高山Pに聞くenza対応ゲーム「シャニマス」の今後やブランドとしての取り組み【シャニマス連続インタビュー第3回】

ゲームにとどまらず、多方面での展開を見せる「アイドルマスター シャイニーカラーズ」の連続インタビュー企画。第3回は5.5周年を迎えたenza対応ゲームを中心に、ブランドとしての取り組みの数々をプロデューサーの高山祐介氏に伺った。

「アイドルマスター シャイニーカラーズ Song for Prism」(以下、「シャニソン」)のインタビューに続くかたちで、サービス5.5周年を迎えたenza対応ゲーム「アイドルマスター シャイニーカラーズ」(以下、enza対応版)やブランド全体に関するインタビューを実施。

サービス開始時から関わるプロデューサーの高山祐介氏だからこその幅広い話題に言及した内容となっているので、ぜひチェックしてもらえれば幸いだ。

高山祐介氏

インタビュー・編集:TOKEN
文:胃の上心臓

■5.5年におよぶ運営はプロデューサーの支えあってこそ

――enza対応版は5.5周年を迎えましたが、ここまで続けられている要因についてはどのように考えられていますか?

高山氏:2018年4月24日にサービスを開始してからもう5.5年が経過したというと、長いような思いもありつつ、あっという間だった気もしつつ、不思議な気分です。

ただひとつ確かなのは、今たくさんのソーシャルゲームのタイトルがある中で、ここまで運営を続けられたのは本当にプロデューサーのみなさんがゲームをプレイして支えてくださるからだと思っています。そのおかげで5.5年間運営できているので、そこにはもう感謝しかありません。

――プロデューサーのみなさんと向き合っていく中で、大きな手ごたえを感じた部分と反省の大きかった部分をそれぞれお聞かせください。

高山氏:この5.5年間を通して大小問わず、ゲームのコンテンツ改良やアップデート、機能の追加というところは多数実施してきました。その中で、やはり根底にあるのはプロデューサーのみなさんの反応です。

印象的な部分で言うと、2018年4月にリリースしてすぐにシナリオイベント「Light up the illumination」を開催したのですが、報酬設計がシビアに設定されており、リリース初月のためイレギュラーで開催期間が短かったことと、リリース当初のプロデュースの難易度の高さもあり、報酬の獲得のためにかなり頑張らないといけないバランスでした。プレイし始めたばかりの方にはつらいイベントになってしまった記憶があります。

我々開発としてはプレイに慣れてしまっている部分があって、そういった感覚で考えてしまった結果シビアなバランスでご提供をしてしまったのですが、やはりそこにプロデューサーのみなさんの生の反応、報酬を獲得するまでの苦労であったり、そういったご意見をいただいて素直に受け止め、開発知見としていくことが大切だと、実感した瞬間でもありました。

コンテンツ追加やシステムの拡張も同様で、当時はプロデュースシナリオ「W.I.N.G.」の難易度が比較的高く、それをマイルドにするためにプロデュースアイテムのシステムを追加したり、流行雑誌での流行変化、コンティニューチケットの追加、難易度概念の実装などを徐々に行ってきました。常々プロデューサーのみなさんのプレイ動向というか、今気にされているポイントはどこなのかをしっかり捉えて、改善策を模索し、もちろんすべての要素を同時に直すことはできないのですが、ひとつひとつ小さなところも含めて取り組めたのかなという気はしています。

手ごたえのあった部分はシナリオ表現や2D表現の部分です。シナリオについては、ソーシャルゲームとしては比較的しっかりとしたボリュームでアイドルひとりひとりを表現している構成でした。そのボリューム感や、新たなアイドル達の個性を受け入れていただけるか心配していた部分はあるのですが、結果的には好意的に受け止めてくださって。そこからストレイライトという、初期から登場している16名のアイドルとはまた違う、新たな個性のあるアイドルたちを追加した時も、すごく好意的に受け入れてくださった印象です。

プロデューサーのみなさんが好意的に評価をいただけることで、我々も表現幅を広げることができ、徐々にやれる事が増えてきました。シナリオ上では、ポジティブな表現だけではなく、時にネガティブな表現も通じてアイドルたちの表現を行ってきましたが、そういった展開も踏まえて最後はポジティブに転じるようなストーリーを描くことができたり、アイドルではなく周辺の登場人物によって間接的にアイドルを間接的に描き出すような特殊な構成のストーリーを描くことを許していただけたり、そういった中で表現の幅を広げてこられた5.5年間だったなと思っています。

――サービス開始日と今を比べるとゲーム内容も大きく変わってきていますが、今後の機能追加などのイメージを話せる範囲でお願いします。

高山氏:アップデートやコンテンツ追加の考え方について、僕の中で大きく分けて2つの軸があると思っています。ひとつはアイドルの魅力軸、もうひとつはゲームプレイ軸です。

アイドルの魅力という点を具体的にお話すると、シナリオ実装をはじめ、ホーム画面での掛け合いボイスの追加や信頼度向上によるボイスの追加、ゲームプレイ報酬としてのアイドルたちの個別衣装の追加など、アイドルの魅力を感じられる要素の拡充があります。アイドルの魅力をより感じたいという方々に向けて、新たにアップデートを行っています。

一方で、アイドルの魅力という部分だけでなく、純粋にプロデュースの腕を磨き、強力なフェスアイドルの育成であったり、グレードフェス等のエンドコンテンツを意識されている方もいらっしゃいます。そうした方に向けて用意したのがマスターズフェスになります。ゲームのサイクルでいえば、プロデュース、つまり育成が手段だとするとその目標であるグレードフェスやマスターズフェスは、育成後のフェスアイドルの活躍できる場になっていますので、フェスでどういった活躍をするかを見越して育成いただいたり、新たな体験のマスフェスを楽しんでいただくなど、プロデュースとその先のコンテンツを楽しんでいただくのがゲームプレイ軸のアップデートになっています。

それぞれ、シャニマスというゲームに求めることが異なるプロデューサーのみなさんにに向けて、どちらかに偏りすぎることなく、今後もアップデートしていきたいなと考えています。

■enza対応版へのコメティック実装の経緯、今後の運営方針を聞く

――「シャニソン」と同様、enza対応版にコメティックが登場することになりましたが、enza対応版への実装自体は当初から考えられていたのでしょうか?

高山氏:コメティックに関しては、12月11日に鈴木羽那と郁田はるきが実装されてプロデュース可能になりました。同時に羽那とはるきが登場する越境のシナリオイベント「ロード・トゥ・ハッピーホリデー!」があり、今後コメティックのシナリオイベントを開催する予定もございます。

「シャニソン」のインタビューでもお話しましたが、両タイトルが別軸に属している訳ではないので、当然「シャニマス」においても、羽那やはるきは事務所に所属しています。片方にはコメティックがいてもう片方にはいない、そういう分岐した世界ではないので、コメティックを誕生させた時点で両方のタイトルに登場させることは考えていました。

ただ、両方同じ時期に出てもプロデューサーさんのプレイ負荷が高まったりするので、「シャニソン」で結成の物語を描いて、enza対応版のほうではこれまでもご提供してきた冬のミックスイベント、コメティックのシナリオイベントと、ストーリーが続いていくかたちを取りました。連続してコメティック関連のストーリーを楽しんでいただけると思いますので、彼女たちのことを少しずつ知っていただけたら嬉しいです。

――enza対応版の今後や運営方針も話せる範囲でお願いします。

高山氏:enza対応版でいうと、現在は開催をさせていただいたマスターズフェスのアンケート結果をもとに、体験の改善を行ったり、コンテンツ面で言えば先日まで投票いただいていた「シャイニーPRオファー」によって選ばれたアイドルたちが歌唱する、豪華なアーティストさんによる楽曲制作などを行っていきます。

また、2024年4月の6周年に向けたアップデートも考えていて、そのタイミングで地上波放送されるTVアニメ「シャニアニ」とも何か連動した取り組みをし、アニメでアイドルたちを知った方にもシャニマスを楽しんでいただけるような準備をしていきたいと思っています。enza対応版も「シャニソン」も、TVアニメの放送という「シャニマス」というブランドの大きな流れの中で、どちらも一生懸命盛り上げてプロデューサーのみなさんに楽しんでいただきたいなと思っています。

――今は「S.T.E.P.」の展開が続いていますが、その先の展望もあるのでしょうか?

高山氏:シナリオ面においても、アイドルの魅力をお届けするという意味で引き続き新たな表現を考えていきます。今はまだ具体をお伝えできませんが、プロデューサーのみなさんが驚くようなものを開発やシナリオチームと相談していますので、楽しみにしていただければと思っています。その他、アイドル面やゲームシステム面でのアップデートは先ほどお伝えした通り、今後も広く「シャニマス」を楽しんでいただけるアップデートを考えていきます。

■「未来を選択する」というIPテーマを掲げた5周年の取り組み

――ライブ展開も活発になる中で、今年も周年ライブをはじめ多彩な演出が用意されていました。ゲームサイドとして、コンセプトの部分にはどのように関わっていくのでしょうか?

高山氏:「シャニマス」というブランド、IP全体として今年は何を表現していこうかというところを毎年決めています。5周年のタイミングでは「未来を選択する」というテーマを掲げていました。ゲーム、ライブ、その他様々なコンテンツの根底には同じテーマが流れています。

ですので、2023年3月の「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 5thLIVE If I_wings.」ではDAY1とDAY2での異なる未来の表現を、7月の「283PRODUCTION SOLO PERFORMANCE LIVE『我儘なまま』」ではそれぞれの未来を我儘に選択していくというストーリーをDAY1とDAY2で描きました。それに先立つのは「シャニマス」というブランドとして1年を通して何を表現したいかというテーマであり、それに基づいてゲーム側でも施策を考えていきます。

enza対応版で表現するなら「シチュエーションドラマを作ろう」のコンテンツであったり、「シャイニーPRオファー」でプロデューサーのみなさんにアイドルたちの未来を選択してもらうなど、今年はいわゆるUGC(※User Generated Contentsの略。ユーザーによって制作・生成されたコンテンツ)施策が多かったと思います。また、「シャニソン」でもプロデュースパートではひとつひとつの選択がアイドルの未来を作っていくという部分を、大事な体験にしています。それらはプロデューサーのみなさんが参加して未来を選択するという、IPテーマの表れにもなっています。

そういった意味でも、ご質問いただいたライブのコンセプトについてはIPテーマが先にあり、それをライブ演出に落とし込んでいくというのが制作の流れになっています。先ほど挙げた2つのライブはある程度特殊な演出だったこともあり、やりたいこと、伝えたいメッセージはまとまっていたものの、それを「ライブ」というかたちで届けられるかどうかはすごく悩みながら表現を模索した記憶があります。

逆に、2023年10月の「THE IDOLM@STER SHINY COLORS 5.5th Anniversary LIVE 星が見上げた空」はシンプルな構成だと思っていて、「シャニマス」で登場してきた楽曲を大まかに時系列を遡るように披露していき、最新であるコメティックから原点であるアニメの16人に繋がるようなストーリーを感じていただければ、とうのがコンセプトでした。ライブの翌週からは劇場先行上映が控えていましたので、ライブからアニメと、プロデューサーのみなさんにひと繋ぎで楽しんでいただけていたら嬉しいです。ですので、伝えたいメッセージや表現したいことによって、ライブの特殊性と言いますか、特徴や構成が大きく変わるのが「シャニマス」らしいかなと考えています。

――周年ライブは独特といいますか、IPのテーマを体現する難しさが毎回あるように思います。

高山氏:5thライブで印象的なエピソードとして、アーカイブのコメンタリー付きの配信を拝見した際、ライブがすでに終了しているのにも関わらずプロデューサーのみなさんが凄い勢いで感想や意見を語り合ってくださっていて、そこまでの熱量で語って頂けることに感動した記憶があります。良い・悪いではないですが、普段ですと本編終了後はすぐに番組を離れる方が多いので、終了後もコメントが飛び交うの光景はかなり驚きました。ライブに限らず、ゲームも、グッズも、コミックも、プロデューサーさんの生活の中でシャニマスを感じていただき、その全てを楽しみたい!と感じるようなコンテンツにしたいという想いは変わっておらず、その中でライブに関しては毎回何かを変え、楽曲を披露するだけに留まらず、何かを伝えたいと思っています。

――ゲーム外の取り組みもかなり見かける機会があるなと思っています。色々なケースが存在すると思うのですが、ブランド全体で大事にしている部分はありますか?

高山氏:ブランド全体としてゲームやアニメ、イベント、音楽、グッズなどさまざまなコンテンツを展開させていただいていますが、それぞれの根底にある部分は先ほどと同じで、プロデューサーのみなさんの生活動線の中に「シャニマス」や283プロのアイドルたちが居たら凄いことだなという想いです。

ゲームをする、というのはもちろん、街を歩いていたらアイドルたちの広告が目に入るとか、コンビニエンスストアに行ったらアイドルたちの商品があるとか。プロデューサーのみなさんの生活の中にアイドルたちがいる状態を実現したくて、そういった取り組みを各部署と相談して進めたり、さまざまな企業さんと相談させていただき、お取組みを行っています。

ゲームのプロモーション展開やアニメの劇場先行上映なども、リアルな映画館で公開してプロデューサーさんが集まるという体験をご提供したり、さまざまなメディアや媒体を通してプロデューサーのみなさんに「シャニマス」に触れていただけると嬉しいです。

■6周年は「シャニマス」をみんなで一緒に楽しみたい

――今後、これからenza対応版を遊ぼうと考えている方にはどのような施策を考えていますか?

高山氏:サービスの開始から5.5年経って、enza対応版を新規で始めたばかりの方が、すべてのコンテンツを理解してゲームプレイにスムーズに入っていただけるかというと、やはりコンテンツの物量が非常に多く、どこから手をつければいいのだろうと迷ってしまう部分もあるものと思います。

とはいえ、先ほど生活動線の話をしましたが、シャニマスというブランドに触れていただくきっかけが「シャニソン」でも「シャニアニ」でも構わないと思っています。そこでなんとなくでもアイドルユニットやアイドルの人となりを知ってもらって、それで例えば櫻木真乃が気になって、「シャニソン」や「シャニアニ」以上にもっと気になるなという場合に、enza対応版でこれまで紡いできたたくさんのストーリーに触れていただくなど、思い思いの順番で触れていただいて問題ないのかなと。

ただそのためには、enza対応版を始めていきなりプロデュースの難易度が高いと困ってしまうと思いますし、そこは新規で始めた方もある程度迷わず、スムーズにゲームプレイができるようなバランス調整やアイテム配布は常々やっていきたいと思っています。

――「シャニマス」は特に触れる接点があってリアルなアイドルの推し活をしているような感覚に近いのかなと思える部分があります。後はブランドとしての展望、IPとしての展望をぜひお聞かせください。

高山氏:今「シャニマス」ブランドとしては、直近だと「シャニソン」をリリースし、「シャニアニ」の劇場先行上映があったり、新しいコンテンツをご提供できているタイミングかなと思っています。

そんな中で、繰り返しお伝えしたとおりenza対応版もアップデートを続けて6周年をみなさんと一緒に楽しみたいですし、「シャニソン」についてもプロデューサーのみなさんのご意見をもとに運営や改善に力を入れていきます。加えて、2024年春からは「シャニアニ」のTV放送がはじまるタイミングですので、今までシャニマスの名前やアイドルのビジュアルだけは何となく知っている、はたまた全く聞いたこともない、といったどなたにでも触れていただきやすいですし、プロデューサーのみなさんも「アニメがあるから見てみなよ」と周囲の方におすすめしやすい、そんなタイミングにあると思っています。

だからこそプロデューサーのみなさんが安心して楽しめ、どなたにでもおすすめしやすいブランドやコンテンツに育てていきたいですし、新しく「シャニマス」に触れる方にも期待以上に楽しんでもらえるようなコンテンツを作り込んでいければと思います。それはenza対応版や「シャニソン」、楽曲、ライブ、グッズ、コミックなど、さまざまな展開を含めて、プロデューサーのみなさんの生活の中でアイドルたちを感じていただけるよう、どのコンテンツ展開も頑張っていきたいなというところに尽きます。

――最後に今回のインタビューを総括して一言いただけますでしょうか?

高山氏:前半は「シャニソン」、後半はenza対応版とブランド全体のお話をさせていただきました。「シャニソン」でいえば冒頭で申し上げた通りまだまだリリースしたばかりで、これからどんどんコンテンツを追加していったり、プロデューサーのみなさんの要望やご意見を踏まえつつ運営や改善に力を入れていくタイミングです。今後も、長く愛して、楽しんでいただけるよう開発一同努力してまいります。

そして、「シャニマス」というブランド全体として、これからとても大切なタイミングが来ると思っています。それはTVアニメ放送という大きな出来事があるのはもちろんなのですが、それをきっかけに、プロデューサーのみなさんがまだ「シャニマス」を知らない方に勧めたくなるような雰囲気であったり、新たに加わるプロデューサーのみなさんが楽しめるようなコンテンツをしっかり準備していく、といったことです。

それぞれのペースで楽しんでいただくのももちろんなのですが、同好の士といいますか、プロデューサーみんなで一緒に「シャニマス」を楽しめるようなブランドであったり、コンテンツ展開をしていければと思っています。何より我々自身もプロデューサーのみなさん、そして未来のプロデューサーのみなさんともに、一緒に「シャニマス」を楽しんでいきたいと思っています。引き続きプロデュースをよろしくお願いします。

――ありがとうございました。

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