日シリでセ・ファンに衝撃与えた無名の男!山下舜平大に肩並べる山本由伸の穴埋め候補筆頭のオリックス期待の右腕とは!?【プロ野球ブレイク候補2024】

日シリでセ・ファンに衝撃与えた無名の男育成出身の苦労人で由伸の穴埋め候補筆頭

︎オリックス・バファローズ 東 晃平

オリには、まだこんな投手がおるんかい!?

阪神との日本シリーズ第3戦。1勝1敗で迎えた大事な試合で先発、好投した東を見て、“オリックスにはまだこんな投手がいるの!?”と思った方も多いのではないだろうか。この日、10月31日の東の立ち上がりは完璧だった。最速155キロを計測する高速投手でありながら、コントロール投手のようなゆったりとしたフォームからキレある直球と多彩な変化球で阪神打線を圧倒し、初回を三者凡退。2回には先頭の大山に左安打を浴びると一死1・3塁から坂本のにゴロの間に先制点を献上。満員・完全アウェー状態の甲子園で先取点を与えたことで、場内は異様な圧とボルテージに包まれたことがテレビ越しにも伝わってきたのだが、そんな状況すら「けっこう楽しめました」と言うのだから、肝っ玉もかなりのものだ。

実際、前述した走者を背負った場面では微妙なボール判定もあったのだが、それに対しても少し笑みを浮かべ、むしろピンチを楽しんでさえいるように見えたのもあながち間違いではなかったようで、その後はカット、カーブ、チェンジアップ、そしてフォークのようにストンと落ちるツーシームといった多彩な変化球をコーナーに配して5回1失点。5回無失点のCSファイナルステージ、ロッテ戦に続いてチームに大きな勝利をもたらせたのだ。

球団初となる育成出身者の日本シリーズ先発勝利

育成ドラフト出身で日本シリーズ先発勝利を挙げたのは史上4人目、球団としては初の快挙というオマケのついたこの東。実は昨シーズン後半に一気に台頭して日本シリーズでも快投、今年のWBCでは日本代表として世界一の一員になった宇田川優希と同じ日(2022年7月28日)に支配下登録された経緯がある。その宇田川と同じく昨夏一軍デビューを果たし、同年8月6日の日本ハム戦ではプロ2度目の先発で初勝利を挙げるなど4試合の登板で1勝0敗、防御率4.85の成績を収めている。同年オフに語った自身の総括は「(ボールの)精度を高めたい。キャンプでアピールしてローテに入れるように。それで5勝を挙げたいです」だった。

WBC日本代表に、ボッコボコの春

しかし今年は、まずつまずいた。3月のWBC日本代表との強化試合で先発を託されるも大炎上。初回、先頭のヌートバーは打ち取ったものの、続く近藤健介に四球を与えると大谷翔平には中前安打、そして吉田正尚には先制タイムリーを献上。二死後には村上宗隆にはゴツンと3ランを浴びて4失点。2回にはまたしても吉田に、今度はタイムリー三塁打で3失点。計2回で7失点、綺麗にノックアウトを喰らったのだ。

「配球で行き詰まった感じで、何を投げればいいんだろうという場面が多かったです。真っ直ぐを投げたら当てられそうでボールが先行して、結局逃げるような投球になってしまって…。調子は悪くなかったのですが、通用しなかった」というコメントに、この日の内容が見てとれる。結局、直球はまずまずも変化球は全体的に悪く、通用した感があったのはカーブのみ。「ここからもう一段、ちゃんと考えてやらないと」とは、具体的に“その他”の持ち球であるスライダーやフォーク、カットの精度を高める必要性だ。

山下舜平大に匹敵すると思います

その過程であった春先は、開幕こそ一軍入りするも、救援で2試合連続失点を喫するなどピリッとせず、4月9日に登録抹消。ただし、ここからが東の進化のはじまりだったと言っていい。」

ファームでは再び先発として鍛錬を積み、7月30日に一軍に昇格すると、同日の日本ハム戦では、直球は最速152キロを記録。スライダー、カーブに加え、小林宏二軍監督のススメもあって開幕後に磨きをかけたカットボールで的を絞らせず、5回2失点の好投で今季初白星を飾ると、8月6日の西武戦は5回無失点の好投で2勝目。同月20日の日本ハム戦ではプロ最長となる7回を投げて3安打無失点、6奪三振。味方の援護なく3つ目の白星はお預けとなったが、球威を増した150キロを超す直球を軸とした投球は安定感抜群だった。」

この投球を見た他球団のスコアラーのコメントはこうだった。

「制球がバラついて回を追うごとに球速が落ちていた昨年までとは別人のよう。体が一回り大きくなり、球威が増した感じがする。カーブ、ツーシームもきっちり制球できているので追い込まれるとなかなか打てない。能力の高さで言えば山下舜平大に匹敵すると思います」

度重なるケガを乗り越え「負けない男」へ

言葉通り東はその後、好投を続け、終わってみれば10試合で6勝0敗、防御率は2.06の好成績。冒頭で述べたように日本シリーズでも先発勝利を収めるなど、全国への顔見せもできた。

思えば、プロ入り前からことあるごとにケガに悩まされてきた男でもある。

神戸弘陵時代はプロ10球団にマークされながら、大事な高3春に椎間板を骨折。実戦復帰が6月中旬にずれ込んだことが、「本指名」ではなく「育成指名」となった一因であることはことは想像に難くない。ルーキーイヤーには左脇腹痛などがあってファームでも公式戦の登板はなし。

翌2019年には二軍の先発ローテを周り、チームで唯一ウエスタンの規定投球回数をクリアするも、翌2020年は春季キャンプで右肩と右肘を痛めたことでウエスタンでの登板は6試合止まり。2021年には試合で右腕を骨折…と育成という立場でありながらもコンディションが整わないというしんどい思いをしながらも、冒頭で述べたように2022年に支配下を勝ち取ると、今季、プチブレイク。

この間、故障しがちな体に鎧を纏うべく、食事とトレーニングで見違えるようにサイズは大きくなり、高校時代最速145キロだった直球は、現在、最速153キロを記録。スライダー、カーブ、チェンジアップ、カット、そしてフォークのように落ちるツーシームの制球力も見事に整備した。

ケガに悩まされた苦労人も、今年で、まだ、たったの24歳。

オリックスの…というか日本の誇るエース・山本由伸は海を渡ることになりそうだが、その穴は以外とあっさり埋まるかも知れない。

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