墨堤通りから鳩の街へ歩みを進めると、高低差1メートルほどを一気に下る。ここは、墨田区向島と東向島の境界、かつての赤線地帯だ。
墨東、隅田川の東側に集まる赤線地帯
近くには玉の井の歓楽街。東京大空襲で焼け出されたものたちがこの地に移転・開業したのがその始まりと言われている。米軍兵士の慰安施設から戦後、日本人相手の特殊飲食店街(赤線)として発展した。警察からの指導で、東京の赤線はタイル張りのカフェー風に作られた。1952年頃、100軒を超える娼館300人ほどの接客する女性がいたという。
しかし、1958年に売春防止法が施行されるとすべての業者が廃業、跡地は商店街やアパートなどに変貌していった。
吉行淳之介や永井荷風がこの地を舞台とした小説や戯曲を発表。また、昭和の女優・歌手である木の実ナナの生まれ育った場所としても有名である。
夕方から車両通行止めになる商店街
現在の商店街は、その多くがシャッター店舗になっているものも多い。一方、現役で営業している店舗やスーパーなどもある。毎日16時から19時までは車両通行止めになる。
そして、裏手の通りには、当時のタイル張りの建物も残っており、往時を彷彿させてくれる。しかし、老朽化による建て替えが進み、巨大なマンションも建築中だ。
新旧の建物が混沌とした中に存在している。あと少しすると昭和は喪失していくだろう。
組合主導の未来につながる取り組み
商店街には、古民家を活用した食事施設(こぐま)や共同住宅(鈴木荘)にて新規事業を進める施設もできあがっている。朽ちていくモノとリスタートをするコトが共存する「鳩の街通り商店街振興組合」。
生まれ変わる姿を見てみたいと思う場所だ。
2023年6月から撮り始めた「昭和喪失」、歴史は、時を経て進化するもの。その進化は令和につながり、その土地で生きるものに引き継がれていく。まだまだ見ていない景色は、たくさんあるが、ここで終章。
来年は、「東京再発見」、未来につながる風景を撮り、みなさまに伝えていこうと思う。
寄稿者 観光情報総合研究所 夢雨/代表
(これまでの寄稿は、こちらから)
(次ページ以降は、鳩の街通り商店街の今を!)
撮影・取材 2023年11月27日
鳩の街通りの一本裏通りを歩く!
お寿司屋さんの裏側には、路地に面した長屋が!
商店街の裏側に朽ちそうな長屋が!
裏路地から見える商店街の様子
営業を止めたと思われるお店## ここからがメインストリート、今の様子
まだまだ現役の文房具店
終焉を迎えたお店、シャッターは閉まったまま
開いているのだろうか、通り沿いの病院
大正から明治、壁一面が銅板、緑青色に!
いつから営業が始まったのであろう、通り沿いのスーパーマーケット
おでん屋さんの先に見えるメインストリート
花屋の女将さんの定位置はこちら
未来につなげる、古民家カフェこぐま
振興組合が直営するチャレンジングスポット「鈴木荘」## 赤線時代の名残を探して・・・
手前の木枠の窓が艶めかしく、軒のタイル張りも往時を彷彿させる
赤線を彷彿させるタイル張りの柱、不思議な出窓も!
裏木戸のような赤線家屋への入り口
タイル張りの家屋から商店街を覗き見
カフェーの時代、タイル張りの柱が象徴的
赤線の名残の建物、古き時代のまま
出入口が二つある家屋、少し不思議
外階段が二階につながる不思議な家屋
手前の更地には何が建っていたのか、蔦の絡まる家屋
一軒だけ平屋の住宅、往時のまま