BMWワークスドライバーから航空機のパイロットへ。異例の転身を表明した32歳のデイトナウイナー

 10年にわたってBMWでGTレースのドライバーを務めたジョン・エドワーズが、レース界からの引退を明らかにした。彼は今後、航空業界においてパイロットとしてのキャリアに集中するという。

 アメリカ・ケンタッキー州出身、32歳のエドワーズは、これまで積み重ねてきたレースキャリアの他にも、飛行機を操縦することにすでに強い関心を持っており、IMSAウェザーテック・スポーツカー選手権のイベントには、しばしば自分の飛行機で来場していた。

「飛行機に乗り始めたのは、単に飛行機が好きだったからだ。東海岸に引っ越してからここ8年ほど、自分で飛行機を操縦してレースに行くことを楽しんでいるんだ」とエドワーズは『Bimmer Life』に対し語った。

「もともとは、やれる限りレースに挑戦しようと思っていて、レースキャリアを終えてから、(パイロットに)転向するつもりだった」

「だけどここ数年、新型コロナウイルス感染症のために下火になっていた旅行需要が再び増加する中、パイロットが大幅に不足しているから、いまが適切な時期だと考え始めるようになったんだ」

「ドライバーとしての自分のキャリア後半がどうなるかを考えたとき、ドライバー不足ではなく、そこにはパイロット不足があると考えた。だから、移行するには良い時期だと思ったんだ」

 ヨーロッパとアメリカのシングルシーターを経て、エドワーズは2010年のグランダム・シリーズで北米のスポーツカーレースにデビュー。スピードソースのマツダRX-8を、のちにメルセデスAMGファクトリードライバーとなるアダム・クリストドゥロウとシェアした。

 その後、2013年にBMWとの関係を開始すると、ディルク・ミュラーとともにアメリカン・ル・マン・シリーズの6レースに参加。2014年には、ウェザーテック選手権の初年度にフルシーズン参戦を果たした。

 エドワーズは、ほぼチームRLLのみから参戦した9年間のウェザーテック選手権での活動の中で、2度の勝利と、21回の表彰台を獲得している。

 彼のもっとも注目を集めた勝利は、2020年1月に、アウグスト・ファーフス、イェッセ・クローン、チャズ・モスタートとともにデイトナ24時間レースのGTLMクラスを制したことだ。

2020年のデイトナ24時間レースGTLMクラスを制したBMW チームRLLのBMW M8 GTE

 BMW Z4 GTE、BMW M6 GT3、BMW M8 GTE、BMW M4 GT3をドライブしてきた彼はアメリカ国外のレースにも参戦しており、ニュルブルクリンク24時間や、スパ24時間にも頻繁に出場した。

 2023年シーズン、彼はGTワールドチャレンジ・アメリカでのSTレーシングのフル参戦プログラムと、IMSAミシュラン・エンデュランス・カップにおけるターナー・モータースポーツのプログラムを並行して行う予定だった。

 しかし家族の都合によりレースプログラムを縮小、GTワールドチャレンジ・アメリカではバージニアでの第4ラウンドを前に、ニール・バーヘイゲンへとシートを譲っていた。

 彼のBMWでの最後のレースは、2023年6月のIMSAワトキンス・グレン6時間レースとなった。このレースで彼はビル・オーバーレン、チャンドラー・ハルとともに、ターナーのBMW M4 GT3をドライブしてGTDプロクラスに出走した。

「ジョン・エドワーズは、2014年に北米でBMW MチームRLLの最初のフルシーズンに出場し、BMW Mワークスドライバーの中でもっとも長く活躍しているドライバーのひとりだ」とBMW Mモータースポーツ責任者のアンドレス・ルースは述べている。

「BMW Mモータースポーツを代表して、彼の長年にわたる忠誠心と素晴らしい協力に感謝したい。ジョン・エドワーズの職業上および個人的な将来が幸運であることを祈る。我々は間違いなく、この先も良好な関係で居続けるだろう」

ジョン・エドワーズのBMWでの最後のレースとなった2023年のIMSAワトキンス・グレン6時間

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