【袴田巌さん再審】5回目公判で検察側は“犯人だとする複数の事情”を説明…弁護団が反論(静岡地裁)

袴田巌さんの再審=やり直しの裁判の5回目の公判が静岡地裁で行われました。20日は、検察側が袴田さんが犯人である複数の事情について主張し、弁護団が反論しました。

(杉本 汐音 記者)

「5回目の公判に向け、弁護団らが静岡地裁に入っていきます」

2023年最後の公判となる袴田さんの第5回公判。20日朝、浜松市内で姉ひで子さんが取材に応じました。

(袴田ひで子さん)

Q:20日の裁判どう臨む?

「いつもと一緒ですね」「年内といっても5回目ですから、来年もすぐに始まる。裁判が終わるまで頑張っていこうと思います」

1966年、旧清水市で一家4人が殺害された事件で死刑が確定した袴田巌さん。10月から始まった再審公判で、検察側は「犯人はみそ工場関係者の袴田さんで、犯行着衣の5点の衣類をみそタンクに隠した」などと袴田さんの有罪を主張。一方、弁護団は「事件は強盗殺人ではなく、犯人の恨みによる殺人で、複数人による犯行」などと指摘し、無罪を主張しています。

20日の公判では、検察側が「袴田さんが犯人であることと整合する複数の事情」が存在すると主張し、その後、弁護団の反論が行われました。

検察は、袴田さんの左手中指などに被害者をくり小刀で刺すなどした際に負ったと考えられる傷があることや、パジャマから袴田さん以外の血痕と、放火に使われたと推認される混合油が検出されたなどと主張。これらの事情について、検察は「事件と関係なく生じたと考えるのは不自然で、 袴田さんが犯人であることを裏付けている」と主張しています。

一方、弁護側は、袴田さんの左手中指の傷については消火活動中にできた傷と反論。血痕と混合油が検出されたパジャマについては、肉眼でみえる血痕がなければ当時の技術では血液型鑑定はできず「信用できない鑑定」と反論しました。

また、法廷には袴田さんが犯行直後に来ていたとされる上下のパジャマが展示され、ひで子さん立ち合いの下、裁判長らが血痕の反応があった部分を確認しました。

(スタジオ解説)

20日の公判で争点となったのは「袴田さんが犯人であることと整合する複数の事情」として検察があげたものです。

その一部ですが、「袴田さんが当時手に負った傷」。検察は、犯行時に負ったと主張、弁護団は、火事の消火にあたって負傷したと反論しました。

そして、袴田さんのパジャマ。検察は「袴田さん以外の血痕や放火に使用したと推認される混合油がついていた」と主張。弁護団は「当時の鑑定は信用できない」などと反論しました。

20日の争点は、再審裁判の中で、どのような位置づけになりますか?

(元東京地検特捜部副部長・若狭 勝 弁護士)

この事件は、“5点の衣類”が袴田さんのものであり、犯行時の着衣かどうかが、最大の争点。その争点は、来年以降、証人尋問が行われるが、それによって、この事件の無罪・有罪が決まると言っても過言ではない。

2024年には、“5点の衣類”についての証人尋問が予定されています。

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