服をまとっている。種族や見た目が噛み合っているので、初めて見た時の印象から名前や特徴を覚えやすい。

さらに声優にも力を入れており、主人公役のLynnさんを始め、釘宮理恵さんに杉田智和さん、子安武人さんなど、名だたるメンバーが参加している。彼らの熱演も相まって、キャラクターへの愛着も湧きやすかった。

本作は台湾のデベロッパーであるCreSpiritが手がけているのだが、翻訳の出来がとてもいいのも特徴だろう。今回はレビューにあたって20時間ほど遊んだが、熟語だらけの難解で機械的な言い回しはなく、書き言葉と話し言葉のバランスが良い。

むしろキャラクターによっては、“大草原”などのスラングを使ったり、べらんめえ口調でまくし立ててきたりと、出てくるセリフはことごとく自然な日本語だ。翻訳の質は完璧といえる。

■新しい力を手に入れるたびに戻るのが楽しくなる探索

本作の核ともいえる要素が探索。工業都市の“モロース”や、いくつもの浮島で構成された“ヴァルハラ”、地下深くに建設された快楽の都市“タルタロス”など、「TEVI」ではさまざまなフィールドが登場する。場所によって景色も出てくる敵も大きく変化するので、とくにあてもなく散策しているだけでも楽しい。

各地のアストラルギアを集めるのがメインストーリーの大きな目的だが、その順番はある程度プレイヤーの判断に委ねられている。ひたすら上空を目指してもいいし、逆に地下に潜ってもいい。なかには専用の装備がなくては進めない場所もあるので、一概に自由という訳ではないのだが、それでも攻略の幅は広い。

各マップはさまざまなルートでつながっており、未知の場所を偶然発見するのは珍しくもない。そして、見つけたステージを探索しているうちに、本来の目的を忘れるまでがお約束だ。各地には目に見えないが爆弾で壊せるブロック、近づくと露わになる隠し通路などが満載なので、しらみつぶしに探っていると時間がみるみる過ぎていく。

主人公のテビィには45種類のアイテムが用意されており、なかにはより高くジャンプできたり、スライディングが可能になるブーツも存在する。初めて来たときは届かなかった高所でも、特定のブーツがあれば跳び越えられる場合も多い。ストーリーを進めるのと同じくらい、アイテム集めも重要だ。

アイテムを手に入れるたび、自分がこれまで通ってきたステージや通路が思い起こされる。それまで行けなかった、あるいはわからなかった謎と新しいアイテムを照らし合わせたことがきっかけで状況が進展すると、達成感や快感がどっと湧いて、これが段々クセになってくる。

閃かなかったときは確認も含めて探索済みのステージに戻るのだが、ほとんど時間の無駄だったとしても、ひとつでもいいから新しい発見を求めて細かいところも確かめたくなる。

各ステージは瞬時に行き来できるワープポイントで結ばれているため、ワープポイントまでの道さえ覚えてしまえば往復はかんたん。テビィの移動速度を速めるアイテムがあれば、探索も戦闘もテンポがどんどん速くなる。アイテムを駆使した探索や謎解きと、それをプレイヤーに促すテンポの良さが見事だった。

さらに本作は未知のエリアを発見したり、探索を進めることによってテビィのレベルが上がる仕組みになっており、テビィの強化と探索が一体化している。探索が重要な本作だからこそできる仕様だろう。

ただ、足場が見にくい点だけは惜しい。とくに登っていく際は足場を伝うわけだが、そのための足掛かりとなるところが背景に溶け込んでおり、どれが足場になるのかがわかりにくかった。とはいえ、背景のような部分にも足場があるとわかれば問題ないので、本作を始めて数時間もすれば慣れてくるだろう。

場所によってはミニゲームを楽しめる

■力押しもできるが度が過ぎると追い詰められるバトル

戦闘では、テビィはダガーやスパナといった近接武器をメインに、セリアやセーブルたちの力を使って遠距離攻撃をくり出す“オービター”を適宜織り交ぜていく。

近接攻撃のコンボはいずれもすばやく、全体的なバトルスピードもかなり速い。敵の懐に飛び込んでコンボを叩き込み、反撃されそうになったら距離を取ってオービターで攻撃するなど、絶え間ない攻撃が可能で爽快感がある。

攻撃を受けている敵は、体の縁取りの色で状態が異なる。色は白→黄→赤の順に変化していき、赤になって少しすると敵は反撃をくり出す。つまり、赤になったらすぐに離れることで、前もって相手の攻撃を避けられるわけだ。

さらに、攻撃が当たった敵は当たり判定が一時的に消える。勢いあまって敵に接触しても、そのままコンボをつなげてしまえばこちらはダメージを受けずに済む。力押しのしやすいシステムになってはいるが、だからといって攻撃し過ぎると、縁取りが赤くなった敵から手痛い反撃を受けてしまう。あと一撃だけでも、という誘惑をいかに断ち切れるかが重要になっている。

オービターは離れた敵を攻撃できるが、MPを100消費して放つ“チャージショット”以外は、そこまで威力は高くない。せいぜいけん制が良いところで、ザコ敵には十分だがボス戦では力不足だろう。

MPは自然回復するが、バトル中に限ってその速度が著しく加速し、数秒待てばチャージが完了する。ボス戦でオービターを使うなら、なるべくチャージショットを使いたい。

“シジル”のカスタマイズも特徴だ。シジルとはアクセサリーみたいなもので、装備するとシジルの応じた力をテビィに追加する。コンボランクを上げやすくする、近接攻撃の速度を上げる、チャージショットの威力を強化するなど、バリエーションは非常に多い。今回のプレイだけで75個は手に入った。

シジルはフィールドで見つけるほかに、ショップで買うこともできる。しっかり探索すればシジルは序盤から見つけられるし、お金が隠されたブロックを壊していれば、ショップでシジルを買うのにも困らない。

シジルを装備するには“EP”を使うのだが、EPはレベルが上がったり上限を上げる専用のポーションを手に入れれば増えていく。ひとつのシジルを付けるのに必要なBPは0から9までと開きがあるが、探索さえしていればEPはどんどん伸びるので、シジルを装備するうえでEPの現在量に不満を抱くことはほとんどなかった。

あくまで筆者の意見だが、シジルはできるだけ多く付けるのが基本で、上限の関係で付けられない分には、自分のプレイスタイルに合わない、あるいは絶対に要らないといったタイプを回すという感覚だった。

アニメ調やドット絵のかわいらしいキャラクターたちや、彼らの声を担当する声優陣の豪華さ。アイテムを駆使してギミックや謎を突破していく重厚な探索要素に、力押しとその引き時の重要さを兼ね備えたバトルなど、本作はあらゆる面で力が入っているのを感じられる作品だった。2Dの探索やアクションゲームが好きな人には、とくにオススメできる一作だ。

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