平和願う、箱根寄木細工のトロフィーお披露目 伝統工芸士・金指勝悦さんの遺作

往路優勝記念トロフィー

 今回で100回を数える東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)で、往路優勝校に贈呈されるトロフィーが20日、お披露目された。昨年7月に亡くなった箱根寄木細工伝統工芸士の金指勝悦さん(享年82)が弟子と手がけた最後の作品で、妻のナナさん(65)は「夫は100回大会までトロフィーを作る、とずっと話していた。完成までこぎ着けられて良かった」と感慨深げに話した。

 トロフィー(台座含む)は高さ42.5センチ、重さ3.7キロ。新型コロナウイルスの感染拡大やロシアによるウクライナ侵攻などの暗いニュースが多い世相を踏まえ、前大会のトロフィーと同じくテーマは「平和」。上空に漂う雲の隙間から市松模様の太陽がのぞき込んでいるような構図となっている。市松模様の中には平和や絆を意味する七宝柄を施し、明るい未来があふれ出る様子をイメージしたという。

 職人としての金指さんは制作に没頭、「365日工房を離れなかった」(ナナさん)と言い、家族旅行にも一度も行かず生涯をかけて寄せ木細工に打ち込んだという。往路優勝トロフィーは町からの依頼で73回大会(1997年)から毎年制作してきた。

 昨年の99回大会のトロフィーは金指さんが残した構想をもとに遺族や弟子が作り上げたが、今回の100回大会のトロフィーの方は先に手がけていたという。

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