国家公務員総合職試験 合格者数の大学別ランキングに異変あり

国家公務員総合職試験に合格し採用された人は、一般的に「キャリア」と呼ばれています。20年程前までは、東京大学出身者が圧倒的に多かったため、合格者数を大学別に比較しても、ほとんど意味がありませんでした。しかし最近では、合格者を出している大学が、地方国公立や私立大学を中心に増えており、状況が変わってきています。2012年度からはじまった、採用試験体系の見直しは、採用後の能力の発揮・実績に応じた適正な昇進選抜を実現する契機にしたもので、これが東京大学以外の大学が増えた要因の1つと考えられます。

[(https://univ-journal.jp/wp-content/uploads/2023/12/koumuinmains-scaled.jpg)

立命館、明治、専修など、合格者が大きく伸びている大学が出ている

2021年度から2023年度までの3年間の出身大学別合格者数推移を見てみると、大きく伸びている大学があることが分かります。国立大学では大阪大学そして筑波大学、私立大学では立命館大学、明治大学そして専修大学。いずれも2021年度比で150%以上で20名以上合格者が増えている。合格者数が伸びている大学は、特に公務員試験対策を充実させた大学が多いようです。

2023年度合格者の主な大学受験年は、2020年度入試で超安全志向だった年になるため、比較的学力レベルが高い学生が多いと考えられます。2021年度入試以降は、超安全志向が薄くなった傾向も出ていましたので、来年度以降の合格者がどうなるかは注目したいと思います。

[(https://univ-journal.jp/wp-content/uploads/2023/12/koumuin_sub1s-scaled.jpg)

試験申込者は年々減少していたが、2022年度から持ち直している

2012年度から国家公務員総合職試験の申込者の推移を見ると、毎年減少しているが、2022年度からは下げ止まっていることが分かります。その理由として、人事院が、試験区分を新設したり、試験日程の前倒しや試験地を増やす対策を行ったことが大きいのではないかと考えられます。

2024年度も、申込者をこれ以上減らさないように、さらなる変更も予定されています。総合職試験は、春と秋に分かれて実施されており、春に「院卒者試験(法務区分を除く)」及び「大卒程度試験(教養区分を除く)」、秋に「院卒者試験(法務区分)」及び「大卒程度試験(教養区分)」が実施されています。

※2023年度については、司法試験日程の変更を踏まえ、「院卒者試験(法務区分)」は秋に実施せず、2024年春の総合職試験として実施

●2022年度主な変更点

総合職試験(大卒程度試験)に「デジタル」区分を新設

総合職試験(院卒者試験・大卒程度試験)、一般職試験(大卒程度試験)、専門職試験(大卒程度試験)の申込受付期間を統一

総合職試験(大卒程度試験)の申込受付を1週間前倒しし、受付期間を拡大

第1次試験地に従来の東京都・大阪市に加え、新たに札幌市と福岡市を追加

●2023年度主な変更点

合格有効期間について、春は3年から5年へ、総合職試験「教養区分」は6年6ヶ月へそれぞれ延長

春の総合職試験日程は、これまでと比べて2週間程度早くする

「教養区分」受験可能年齢を1歳引き下げて19歳(2023年4月1日時点)に。※大学2年生秋から受験可能

第1次試験地を札幌・仙台・東京・名古屋・大阪・広島・高松・福岡・那覇の9都市に拡充

●2024年度主な変更点

「政治・国際区分」を改編し「政治・国際・人文区分」を創設

春の大卒程度試験において基礎能力試験の出題数を40題から30題に削減

春の総合職試験日程は、更に前倒し、第1次試験を3月17日(日)に実施し、最終合格者を5月下旬に発表

試験申込者が減少した原因は、採用試験準備の負担や、就職してからの長時間労働?

人事院が2021年度に実施した「就職活動を終えた学生向け意識調査」において、国家公務員を就職先として選択しなかった理由として最も多かったのが「採用試験の勉強や準備が大変」であったようです。採用試験準備を負担と捉えてしまう背景には、国家公務員のイメージが低下しているがゆえに、負担の大きな試験を受けてまで国家公務員になりたいと思う学生が減っていることが可能性として考えられます。

また、国家公務員を就職先として選択しなかった理由として、長時間労働や業務の他律性等を始めとする勤務環境に対する不安が主な理由の一つとして挙げられていたようです。企業はこの点がかなり改善されてきていますので、差が大きいと感じるのかもしれません。

2023年度秋の試験「教養区分」は大学2年生秋から受験可能になった等の要因で、合格者は大きく増加

2023年度「教養区分」は、受験可能年齢を1歳下げて、大学2年生秋から受験が可能になりました。この変更等により、2023年度の「教養区分」の合格者は423名と、昨年の255名から大きく増えました。423名のうち大学2年生の合格者は43名と1割程度になっていますので、試験地が増えたなどの要因も影響していることが分かります。

[(https://univ-journal.jp/wp-content/uploads/2023/12/koumuin_sub2s-scaled.jpg)

教養区分は、専攻分野にとらわれない広範な見識を有する学生や外国の大学の卒業者など、多様な有為の人材確保に資するよう、企画立案に係る基礎的な能力の検証を重視した試験区分となっています。専門的知識を土台とした幅広い教養が必要になるため、対策がしづらいという面があり、地アタマ勝負になりがちとも言われています。2023年度合格者を出身大学別に見てみると、1位東京大学174名、2位京都大学51名、3位慶應義塾大学38名、4位早稲田大学34名、5位一橋大学27名となっており、東京大学の多さが目立ちます。

今後も変化が続く可能性も

2022年度より総合職試験(大卒程度試験)に「デジタル」区分が新設され、2024年度より「政治・国際区分」を改編し「政治・国際・人文区分」が創設されます。第1次試験会場も9か所に増え、地方大学でも受験が容易になりました。今まで、公務員試験は主に法学部の学生を対象にしたものというイメージもありましたが、今後は違う学部からの受験生も増えてきそうです。

[(https://univ-journal.jp/wp-content/uploads/2023/12/koumuin_sub3s-scaled.jpg)

また、東京大学は2012年度以降も国家公務員総合職を目指す学生が減少しており、霞ヶ関の官庁より20代から高給が得られる外資系コンサルを選ぶ傾向が強くなったり、ベンチャーを目指す学生が増えたことが要因ではないかと言われています。今後も、地方国立大学や私立大学の合格者が増えていく傾向が続くのか注目されます。

© 大学ジャーナルオンライン