「漁協側の理不尽な主張で工事が中断」 出水市長、広瀬川漁協へ「停止命令」可能に 議会で可決、組合長は反論

提案理由を説明する椎木伸一市長(左奥)=20日、出水市議会

 鹿児島県出水市議会は20日の最終本会議で、米之津川の漁業権を持つ広瀬川漁業協同組合が市民の農業活動を妨害したり、行政の事業を正当な理由なく拒否したりした場合、市長が停止命令など「総合調整権」を行使できる議案を上程し、全会一致で可決した。

 椎木伸一市長の提案理由説明によると、地元の環境保全会が11月、出水平野土地改良区の許可を得て農業用水路の土手を修繕工事中、漁協理事から理不尽な主張があり、工事中断に追い込まれる事案が発生。その際、理事は休日の市職員を正当な理由なく現場に呼び出した。九州農政局が6、7月、漁協に老朽化が進む米之津川水系・高川ダムの耐震調査に伴うボーリング調査を説明したが、関係ない理由で同意しなかった。

 「このような事態が続くと行政全体に支障が生じ、市民の安心安全が脅かされる。正常化していきたいという思いだ」と述べた。

 総合調整権は地方自治法に基づく措置で(1)環境保全会の適正な活動を妨害する行為に是正の勧告、停止の命令(2)国、県、市が実施する事業の協議で正当な理由なく拒否するなど不誠実な行為に対する指揮監督(3)市職員らを正当な理由なく呼び出す行為への停止命令-を定めた。強制力はない。椎木市長は「議決を重く受け止めてほしい」としている。

 鳥里一義組合長は取材に「用水路の水は米之津川下流に通じ、理事は漁業権の侵害の恐れがあるから注意した。市の提案は勇み足だと思う。こちらと市の言い分に違うところがある」と話した。

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